広場だより8号 巻頭寄稿文 2013年度のハカルワカル広場の活動を振り返って

2013年度のハカルワカル広場の活動を振り返って

西田照子

         
開室2年目の2013年も、多くの課題とそれへの対応に追われた1年間だった。振り返って、これからの方向を探るよすがにしたいと思う。自分の子どもだけでなく「みんなの子どもを守りたい」、そんな願いをもって始めた測定室、しかし、現実は厳しいものだった。

測定活動--927件を測定

忘れもしない2013年の最初の開室日。一件も測定予約が入っていない。それまで1,2週間先まで予約が入っていたのに。何故? 端境期だから?または、原発への関心の風化から? わからない、でも、何か対策を打たなければと、春のキャンペーンと銘打って、新聞折り込み広告をしたり、維持会員測定料金を500円に値下げしたりした。そのうち作物の収穫期となり、測定が入るようになった。そして、2013年度は927件を測定。(2012年度は1280件)。すべて毎日のボランティアの地道な活動の成果である。また、自主プロジェクトとして、土壌測定を八王子・子どもの未来を守る会との共同プロジェクトとして始めた。公園の土を年2回経年的に測定している。山地の土壌測定も協力者を得て行っている。また、鉛遮蔽により検出限界値を下げる工夫を行った。

イベント(映画会、測定会)の実施へ

原発と放射能への関心をもっと持ってもいたいと、映画会を2ヶ月に1回実施することにした。第1回が「内部被ばくを生き抜く」、第2回が「福島、六ヶ所、未来への伝言」。第3回「ミツバチの羽音と地球の回転」。第4回「シェーナウの想い」、そして第5回は、北野ホールで、「放射線を浴びたX年後」を予定している。また、親子放射能測定体験(野外測定会)も実施。1回目は大泉寺(7月6日)、2回目は雨で断念。事実上の2回目は、11月23日、高尾天神社にて実施した。いずれも参加者には好評で、放射能への理解を深めてもらったと思っている。

月1回のお茶会の充実

昨年に引き続き、毎月第1土曜日にお茶会と称する学習会を実施している。二宮さんの丁寧な資料作成に基き、前月の測定データを学び、また、時々刻々変わる原発からの放射能について学び、参加者の質問に答えるなど、内容はますます濃いものになっている。

ボランティアと維持会員

現在、ボランティアは、通常シフトに入っている方が約25人、シフトに入らす会報のレイアウト、チラシデザイン、小物やジャムを作って資金カンパをしてくださる方などが23人、計50人弱である。また、運営を資金面で支援してくださる維持会員が237人(2013年12月31日現在)である。ボランティアの献身と維持会員の支援こそ、ハカルワカルのエンジンであると思う。

測定器の貸し出しなど

TC200、TC300の高性能測定器(線量計)を貸し出し、市民の測定活動を支援している。また、RadilogWalker(地表線量測定装置)を開発、広範囲の瞬時の地表線量測定(自転車に乗りながらの測定)を可能にした。(8ページに詳細を記載)

交流の広場に

放射能についての不安を抱え相談に来る方、見学に来る方と、測定以外の来訪も多い。たくさん喋ってすっきりしたという方もいる。そういう気軽な市民の交流の広場にもなっている。さらに、毎週金曜日の金八デモ(原発反対八王子行動)にも協力している。

広報・啓発活動

会報は昨年に続いて3カ月に1度維持会員へ活動報告として発行している。さらに、ホームページを充実させ、すべての測定結果を公表すると同時に、さまざまの活動の広報、情報発信も行っている。また、パルシステム東京の助成金を得て、子供向け小冊子「放射能ってなんだろう?」を刊行予定である。子どもに放射能の危険を知らせ、身を守る術を修得してもらいたいと願っている。

以上のように、測定活動により、客観的な事実を知らせながら、イベント、お茶会、広報活動にも力を注ぎ、放射能についての関心を喚起し続けたと思う。また放射能への不安についての相談にも応じ、交流の場となっている。ハカルワカルの進むべき方向はこの延長上にあると思う。

⇒ハカルワカル広場だよりの主要記事のインデックスは、ここにあります。

第五福竜丸展示館見学ツアー(2月2日)

X年後の映画を主催する方は、少しは核実験のことを勉強しておくべきだと思うのですが、宣伝とかでいろいろ忙しく動き回っているうちに時間は過ぎていくものです。
定例のお茶会で核実験の影響に焦点を当てることも考えたのですが、あいにく2月は総会があるので、定例お茶会はありません。

というわけなんですが、とにかく「何かしら事前勉強する機会を作りたい」という思いで、夢の島にある第五福竜丸展示館見学ツアーを2月2日の日曜日に行いたいと思います。

ツアーと言っても、単に向こうでみんなで会って一緒に見学するだけという話です。
「勝手に行って見学しておきましょう」では、なかなか夢の島まで実際に行く気力が湧かない場合もあるので、「ツアーと銘打つことで本当に行くぞ」ということになるのではという期待です。

第五福竜丸展示館のホームページ

を見れば場所等の詳しい情報はあります。
午前10時半ごろに現地でみんなで会うことにしようと思っています。

地表線量測定装置 RadilogWalkerについて

ボランティアBBSの方で話題を進めていた事なんですが、かなり形ができてきたので、みなさんにお知らせしておきます。

百聞は一件に如かずですから、まずは写真をご覧ください。

上部にある表示パネルはAndroid端末で、これが測定値とGPSの位置情報を読み取り記録します。

下部に金属色の箱の様なものが見えると思いますが、それが測定室で保有するTC300Sの測定機に鉛を箱状にしてかぶせたものです。底面だけが鉛なしで開いているので、周辺の放射線は測らずに地面からの放射線だけを測るようにしています。このようにすることで、周囲の木々や建物からの放射線で高いのか、地面の汚染のせいで高いのかをかなりはっきりさせることができます。

測定結果のデータはこのページでグーグルマップ上に表示させることができます。
「RadilogWalker(鉛遮蔽あり)歩行測定データ」の項目にチェックを入れて、「表示」をクリックすれば、今までに実際にRadilogWalkerで採取したデータを見ることができます。

4.0以上のバージョンのAndroid端末(Android スマホ)を持っている人は、ここからダウンロードして自分の端末にソフトをインストールできます。ただし、端末がUSB HOST側の機能を持ってないと使えません。Android端末の場合はUSBポートはデバイス側にしかならないのが普通ですが、OTG機能を持つものはOTG用のケーブルを使えばホスト側として使えます。ソースコードはここで公開しているので、改造して使い人はどうぞ。

そのうちにこれを使った測定会をやりたいと思っています。

 

 

伊方原発再稼働反対集会に8千人!

一番最初に再稼働されるのではないかと心配されている伊方原発ですが、その反対集会に、なんと8千人もの人が集まったということです。12月1日(日)、松山市でで行われた集会です。8000人はすごい数ですね。圧巻だったと思います。こういうパワーには勇気をもらいますね。

毎日新聞が伝えています。

http://mainichi.jp/select/news/20131202k0000m040048000c.html

地元だけでなく、全国から集まったそうです。石破さんはこれもテロというのでしょうか。

 

ハカってワカった話7号 鉛遮蔽の強化、微量測定の世界

鉛遮蔽の強化、微量測定の世界

二宮 志郎

測定データの集計表は7月~10月分になります。

7月25日~10月24日 測定結果

検体種類 検体数 Cs137 Cs134
土・砂 38 36 36
土混じり植物 2 1 1
土・その他 1 1 1
泥、泥水 0 0 0
池水、川水 0 0 0
雨水・雪 0 0 0
水・その他 0 0 0
葉菜 4 0 0
根菜 10 2 0
果実・果菜 28 1 0
穀類 23 2 1
きのこ類 38 31 27
魚介類 6 0 0
肉類 0 0 0
卵類 0 0 0
水産加工品 2 0 0
肉類加工品 0 0 0
野菜・果実類加工品 3 0 0
穀類加工品 10 0 0
飲料 2 0 0
食品混合 0 0 0
茶葉 8 2 2
ペットフード 0 0 0
芽・茎野菜 0 0 0
海草類 1 0 0
食品・その他 3 0 0
植物葉 4 2 1
植物茎・枝 0 0 0
植物根 0 0 0
木質ペレット 0 0 0
植物・その他 3 0 0
0 0 0
0 0 0
その他 3 1 2
総計 190 80 71

【鉛遮蔽の強化】

AT1320Aの鉛遮蔽は5センチと十分な厚みがあるのですが、センサーの下部だけは遮蔽が少し不十分でした。この部分を手作りの鉛遮蔽強化を施すことで効果を上げている、という話があちこちから聞こえてきましたので、ハカルワカルでもそれをやってみました。

9月11日から鉛遮蔽強化後の測定が始まっています。以前は1000g30分測定のCs137の測定下限値は4.6Bq/kg程度でしたが、遮蔽強化後は3.8Bq/kg程度に下がっていますから、2割程度の改善になっています。1時間測定を行えば、この値を2.9Bq/kgと3を切るところまでもっていけるようになりました。

【微量測定の世界】

鉛遮蔽強化のおかげでCs137の測定下限値が3Bq/kg程度の測定が可能になってきましたが、この下限値すれすれあたりの数値が出る測定になってくると、それが本当にCs137による数値なのかどうかを判定するのが非常に難しくなってきます。シンチレーション式測定機である以上どうにもならない分解能の限界があって、セシウムのスペクトルの近傍に紛らわしい放射性物質があるとその影響で誤検出が出るのは避けられません。特に問題になるのがビスマス214というウラン系列の自然放射能とタリウム208というトリウム系列の自然放射能です。こういう自然放射能は土に入っていたり、雨水に混じって降ってきたりしています。

最近、ハカルワカルで測定した後、新宿代々木市民測定所のゲルマニウム測定機で測定してもらった検体が何検体かあります。その一つが測定番号13082003のある場所の土です。ハカルワカルの測定結果はCs137:13Bq/kg,Cs134:39Bq/kgでしたが、下のスペクトルを見て私はこれを両方ともに誤検出だと判定しました。

600keV付近にかなりのピークがありますが、それはCs137を示す662のところまで伸びていません、さらにCs134が見えるはずの700付近のピークがありません。そうなると、この600付近のピークはBi214 とTl208が出ているだけセシウムの存在は示さないと判断できます。

新宿代々木市民測定所の測定結果ではCs137:6.2Bq/kg, Cs134:不検出(限界値1.6Bq/kg)でした。そこでもらったスペクトルが左下のものです。少し見にくいですが、中央左側の600keVの前後に2本の一番高いピークがあります。これがTl208 とBi214の存在を示すピークです。その2本に比べるとかなり低いピークがより中央付近にあります。それがCs137を示すピークです。Cs134を示すピークは見当たりません。上のハカルワカルの測定結果のスペクトルとよく見比べてみてください。


このようにTl208, Bi214のスペクトルが強く出ていて、Cs137が比較的弱くしか出ていない場合は、その存在を見極めるのは非常に難しくなります。こういう場合に、ハカルワカルの測定結果の数値がいかに当てにならないかがわかると思います。

【微量測定値をどう見るか】

鉛遮蔽強化で5Bq/kg以下の数値も結果としては出せるようになりましたが、そのような数値はあまり信頼できるものではありません。「そこに示されている数値程度の微量な放射性セシウムが存在しているようだ」というくらいに考えて下さい。

食品の場合、微量の検出値が必ずしも「食べないほうがいい」ということを示すわけではありません。その食品を食べる量をよく考えて、他の健康を脅かすリスクなどとのバランスの上で総合判断をする必要があります。そのあたりは、ハカルワカルの勉強会なども参考にしながらいろいろ考えてみてください。

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広場だより7号 巻頭寄稿文 ハカルワカル映画会を始めたきっかけ

ハカルワカル映画会を始めたきっかけ

測定ボランティア ・事務局メンバー 鵜飼 暁

開室当初は予約で埋まっていた測定依頼が、今年に入って少しずつ空きが目立つようになりました。原発事故がまるで収束してしまったかのような世間の風潮の中、ハカってワカることで本当の安心を得る事が出来る測定室を維持していくためにも、どうすればもっと多くの人にハカルワカル広場の存在を知ってもらい、測定に来てもらえるかを測定室の人達と話し合う中で、原発やエネルギーに関する映画会を実施したらどうかというアイデアが浮かびました。映画会なら、たとえ放射能測定には興味がなくても、原発や自然エネルギー等、関心のあるテーマであれば多くの人に参加してもらえます。そして、映画会の後に放射能に関する学習会を行うことで、新聞やテレビでは得られない正しい情報を、参加してくれた人達に伝えることができる。それが、ハカルワカル広場の存在の大切さを広めていくことにつながると考えたのです。

私自身、昨年の夏に被災地ボランティアに参加した際、現地の人に「日本の社会でこの災害の事が風化していくことが一番怖い。どうか他の人にも被災地の現実を伝えてほしい」と言われた言葉が強く心に残り、八王子に戻ってから、何か地元で自分に出来ることはないだろうか、と思っていた時に出会ったのがハカルワカル広場でした。福島の原発事故以来、意識的に放射能の事を勉強してきたつもりでしたが、本当の意味で放射能の事を知り、放射能の脅威から自分の身を守るすべを持つことができたのは、ハカルワカル広場で測定ボランティアとして、自分でハカってワカる経験をしてからだと思います。これまでハカルワカル映画会では、「内部被ばくを生き抜く」「福島 六ヶ所 未来への伝言」「ミツバチの羽音と地球の回転」「シェーナウの想い」を自主上映してきました。これらの映画を通して今まで知らなかった福島の事やチェルノブイリの事、祝島の人達の事や、ドイツの村シェーナウの事など、今の私たちの生活から切っても切れないエネルギー問題について、深く考えるきっかけを与えてもらいました。

私が尊敬する先人の言葉に、「悪い事をしている人を見て、知っているのに、放っておくのは、悪い事をしている人と同じだけ罪が重い」という言葉があります。以前は福島に原発があることすら知らなかった無知な私ですが、仮に福島原発事故前であれば知らないで済まされた事も、今や知らないでは済まされないのだと自覚しています。そして、一人一人の市民が、放射能の事を正しく学び、賢くなって、声を上げていくことでしか、未来の世代に責任ある社会を築いていくことは出来ないのではないかと思っています。その一助として、ハカルワカル映画会が貢献できれば幸いです。来年三月には、「~放射線を浴びた~X年後」の自主上映会を北野市民センターホールで開催する予定です。是非、友人・知人をお誘いの上、御参加ください。
  

⇒ハカルワカル広場だよりの主要記事のインデックスは、ここにあります。

イギリスの学術雑誌「Nature」に掲載された福島原発汚染水問題

英語原文へのリンクはこちら
「Nuclear error」
http://www.nature.com/news/nuclear-error-1.13667

日本語抄訳を含めた内田樹さんのブログはこちら
「Natureから」
http://blog.tatsuru.com/2013/09/06_1112.php

ここに書かれた内容は、日本の一般のマスコミは報道しないようなのでアップしました。

2000検体目の測定

みなさん、いよいよ記念すべき2000検体目の測定が近づいています。9月3日の測定を終えて、1981検体の測定が終わっています。後19検体で2000に到達です。

1000検体目を測定したのが2012年10月18日でした。この最初の1000検体の測定には8ヶ月半かかっています。

2000検体目が9月中旬だと仮定して、次の1000検体には11ヶ月かかったことになります。ペースがかなり落ちてきているのはしょうがないですね。一般の食品に関してはほとんど心配しなくていい、という状況がわかってきたのが反映していると思います。私達が積み上げた2000検体の測定がそういう状況を作るのに貢献してきたことは確かだろうと思います。

おそらく3000検体目にたどり着くには、この先1年以上かかり、2015年以降になることでしょう。測定の数が減っても、脱原発社会の実現にはたくさんの課題がありますから、測定室の活動を停滞させないように努めて、みなさんと一緒に3000検体目の測定日を迎えることを目指していきたいです。

そのためには、たくさんの人達に様々なアイデアを持ち寄っていただきながら測定室を盛り上げていくことが重要になります。みなさんぜひよろしくお願いします。

映画「標的の村」を見て

ポレポレ東中野で上映中の「標的の村」を見ました。話は、沖縄高江の集落での、ヘリポート建設反対から始まります。高江集落の周りを取り囲むようににヘリポートの建設が突如、何の説明もないまま始まったことに、住民は座り込みをして反対します。生活の基盤が失われるからです。国は座り込みをした人たちを(7歳の少女をも)裁判に訴えます。いわゆるスラップ訴訟という、強大な力のある方が弱いものを訴えて脅す手法です。

「標的の村」という題名は、米軍が高江を敵の集落とみなして、標的として、訓練をすることからつけられています。現実にそこで暮らしている生身の人間がいるのに、戦争の、模擬標的として訓練するのです。また、この村はベトナム戦争の時、「ベトナム村」として、村民にベトナムの服を着せ、襲撃の練習もしたということです。

オスプレイが配備されるとき。普天間の門を沖縄の人たちが封鎖して抵抗します。(大手メディアはほとんど報道していませんが)。機動隊が実力行使で排除します。生活が成り立たなくなるのは住民の方なのに、国は守ってくれるどころか、実力で執行する。原発と同じ構図を感じました。ポレポレ東中野で10月18日までロングランが決まったそうです。多くの人に見ていただきたい映画だと思いました。ドキュメンタリーとしても優れていて、この映画監督は実力派だと感じました。

予告編:
http://www.youtube.com/watch?v=IWCoNxPMk50

ポレポレ東中野上映時間: http://movie.walkerplus.com/th567/schedule.html

三上智恵監督インタビュー

西田