ハカってワカった話21号 19000Bq/kgの衝撃

19000Bq/kgの衝撃

二宮 志郎

原発推進の政府が躍起になって福島事故を終わったものにしようとしても、物理法則まで変えることはできません。6年前にセシウム137が1万ベクレルあったなら、今でも8700ベクレルは残っています。半減期が30年である以上、これはどうにもなりません。そして、物質は移動させることはできても消滅させることはできません。もし移動が起こらなければ、6年前も今もたいして変わらない量のセシウム137がそこには存在しているはずです。

1万Bq/kg程度の土が八王子のどこかの雨樋の下に今も放射線を出しながら存在しているということは十分想像の及ぶ範囲で、ハカルワカルのスタッフならさほど驚くことはないでしょう。

しかし、3月の測定値で以下の数字を見た時は、我が目を疑い、何か誤測定?と思ってしまいました。
Cs137: 16600Bq/kg, Cs134: 2790Bq/kg
合わせて19000Bq/kgを越えるこの数字は、この6年間の測定活動の中でもまだ一度も見たことのない大きな数字です。

この662keVがすさまじくするどいピークを示すスペクトルが2万ベクレルの猛烈さを物語っています。最近では検出が難しいことが多いCs134の796keVのピークも十分にはっきりわかります。

高汚染の理由は?

  • ? 雨水を集める屋根面積が大きい等の高濃縮の条件がある
  • ? 雨樋下が窪地状になっていて表土が流出しにくい

おそらく上のような状況下にあり、6年前にかなり高濃度に汚染されたものがそのまま残っていたのでしょう。

さらに、わずかずつでしょうが、再浮遊・再降下で循環するセシウムを集積し続けて、初期の高濃度汚染に積み上げたのでしょう。

こういう場所がいったいどのくらい残されているのでしょうか。想像するしかないですが、雨樋の下という場所は家の数よりずっと多いわけですから、かなりたくさんあっても不思議ではないでしょう。

もっと高汚染地域なら

八王子で高い汚染値が出た時、「八王子ですら‥」ということがいつも頭をよぎります。八王子の10倍程度汚染された地域なら、20万Bq/kgがあっても不思議ではない、100倍程度汚染された地域なら200万Bq/kgがあっても不思議ではない。そういう場所はより丁寧に除染をやっているとは言っても、除染もれは必ずあるでしょう。そういう環境の中で生活する不安はいかほどのものなんでしょうか。福島事故の影響だけでなく、チェルノブイリの影響も、核実験の影響も、どこかで今日も残り続けているわけです。

「核エネルギーと縁を切る」それ以外にないという結論はもう出ていると思うのですが。

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広場だより21号 巻頭寄稿文 森とキノコと放射能

森とキノコと放射能

維持会員 長谷川 明

 福島原発事故から6年、放射性セシウムはハカルワカルの測定結果を見ても土以外はあまり検出されなくなった。その中で、時々検出されるのが山菜の一部と野生のキノコである。キノコは森の生き物。森は国土の6割を占め、多くの放射性セシウムも森にある。初めは落葉層と腐葉土の多い土壌表層に留まり、徐々にマイナスイオンを持つ粘土鉱物の多い層へと移動し結びついて固定すると思われていたが、実際は落葉層と土壌表層に留まっていた。

なぜ落葉と粘土鉱物の少ない土壌表層部に動かず存在するのか。これは森林の物質循環に放射性セシウムが取り込まれたためと言われている。この物質循環の分解を担っているのがキノコである。ではキノコはどんな生き物か、何をしているのだろうか。植物は根から無機物を取りこみ、葉は光合成を行い、枝はその葉を支え、その先に花や果実をつくる。キノコを植物に例えると、根の様に見える菌糸は根や枝や葉の役割をしている。キノコは花や果実に相当する。つまり菌糸がキノコの本体である。菌糸の径は植物の根の1/10と細い。体外消化という方法で有機物を分解・吸収するキノコにとって細いということは外界との接触面積が大きく有利である。そのうえ、細胞は長く連なり、網の目の様に縦横無尽に張り巡らせることで、さらに効率よく取り込んでいる。その規模は我々の想像を超えている。

1992年にミシガン州の山間でのナラタケの菌床では約15万平方メートルにわたって広がり、山一つ覆い尽くすほどの大きさがあり推定重量は約100tだと言う。キノコの菌糸コロニーはこのように森林の地下に広がり森の物質循環の分解を担っている。

そのキノコの生き方は、落葉や枯死木、動物の排泄物や死骸などを分解して栄養源としたり生きた植物から養分を得て、植物には水分、窒素、リン、カリ、カルシウム、マグネシウムなどの無機物を供給している。とくに窒素、リン、カリは多量要素といい植物に多量に要求される要素である。そのうちのカリはセシウムと化学的に同じアルカリ金属のため区別せず放射性セシウムを取り込んでしまう。その取り込み方は隈なく張り巡らされた細い菌糸によって効率よく集めるのである。そのほか植物の成長促進、病原菌の侵入阻止、窒素およびリン酸吸収の促進、植物への重金属の吸収を抑制などを行っている。

その棲み家としているところは有機物の多い落葉層や土壌表層部である。種によって落葉を好むもの、分解の進んだ有機層を好むものそれぞれだが、その好むところに一様に菌糸を張り巡らせコロニーを形成している。放射性セシウムもまた同じ所に留まっている。それは、たまたま菌糸と放射性セシウムが出合わせたのではなく、菌糸が放射性セシウムを取り込んだのである。チェルノブイリ原発事故後の研究でキノコの生息域の土壌中では放射性セシウムの30%から40%が菌糸によって保持されていることが明らかになっている。森林の地下には目には見えない菌糸の森が広がっている。その菌糸が放射性セシウムを保持している。こうして、放射性セシウムは森の中に留まっている。

富士山のキノコと放射性セシウム

134の実測値から福島由来の137の値を計算すると

発表日(月/日/年) 品目 採取地点 Cs137 Cs134 Cs計(Bq/kg) Cs137の計算値 Cs134実測値
10/25/12 シロナメツムタケ 河口湖町 104 54.8 160 92 54.8
10/25/12 アカモミタケ 富士吉田市 108 39.8 150 67 39.8
10/25/12 カヤタケ 富士吉田市 89.6 48.8 140 82 48.8
10/25/12 キヌメリガサ 富士吉田市 246 97.9 340 164 97.9
10/25/12 チャナメツムタケ 富士吉田市 91.4 56.4 150 94 56.4

山梨県衛生環境研究所による検査(Ge)

測定日(月/日/年) 品目 採取地点 Cs137 Cs134 Cs計(Bq/kg) Cs137の計算値 Cs134実測値
9/10/12 イロガワリシロハツ 富士山奥庭 90 19.28 109 32 19.2
9/9/12 キハダチチタケ 富士山奥庭 170 42.8 213 72 42.8
9/9/12 トビチャチチタケ 富士山奥庭 118 72.6 191 122 72.6

八王子市民放射能測定室による検査(Nal)

福島事故の放射性セシウム137と134は1対1の割合で放出された。放射性セシウム137の半減期は30年、放射性セシウム134の半減期は2年であるから、2012年10月頃の割合を計算すると約1対0.6となる。これを基に放射性セシウム134の実測値に合わせて放射性セシウム137の値を計算すると明らかに実測値と差の大きいものがある。河口湖での放射性セシウム137の実測値と計算値はキヌメリガサ以外はほぼ同じとなる。従ってそれらは福島由来の影響によるものと思われる。同じように奥庭の実測値と計算値を比較すると、イロガワリシロハツ、キハダチチタケは実測値が計算値より2~3倍高く検出されている。それは福島事故だけでなくチェルノブイリ事故、大気圏核実験の影響が残っていた分があるため、放射性セシウム137の値が高くなっていたと考えられる。標高の高い奥庭がその影響は大きかったと思われる。しかし、富士山の奥庭は溶岩の上に苔と薄い腐葉土だけが広がる森林で土らしいものはほとんど無い。したがって森に降下した放射性セシウムと結びつく粘土鉱物も少ない。長く留まることは無いと思われるがチェルノブイリ事故から30年経った今でも留まっていることになる。何故だろうか。チェルノブイリ原発事故後の研究でキノコの生息域の土壌中に放射性セシウムの30から40%が地中の菌糸によって保持されていると言われているがそのことを物語っているのではないだろうか。

(詳しくはこちらをご覧ください。https://goo.gl/4E4WmE )

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6月3日(土)「シェーナウの想い」映画会@お茶会のお誘い

「シェーナウの想い」映画会@お茶会

日時:6月3日(土)10:00~12:00
場所:ハカルワカル広場

10:00 測定のまとめ
「シェーナウの想い」映画会 製作年:2008年 上映時間:60分
原子力に反対する100 の十分な理由 勉強会
12:00 終了

この映画は、ドイツ南西部、黒い森の中にある小さなまちシェーナウ市の住民グループが、チェルノブイリ原発事故をきっかけに「自然エネルギー社会を子どもたちに」という想いから、ドイツ史上初の「市民の市民による市民のための」電力供給会社を誕生させるまでの軌跡を綴るドキュメンタリーです。

シェーナウ電力会社が原子力エネルギーの危険性を訴えた冊子「原子力に反対する100の十分な理由」を作り、日本人にも原発の危険性について知ってほしいとの思いから日本語版を制作しました。
映画会の後、この日本語版をみなさんと学習したいと思います。
冊子「原子力に反対する100の十分な理由」日本語版URL

チラシpdf

5月13日(土)お茶会のお知らせ

5月定例お茶会

日時:5月13日(土)10時~12時
場所:ハカルワカル広場
浜岡原発見学ツアーの報告会
今回3度目となる浜岡原発見学ツアー・・・地元で活動を続けられている浜ネットの方たちとの交流会の様子や浜岡原発のどこが危険なのか、4月16日に参加された方たちの報告、感想を中心に報告会をいたします。ぜひご参加ください。
浜岡原発見学ツアー 4月16日(日)
https://www.facebook.com/hakaruwakaru/posts/1030817327017779

5月の連休(4月29日~5月8日)の閉室のお知らせ

今年のゴールデンウィ-クは次の通り閉室いたします。ご了承くださいませ。

4月29日(土)~5月8日(月)までの間閉室いたします。

5月9日(火)から通常通り開室です。どうぞよろしくお願いいたします。

ハカルワカル広場

「日印原子力協定を批准をしないことを求める」署名にご協力ください

nい

皆さま

「日印原子力協定を批准をしないことを求める署名」にご協力をお願いします。
No Nukes Asia Forum より署名の依頼がきています。

次のメルアド

sdaisuke@rice.ocn.ne.jp

に、お名前を書いて送ると署名ができます。ご協力をよろしくお願いします。原発事故を起こした日本が原発を輸出することは人道に反します。インドでは「日本は原発事故を輸出するな」と言っているそうです(下の署名本文より)。

署名要項、署名趣旨 (4月末第一次締め切り)
NNAFJおしらせ(拡散してください)(重複ご容赦)

■日印原子力協定を承認・批准しないことを求める請願署名

至急、下記サイトから用紙をプリントアウトして署名し原子力資料情報室に郵送してください
広めてください、どうかよろしくお願いします!
http://www.cnic.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/c7a6b7d4b9d9fd9ded9eef7d3673009c.pdf

あるいは、団体名または個人名を、メールで下記まで送ってください(匿名希望の方はその旨書いてください)
sdaisuke@rice.ocn.ne.jp

*********************

内閣総理大臣 安倍晋三 様
衆議院議長 大島理森 様
参議院議長 山崎正昭 様

日印原子力協定を承認・批准しないことを求める請願署名

2月24日、政府は「日印原子力協力協定」(以下、「本協定」)を、承認案件として国会に提出した。私たちは、インドや世界の人びとと共に本協定に反対し、強く抗議するものである。

日本は、唯一の戦争被爆国として「核廃絶と不拡散へ向けた国民の努力」を基本方針としてきたが、本協定の署名・批准は完全にこれに逆行する。インドは核拡散防止条約(NPT)に未締約でありながら、2度も核実験を強行した国である。本協定を承認することは、日本がインドを事実上の第6の核兵器国として承認することに他ならない。本協定が発効することにより、インドは原発も核兵器も増産することが可能となり、南アジア地域での核軍拡競争の激化を引き起こすことは明白である。本協定は、日本と他国との協定とは異なり、インドに使用済み核燃料の再処理とウラン濃縮なども認める一方、再核実験時の協力停止条項は 不明確である。

また、原発メーカーである東芝、日立は、経営不振から原発輸出策見直しに踏み込まざるをえない状態であり、世界における脱原発の流れは止めることはできない事態に立ち至っている。

福島原発事故後の「原子力緊急事態」が続く日本が、原発輸出を推進することは、人類の社会正義に反する。だからこそインドの原発建設予定地の住民たちは、「日本は原発事故を輸出するな!」と叫び続けるのである。

私たちは、日印原子力協力協定を承認・批准しないことを強く訴えます。

請 願 事 項
1. 日印原子力協定を承認・批准しないこと。

ハカルワカル広場

「日本と再生」が八王子で上映されます

「日本と再生」(河合弘之監督作品)が、3月24日(金)午後6時より、(旧)八王子ニューシネマにて上映されます。再生エネルギーの可能性を探った映画です。なお、午後7時40分頃から河合弘之監督のトークもあるとのことです。

なお、4時からの映画上映はありません。6時からの1回のみです。

詳しくはこちらの「日本と再生」ホームページをご覧ください。

http://www.nihontogenpatsu.com/

*料金は1200円/シニア 1000円。

ぜひご覧ください。

ハカルワカル広場

4月1日(土)の定例お茶会テーマは、「キノコと放射能」です

キノコと放射能

講師: 長谷川 明さん
日時:4 月1 日( 土) 10:00~12:00
場所: ハカルワカル広場

福島原発事故以来観察地での地中、空中、出会ったきのこの放射線量を測定されています。
きのこには重金属や放射性物質を吸収・蓄積する性質があると言われています。
放射性物質は、一度生態系の循環系に入ってしまうと、時間を経てもなかなか減少しません。
測定データをもとにキノコと放射能の関係を解説していただきます。

第三回浜岡原発見学ツアーのご案内(4月16日実施)

八王子からわずか160km、世界一危険と言われる中部電力浜岡原子力発電所は、東南海地震の危険性が叫ばれる遠州灘を背に、砂岩層の上にまさに砂上の楼閣のように建っています。その敷地内には縦横に活断層が走り、6564体にも及ぶ使用済み核燃料棒も保管されています。
ハカルワカル広場では、昨年一昨年と2回にわたり浜岡原発を見学して、その危険性を実感すると共に、現地で反対運動をしている方々との交流を深めてきました。事故が起これば、被害当事者にもなる私たちに今何ができるのか、地元の方々と情報を交換しながら、連携を深めたいと考えています。
また今回は、原発から数分のところにある、遠州七不思議の一つで竜神伝説などでも知られる『桜ケ池』を訪ね、地域の歴史にもふれる予定です。
たくさんの皆さんの申し込みをお待ちしています。

日時:4月16日(日)
集合 午前8時(八王子駅南口みずほ銀行前)
解散 午後7時(八王子駅南口)予定
見学予定場所:浜岡原発PR館・5号機周辺・桜が池歴史資料センター
現地案内:伊藤実さん・眞砂子さん他数名
参加費用:5000円~6000円(参加者数による) 高校生以下3000円 未就学児無料

*なお、参加人数が少ない場合は、バスではなく他の方法でいくこともありますので、ご承知ください。

第1次締め切り:3月15日(水)

最終締め切り:3月31日(金)

浜岡原発見学ツアーの申し込みは締め切りました。

*申し込みは下記ホームページの申し込みフォーム、電話、メールにてお願いします。

ホームページ上での申し込みページは、こちら

電話・・・042-686-0820 (火~金 午前10時~午後3時)

メール::hachisoku@gmail.com

ハカってワカった話20号 昨年の一ヶ月あたりの測定検体数

昨年の一ヶ月あたりの測定検体数

二宮 志郎

1月のお茶会の時に2016年の測定データについての総まとめの話をしました。その一部について再度ここで紹介してみたいと思います。

はじめに一ヶ月あたりの検体数ですが、まず開室以来の変遷に注目してください。次のグラフです。

開室後3年間くらい急激に落ち込んで、その後は低迷しながらも微減傾向を維持していると言えなくもありません。しかし、2014年からの3年間の傾向を下のグラフのようにして示してみたらどうでしょう。

2016年は2014年からの微減傾向では持ちこたえておらずがくんと落ち込んでいるとも言えます。

要するにどうとも言えるわけで、「測定数の減少に歯止めをかけてがんばっている」と言いたければ、上のグラフだけ見せ、「再び急激に落ち込んできている」と危機感を煽りたければ、下のグラフだけ見せればいいわけです。

政府や大企業が何か統計数字を発表する時は、「何を見せたいか」という意志が必ず働いているでしょうから、こういう細かい操作がいたるところで行われていると思っておいた方がいいでしょう。統計結果の数字で判断するというのも、なかなか一筋縄ではないですね。でも、だからと言って「感覚だけで勝負」という方向に行くのはもっと危険ですから、あくまで注意深くデータを見るということで対処するしかないと思います。

Cs137、100Bq/kgの世界は続く

測定年 検体数 Cs137 (Bq/kg)検出値平均
2012 188 273
2013 188 237
2014 73 115
2015 67 106
2016 38 110

上の表は東京都内で採取した土のCs137の測定データをまとめたものです。条件を統一して測定しているわけではないし、検体数も小さいので、断定的なことが言えるわけではありませんが、Cs137が100Bq/kg程度、表土に平均的に存在している世界に私達が住んでいて、これからも住み続けるということを物語っています。

「どうにもならないことを考えてくよくよしてもしょうがない」、私もそう言える性格でありたいと思うのですが、100Bq/kgの世界から200Bq/kgの世界へ、そしてさらに積み上がっていく世界へと、そういう方向に行く心配は、原発のない世界にならないと消せません。

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