広場だより13号 巻頭寄稿文 浜岡原発見学ツアーの感想

浜岡原発見学ツアーの感想

4月19 日、ハカルワカル広場主催により「浜岡原発見学ツアー」を実施しました。以下は寄せられた感想文です。今回のツアーはとても実り多いものになりました。参加者の熱意と伊藤実・眞砂子ご夫妻をはじめ、地元で反対運動をされている方たちのコラボの賜物です! 今後も交流を続け、共に浜岡を再稼働させない動きを作っていきましょう!
(感想文は紙面の都合により一部省略•要約•敬称略とさせていただきました。)

?最初に”浜岡砂丘”を歩いたとき、「浜岡原発」見学前の付け足しの遊びだと思っていました。
ところがこれが見学の重点の一つだったのですね。「浜岡原発」の1号炉から5号炉まで、今歩いているこの砂丘(相良層と呼ばれる泥岩砂岩の軟弱地層)の上に建てられた、文字通り”砂上の楼閣”であることを実感したのでした。また砂丘に続く遠浅の砂浜のために岸壁を作ることができず、遠浅の海の上に「取水口」の建物が建設されていることをこの目で確かめることができました。しかもそこは水深6m くらいで、その先は深く落ち込んでいる地形のため「津波が好きそうなところ」だとのこと。津波が来たら、たちまち冷却不能になることは一目瞭然。藤田さんの歌にあるように、「世界一危険な原発」であることを自分の足で歩いて、この目で見て実感することができたツアーでした。
(注:藤田さんはガイドを務めてくださった方で、「世界一危険な原発」を歌われました)

もう一つの感想は、御前崎市の16 人の市議会議員の内ただ一人の「脱原発派」として頑張っておられる清水さんのお話でした。清水さんに賛同される市議の方が、ほかにお二人いるけれど「脱原発」を口に出して表明できないということでした。地元の人々は、まるで「お上には逆らえない」という形で、「脱原発」を口にできない状況に置かれてしまっている。70年前のあの戦時に、国全体がまったく表現の自由を奪われていた状況と同じ空気が 、いま”原発立地”の地域全体を覆っているのだと感じました。(井邑)

?八王子から一番近い浜岡原発で頑張っている方々との繋がりを感じられて良かった。地元・近隣・県という広がりを視座に入れた取り組みの苦労や工夫をじかに聞くことができた。8人もの方が案内をしてくださり説明がわかりやすかった。何千億円もの無駄使い(箱物)を実際見て、市民の暮らしを豊かにするはずもない別次元の怪しさと不気味さを原発に感じた。

風紋が美しい砂浜を見ながら、浜で遊ぶ子供達の声を遠くに聞きながら「ここは、原発がなければ日本一美しい浜なんです」と話す言葉が心に残った。放射能で汚染された蒸気でタービンを回す。汚染されたタービンは定期点検では被曝労働者を生み出す。活断層に囲まれて林立する5個もの原子炉建屋は恐ろしすぎる。(斎藤義子)

?見学ツアーを企画して下さり、実際に自分の目で見て、感じることが出来感謝します。砂丘の上に建ち、まさに砂上の楼閣!市街地もすぐ側! 全く、ありえないことと再認識を強く致しました。伊藤ご夫妻の心からのご案内に、長年戦っていらした年月を思い、頭が下がります。私達も当事者という意識を持ち続けたいと思います。(K.K.)

?浜岡原発がいかに危険なものかを理解でき、どうしても廃炉にしなければと改めて思った。原発近くで生活する方々の不安は東京に住む私達以上に大きいだろう。(K.S.)

?百聞は一見にしかずですね。浜岡の方々のお世話、熱意も感動しました。皆さん自分のこと、子どもたちの未来の為と行動し勉強していることを力強く思いました。(塚本敬子)

?中電PR 館の展望台が撮影禁止となっていたが、国内では禁止ゾーンが増えているのだろうか。30 年前、原発依存社会は監視カメラが当たり前の社会になると言われていたが、それが現在進行形なのを実感。伊藤夫妻、藤田さんを始め案内してくれた皆様から元気をもらった。(A.K.)

?地球が丸く見える広大な海。サラサラの砂地・背後に迫る町並み。なぜここに原発が…まず怖い、信じられない!ツインタワーの原子力館は、箱は立派で内容は中途半端。警備は市民には意味の無い圧力、テロには無力。伊藤さん始め地元の方々の話は現地で聞くから一層染み入りました。特に海水温の7度上昇と生態系の変化。「それが4年動かさなかったことで海草が増えてきて回復してきた」との話には希望と力を感じました。(金子淑子)

?実際に原発を見学出来たことはもとより、ツアー参加者の一人ひとりから思いを伺えたのが良かった。原発をなくすことへの思いが更に強まった。(御滝達雄)

?原発を早くなくしたいけれど、そんなに簡単なことではないので、粘り強く、伊藤さんご夫妻や藤田さんのように、明るく取り組んでいくことが大切だと改めて思った。(S.K.)

?浜岡原発館内で「考えられないところまで考え抜いて安全対策をしています」とのアナウンスを聞き、こういうウソを平気で流している会社に新たな絶望を感じた。(上田恵弘)

?原発の広さ、建物の大きさを実感でき満足している。PR 館の展望室では、双眼鏡使用を止められたのには驚いた。テロ防止のためだという。(木谷恭子)

?浜岡原発の周りは市街地が広がり、民家も、市役所も、病院も近く驚きました。外国の人が「クレージー!」と言ったとか。日本人って寛容すぎるのか、無関心すぎるのか…ちょっと悲しい気持ちになりました(私もその一人)。現地の方の説明が良かったです。(R.O.)

?原発を遠くからは見ていたが、近くで目の当たりにしたことで実際の大きさを感じることが出来た。
原子炉の大きさ、燃料棒の長さに「たかがお湯を沸かすだけの為に…」と思った。地元で反原発を訴えて行くことの難しさを御前崎市議の言
葉に感じた。(水谷辰夫)

?現地の方々のお話を聞けてよかった。(本條武志)

?もっと参加したかったという人が多かった。一人では来れない素晴らしい企画でした。スタッフの皆さんに感謝。(中川勝夫)

?現地の方が何人も親身になって説明して下さりとても嬉しかった。5号棟をかなり近くで見た。どうってことのない建物の中に、恐ろし
いものがあるのだとつくづく思った。企画して下さったスタッフの皆様、ご苦労様。ありがとうございました。(林洋子)

?現場に行くことが重要であることを再確認しました。展望台からの撮影を禁じていたが、ここからの眺望が浜岡原発がいかに危険であるか一目瞭然だからだと思いました。伊藤さんたち地元の皆さんの長年の闘いの一端を見させて頂き、私達も八王子や首都圏でより広く伝えていかなくてはと思いました。(松田奈津子)

?今回の機会を作って頂きありがとうございました。また現地で案内頂いた伊藤実様他にも感謝致します。(坂本稔)

?浜岡原発について知る良い機会になりました。反対運動を継続すること、地方でも国でも反対する議員を増やすことを考えることが重要ではないかと思います。私は水素エネルギーに一番期待しており、原発を止めさせる武器にもなるのではないかと思っています。(桜井浩)

?企画自体が大変素晴らしいものでした。富士山とお茶畑、美しい砂原のある自然の豊かな地に全くふさわしくない原発の施設は、私が初めて真近に見るもので緊張しました。「見てふれて科学する情報パーク」というふれこみの「浜岡原子力館」に入って原発反対運動をしている方に説明を伺うのですから、こういう施設は反対派は大いに利用すべきだと思いました。
(伊藤セツ)

?原子力館の原子炉模型他で理解を深めることができた(事前学習会が有効であった)。現地の状況の報告が20 分ぐらいあればよかった。(伊藤陽一)

?原発事業に代わる事業・仕事を起こすのに協力すること、伊藤さんや地元四市の方々が原発0に向けて地道な活動を続け広げておられること、原発所在地と電力消費地の市民同志が連携することが大切、等を身にしみて感じた。(杉浦篤)

?市町村規模で原発反対の集会が開催されれば、多くの人が参加しやすく、身近な人が互いに原発を考えることができると思います。(山川賢次)

?知らないことが多いことを実感。そして知らないことの方が怖いなと感じました。(深沢夏実)?防潮堤は実際に見ると、間に合わせのものでしかないようです。できれば断層も見てみたかったと思いました。(東英明)

?原子力館では実物大の原子炉模型や防波壁模型も見ることができました。こんなに複雑で緻密な原発が、大きな地震に耐えうるものとはとても思えません。(阿部正治)

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ハカってワカった話12号 過去3年分のデータの振り返り

過去3年分のデータの振り返り

二宮 志郎

今回は、過去3 年分のデータを少し振り返って分析してみます。

【検体数の減少】


開室初年度の2012 年は1 ヶ月あたり100 を超えていた検体数は見事に減少の一途で、2014 年は月当たりの平均は37 検体でした。そして、2015 年1 月の検体数は28 でした。

「身の回りの土壌や、普段口にする食品に対する不安から測定してみたい」という理由での測定依頼が減少していくことは最初から予想されていたことなので、この減少をもってそれほど悲観的になることもありません。
ある程度のところで底打ちするはずだと思いますが、その底の部分を決めるのは、
?福島事故の影響が続いていることをはっきりと世の中に示し続けるために測定したい
?第二の福島事故を絶対許さないためにも日頃の監視としての測定をしたい
そういう人々の気持ちでしょう。みなんさんと一緒に、その底の部分を支えていく息の長い活動ができたらと思います。

【種類別検体数】


採取場所が東京になっている測定検体数を種類別に見てみると、きのこを除く食品は全検体数の減少と同様に一直線に減っているのですが、土・きのこ類などの汚染の高いものに関しては2 年くらいは検体数が減りませんでした。人々の測定して確認しておきたいという不安な意識は汚染が高いものに対しては長く続いたのではないかと思われます。

【種類別Cs137検出率】


同じく採取場所が東京での測定した検体のセシウム137 の検出率のグラフです。ハカルワカルに持ち込まれた検体の中での検出率になりますから、これは必ずしも世の中の汚染度を反映しているというわけではありません。人々が「これはちょっと測ってみたい」と思ってハカルワカルに測定依頼をしたものの中では、この3 年間でそれほど検出率に違いが出ていないということを表しています。

土の検出率が下がらないのは土壌汚染がそう簡単には消えてくれないことを考えると当然のことのように思われます。

【種類別Cs137検出値】


これは採取場所が東京でセシウム137 が検出された検体の中での平均検出値のグラフです。

きのこ以外の食品に関しては、検出限界値に近い測定値が多いので、このグラフはあまり動きようがなく、多くの意味を持ちません。
きのこ類は検体数があまり大きくないので、「それほど大きく変わっていない」という程度のことが窺えるだけです。

土の汚染の減り具合がかなり大きいです。表土の移動によりCs137 の物理半減期より早く減っている効果も多少は出ているのであろうと思いますが、それ以上に「ホットスポットを探して来て測定する」というのが一段落して、最近は普通の場所の測定が一般的になっているのが効いているのではないかと思えます。

開室一年目のころは、「うちの雨樋の下は8000 ベクレル!」みたいな結果が出るたびに、みなさんびっくりして、自分の身近なところにそういう怖い場所がないか一生懸命探していたようなところがありました。最近は、「ホットスポットは当然高い」という知識をつけてきた人が多く、怖いところをわざわざ探してきて測定するという人は減ってきている感じがします。

【これからは量から質へ】

ハカルワカルの測定は学術的な目的ではないので、一つ一つの測定の条件を厳しくそろえるというようなことはしていません。(やろうと思ってもできません。)そういう測定データをもとにいろいろ比較データを作っていくのは難しいところですが、それでも数がたくさんあれば統計的数値の中には何かが見えます。

3年間で測った総検体数が2653 という実績を活用するには、もう少し違う角度からの分析も必要かもしれません。また、何か思いつくことがあったらスプレッドシートのマクロを書いていろいろやってみることにします。

しかし、これから先は大量の測定データをもとに統計処理して何かを見るということは難しくなってきそうなので、狙いを絞った質の高い測定に移行していければと思います。測定検体が減ってもまだまだハカルワカルは続きますので、みなさんご心配なく。

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広場だより12号 巻頭寄稿文 浜岡原発のある町の現状

浜岡原発のある町の現状

浜岡原発を考える会 伊藤 実

正月明けに行き付けの理容店に行った。還暦近い店主が「同級生5 人が癌になった。癌が増えている」と言うので、私は「福島ではこれから子供達に癌が増えるかもしれない」と言うと、店主は黙ってしまった。隣の席に客がいたからである。そう、この町では原発に関する話題は今でもタブーなのである。

私の住む御前崎市は原発城下町だ。人口3 万5000 人、市議は16 名、内土建業4 名、原発下請け2 名。共産党1 名、民主党1 名を除く14 名が原発容認派だ。原発是非を自治体が判断するよりも、一切国任せである。

国が原発止めろ(菅内閣)と言えば止めるし、動かせと言ったら動かす。市民の不安よりも国策に従うというのは今でも変わらない。安倍政権が原発推進であるから、黙っていた議員達も今は元気が出ている。原発再稼働をすれば国からの交付金が増えるからである。「飴と鞭」作戦にまんまと乗せられている。力のある議員の地区では道路の拡張工事や新設で、土地代、移転費などの厚遇をうけている。御前崎市の西境に道の駅「風のマルシェ」が昨年オープンした。

7億円の建設費が土建屋を喜ばせたが、地元産の物より他所の物が目立つ。農協も漁協も原発容認だ。御前崎市では3.11以後も安全神話がまかり通っている。

中部電力は津波対策として高さ22m の防潮堤を建てている。その他ベント付フィルターや非常用電源としてのガスタービン発電所、使用済み核燃料の乾式貯蔵庫等、総額3000 億以上と言われる工事である。工事には全国のゼネコンが参加している。市内のスーパーでは多くの他県の車が駐車している。昨年2月には原子力規制庁に4号機の安全審査を提出し、再稼働に向けてやる気満々だ。世界で最も危険な浜岡原発が再稼働されれば、全国の全ての原発が再稼働するであろう。声には出せないが原発の怖さを感じている人は確実に増えている。特に若い人達は私達の世代のようなしがらみがないので、原発は無くして欲しいと言う。

3月には御前崎、掛川、牧之原、菊川市の周辺4市で河合弘之監督の「日本と原発」を上映する予定である。映画を見に行くことさえ勇気のいる土地柄だが、たくさんの人に見て欲しいと切に願っている。

浜岡原発周辺の7市2町UPZ圏(30 ㎞)内でも御前崎市同様の安全協定の締結を望む声が高まっている。中部電力と御前崎市は反対の姿勢だ。「他所の町は黙っていろ」と言うが、福島事故を考えれば100 ㎞以上離れた所でも汚染されたのだから、当然だろう。

川勝静岡県知事も泉田新潟県知事と同様原発再稼働には慎重である。浜岡原発には使用済、使用中の核燃料が9000 体もある。使用済み核燃料の行き先、処分方法が決まらなければ再稼働はあり得ないと川勝知事は言う。

原発事故はもとより、何十万年も管理が必要な放射性廃棄物の問題が解決されないまま、全国どこでも再稼働はしてはならないと思う。

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ハカってワカった話11号 2014年9月24日~11月7日測定結果 日野の栗

日野の栗

二宮 志郎

9月24日~11月7日測定結果

測定データの集計表は2014年9月24日〜2014年11月7日分になります。

検体種類 検体数 Cs137 Cs134
土・砂 24 21 20
土混じり植物 0 0 0
土・その他 0 0 0
泥、泥水 0 0 0
池水、川水 0 0 0
雨水・雪 0 0 0
水・その他 0 0 0
葉菜 1 0 0
根菜 1 0 0
果実・果菜 5 3 2
穀類 11 1 0
きのこ類 8 2 1
魚介類 7 0 0
肉類 0 0 0
卵類 0 0 0
水産加工品 0 0 0
肉類加工品 0 0 0
野菜・果実類加工品 1 0 0
穀類加工品 0 0 0
飲料 0 0 0
食品混合 0 0 0
茶葉 2 2 2
ペットフード 0 0 0
芽・茎野菜 1 0 0
海草類 0 0 0
食品・その他 2 0 0
植物葉 1 0 0
植物茎・枝 1 0 0
植物根 2 0 0
木質ペレット 0 0 0
植物・その他 0 0 0
0 0 0
1 0 0
その他 0 0 0
総計 65 29 25

【日野の栗】

八王子近辺の栗は今までに何度か測定したことがあるのですが、検出になったことはありませんでした。震災の翌年の2012年では八王子の栗を3検体測定していますがいずれも不検出でした。

今回日野の栗で微量とは言え検出されたことは少し驚きでした。その栗のスペクトルを少し見てみましょう。

下のラインがバックグランド、上のラインが栗を測定した時のスペクトルを示しています。バックグランドに対して高く山になって盛り上がっているところが何らかガンマ線が出ていると考えられます。微量に検出される時の特徴ですが、セシウムよりも自然放射能の方が強く出て、それと見分けるのが難しくなっています。矢印を書き込んだセシウム137のスペクトルである662keVのところが、左のビスマス214の影響と思われる山の下がってくる曲線上にあります。ここで少し踊り場高原のような部分が作られていますが、それがセシウムの存在を示します。踊り場高原がなければ「検出」と出ても誤検出と判断するところです。

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広場だより11号 巻頭寄稿文 映画「シロウオ~原発立地を断念させた町」

原発計画を阻止した町が30以上もあった!

映画「シロウオ~原発立地を断念させた町」

監督 かさこ

原発計画がありながら計画を阻止した町が30以上もあることをご存知だろうか。私は恥ずかしながら2011年に福島で原発事故が起きる以前はまったく知らなかった。

かつて日本各地に原発計画が持ち上がったのは数十年前のこと。高度経済成長期に、石炭や石油に依存せずに発電できる原子力は、輝かしい未来のエネルギーとして喧伝された。当時はチェルノブイリ原発事故も福島原発事故も起きていない。だから多くの国民は原発にもろ手を挙げて賛同したと思っていた。

ところが違った。もうその頃から原発の危険性に気づいた住民がいて、原発反対運動を行っていた。しかも国策で進められようとしていた原発計画を30以上の町が阻止したという事実に私は愕然とうちのめされた。原発の安全神話のウソをすでに見抜いた人がこんなにも多くいた。「いつか必ず事故が起きる。だからこんな危険なものを建てるわけにはいかない」。その事実を知った時、福島の事故は防げたのではないか。そんな悔しさがこみ上げる。にもかかわらず、未だに原発神話にしがみつき、原発再稼働が次々と行われようとしている。

原発計画を葬り去った住民は当時、何を思い、原発に反対したのか。30以上の町の中で、海を挟んで互いに協力し合った和歌山と徳島の住民にスポットを当て、当時の話を聞いた。それをまとめたのがドキュメンタリー映画「シロウオ~原発立地を断念させた町」である。

多額の補償金を積まれながらも彼らが断固として原発に反対した理由。それは豊かな自然や故郷を守り、子や孫に恥ずかしくない大地や海を引き継ぐということだった。しかし当時はそうした考えを嘲笑する人もいた。「日本で事故が起きるわけがない」「事故が起きても町に人が住めなくなるようなことはない」。しかし彼らの懸念は2011年に現実のものとなった。

私は福島原発事故により高放射線量のため人が住めなくなった「死の町」=福島原発20キロ圏内に一度、事故後に訪れたことがある。そこで見て驚いたのは「ここは北朝鮮か」と思うほどおかしな原発賛美看板だった。「原子力豊かな社会とまちづくり」「原子力郷土の発展豊かな未来」「原子力明るい未来のエネルギー」「原子力正しい理解で豊かなくらし」。悲しいかな、原発で豊かな町になるはずが、ここは今、人が住むことのできない立入禁止エリアとなった。この現実を前にして、故郷を失うほどのリスクを背負ってまで原発を再稼働する必要はないと確信した。

原発事故対応した当時の首相菅直人氏が著書で「首都圏3000万人を避難させることまで考えた」との文章を見て、己の危機意識のなさにうちのめされた。しかもたまたま運が良かったから首都圏は避難させないで済んだのだ。原発リスクは原発がある町や県だけの問題ではない。

「福島で原発事故が起きたにもかかわらず、なぜ原発再稼働させたのか?バカじゃないの!」と数年後に子や孫に後ろ指を指されないためにも、今、大人たちが自分たちのためではなく子や孫に安全な暮らしを引き継ぐため、原発問題を考えなければならないと思う。そのきっかけに映画「シロウオ」をご覧いただけたら幸いだ。

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ハカってワカった話10号 驚きのコシアブラ、ラドンガスについて

驚きのコシアブラ、ラドンガスについて

二宮 志郎

5月1日~8月20日測定結果

測定データの集計表は、2014年5月1日~2014年8月20日分になります。

検体種類 検体数 Cs137 Cs134
土・砂 31 27 28
土混じり植物 1 1 1
土・その他 12 11 11
泥、泥水 3 3 2
池水、川水 1 0 0
雨水・雪 0 0 0
水・その他 3 0 0
葉菜 6 1 1
根菜 5 0 0
果実・果菜 20 0 0
穀類 16 2 1
きのこ類 2 0 5
魚介類 2 0 0
肉類 0 0 0
卵類 0 0 0
水産加工品 1 0 0
肉類加工品 0 0 0
野菜・果実類加工品 1 0 0
穀類加工品 4 0 0
飲料 2 0 0
食品混合 0 0 0
茶葉 4 0 0
ペットフード 0 0 0
芽・茎野菜 9 1 2
海草類 0 0 0
食品・その他 2 0 0
植物葉 23 5 4
植物茎・枝 1 0 0
植物根 2 0 0
木質ペレット 0 0 0
植物・その他 0 0 0
1 1 1
3 3 2
その他 6 4 4
総計 161 59 56

【驚きのコシアブラ】

「茨城産の山菜で、別に乾燥・濃縮されているようなものでもない普通の生の葉っぱで、セシウムが合算で464Bq/kg」
というのを聞いた時、最初は何か測り間違いではないかと思いました。「関東の植物に出てくる量としてはあまりに高すぎる」と思ったのでした。

しかし、いろいろ調べていくとコシアブラというのは非常に激しく土壌のセシウムを吸収する樹木で、「除染に使えないか」という期待もあるような植物であることがわかりました。実際にコシアブラを測った測定データもわずかながらあって、それらはいずれもかなり高い数値を示していました。

そこまでわかって初めて、464Bq/kgというのを「あり得る」数値として見つめなおすことができました。今まで2年以上測定室を続けていながら、こういうセシウム高吸収の山菜があることを知らなかったことは少し恥ずかしい思いでした。一方で、私達ですら知らなかったということから、一般の人たちでこのコシアブラの事実を知っている人は非常に少ないと思います。「珍しい山菜をいただいた」などという機会に不用意に食べてしまっている人も多いことでしょう。

もちろん毎日食べるような人はまずいないと思いますから影響は限定的だと思いますが、これほどはっきり高レベルの汚染がわかっている山菜が存在するということをどうして消費者庁は強く警告しないのでしょう。またマスコミもその事実を取り上げないのでしょう。

その理由の推測は読者にお任せします。私達としては、「コシアブラはセシウム高吸収」という事実をみなさんの頭の中の忘れないところにしまっておくことをおすすめします。

コシアブラの様な植物が他にもある可能性は大です。珍しい食品などで気になるものがある場合、是非測定室に持ってきて測定してみてください。自分たちで調べてわかったことを共有していくことの重要性は、今回のコシアブラの件を見ても明白です。

【ラドンガスについて】

私達は放射性セシウムを測定している都合上、この放射性物質に関してはかなり勉強してきました。体内被曝した時の危険性の評価に関しては学者の中にも諸説あるくらいですから、ハカルワカルに集まってくる人の捉え方もいろいろです。

ただはっきり誰もが考えることは、「こんなものを自分の家の庭にばらまかれるのはたまったものではない」ということ、そして同時に、「他人の家の庭にばらまくようなことも決してしたくない」ということです。「自分が嫌なことを他人に強制したくない」というのは誰もが持っている基本的な道徳観だろうと思います。どういうわけか日本の首相は例外のようで、「日本がダメなら海外で」と率先して日本の原発を海外に売り込むのに熱心なようです。

「世界一安全な原発だから、決して放射性セシウムの様なものをばらまく様な事態は起こさない」と心の底から信じているのであれば、首相にもまだ言い訳の余地はあるかもしれません。しかし、仮に原発が絶対に事故を起こさない安全なものであるとしても、原子炉の燃料となるウランを掘り出すところから始まる原子力発電の様々な工程が、一部の人達に多大なる迷惑を押し付けることなしには成り立たないことははっきりしています。

ウラン採掘現場だけをとってみても、イエローケーキを作った後の残滓を広大な溜池のようなところに廃棄している様子を見て、あれが自分の町に来ても歓迎すると言える人がいるでしょうか。景観を著しく破壊するだけではなく、その残滓の中には大量の放射能があり、放射性のラドンガスが周辺に放出されています。

そこへの想像力を働かせるために、ラドンガスの危険性も少し知っておいて欲しいと思います。

ラドンガスの危険性はWHOの調査で明白になっています。WHOのラドンハンドブックには、「全肺がんのうちラドンに関係したものの割合は、国のラドン濃度平均および計算法の違いによって、3%から14%の間と評価されている」、「ラドンガス濃度が100Bq/m3増加するごとに肺がんリスクが10%〜20%程度増大する」とあります。

ウラン鉱山近辺になると、ラドンガス濃度が数万Bq/m3のレベルに及ぶこともあります。これをよその国の一部の地域の人たちに押し付けて、「原子力はクリーンなエネルギー」と言っていることは、あまりにも恥ずかしいことでしょう。

ハカルワカルではラドンの測定はできませんが、その存在を示す娘核種のビスマス214、鉛214などをスペクトルで知ることはできます。多少のラドンガスには曝されながら生きていることを実感できます。あくまで「多少」です、私達の場所では。

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広場だより10号 巻頭寄稿文 「ジャビルカの背景と現在」

「ジャビルカの背景と現在」 講演の主な要旨

京都精華大教授 細川弘明

6月21日の「ジャビルカ」の映画会で、ジャビルカの日本語監修をされた細川弘明先生に、ジャビルカの背景、またその現在について講演をいただきました。以下はその要旨です。(紙面の都合上、主要な点だけに絞りました)

【核燃サイクルのウソ】

電力会社が出す、核燃サイクルのイラストには二つのウソがある。一つは、ウラン採掘→濃縮→原子力発電→再処理→再使用と、まるでリサイクルできるかのように書いてあるがこれが大ウソ。再処理後の再利用は現在のところできていない。二つ目のウソは、この各段階(採掘、製錬、発電、再処理など)のそれぞれに異なった種類の核のゴミが出ることが書かれていない(日本政府は、核のゴミの処分方法を示していない)。 採掘より以前のウラン鉱の探査の段階から核のゴミは出る。そして環境を汚染する。特にウラン採掘の残土はアボリジニーを環境汚染、人体への被ばくという形で苦しめている。(アボリジニーは川の貝や水鳥をとって食べるため、汚染の影響を受けやすい)原発は最初の段階から人体を危険にさらすことを前提にした発電である。

【先住民アボリジニーとウラン鉱山】

 ジャビルカ(オーストラリアの北部にあるウラン鉱山)は1998年の反対運動によって、現在は採掘が凍結されている。しかし、白紙撤退ではないので、注視が必要。もう一つのレンジャー鉱山は今も今後も採掘予定。ここは、日本の九電、関電などがウランを買い付けている。

オリンピックダム(南部にある鉱山)は、東電などが買い付けていたが、アボリジニーにとって、生きるために大切な水が、ウラン採掘と製錬に大量に必要なため、枯渇の危機にある。また、製錬工場は化学プラントなので、大量の酸性の汚染水が出るが、ときどき放流するため、川や環境を汚染し、アボリジニーを
苦しめている。

【主なQ&A】

Q:アボリジニーは採掘現場等で
雇用されて、健康被害が出ているのか。
A:基本的に地元の住民を採掘作業にあてず、都市の若者を18か月の短期契約で雇用。採掘と罹患の因果関係がわからなくされている。

Q:オーストラリアのウランはどの国に最も輸出されているか?
A:以前は日本だったが、今は、中国とインドが主な輸出先。

Q:中国ではチベットがウラン採掘場とごみ処分場、ウイグルが核実験場か?
A:そうだ。世界的に見ても、核保有国がごみ処分場、ウラン採掘場、核実験場とは重なっていない。アメリカは本来、先住民の地であるネバダ砂漠を実験場とし、旧ソ連はカザフ人が住む、カザフスタンで実験した。イギリスの核実験もオーストラリアの砂漠でおこなわれ、アボリジニーが被曝した。(ハカルワカルだよりの担当者が細川先生のご許可を得てまとめました)

ジャビルカ上映会によせて

松平 久重

お花見デモで二宮さんを見かけて思わず「お手伝いをしましょうか」と言ってしまったのが運の尽き。それから約2か月間、「ジャビルカ」が後頭部におんぶお化けのようにとりついて離れないことになります。テニスで汗を流している時や忙しくしている時以外、ふと自分に帰ると「ジャビルカ」が頭を持ち上げます。どうやって資料を集めようか、どの程度でよいのか、暗中模索。その間、細川先生の参加が現実的になったり、二宮さんの不在(出張)の可能性が出てきたり。

兎も角調査を進めようと思い、日野図書館に「原子力年鑑」・「原子力市民年鑑」を調べに行き、雑誌「オルタ」のバックナンバーを取り寄せ、また、ネットで「ジャビルカ」を約100項目当たったり、「ジャビルカ通信」を全て読んだり、「世界のウラン鉱山」をチェックしたり、関連項目を探したりしていると芋づる式にどんどん事実が浮かび上がってきました。ウラン鉱山採掘でどんなに人々が苦しんでいるか、胸にこみ上げるものが多々ありました。そうか、この気持ちを、当日、映画会に来てくれる人に訴えればいいのか。あとは大事な事実を選び、アレンジして、せりふに仕立てあげるだけでした。

当初五分間の約束が、結局10分近くになってしまいましたがどれも外せない事ばかりでした。申し訳ありませんでした。しかし参加者の反応がとても素晴らしく、「真摯に聞いてくれている」ことを肌に感じていました。特にアンケートにこう書いてくれた人がいたそうです。「福島の人々を見捨て、踏みにじっているのと同じだ」。私が言おうとして言わなかったことが伝わった瞬間です。感動でした。このような機会を与えてくれた「ハカルワカル広場」に感謝!ありがとうございました。

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夏休み こども企画 ソーラークッカー工作 講習会

ソーラークッキング講習会チラシ3

太陽の光でクッキングしてみよう!

「放物面ソーラークッカー」を工作して、自分で作ったソーラークッカーを使ってその場で焼き芋を作って食べます。

太陽のパワーを体験して、自然エネルギーについて楽しく学ぼう!

日時: 2014年8月26日(火)10時~12時半 *雨天の場合28日(木)同じ時間

対象者: 小・中学生(小学生は必ず保護者同伴)

定員: 8名(代替日も参加可能な方)

場所: ハカルワカル広場

参加費: 200円(材料費実費)

持ち物: 30cmものさし、はさみ、ネームペン、カッターナイフ、サングラス、軍手または鍋つかみ、(持っていない人には貸出しします。サツマイモアレルギーの方はご相談ください)

お申込み:

ハカルワカル広場

電話 042-686-0820(火~土: 10時~15時)

メール hachisoku@gmail.com

 

ハカってワカった話9号 今年の筍は?、桜の花びら、定点観測の勧め

今年の筍は?、桜の花びら、定点観測の勧め

二宮 志郎

2月1日~4月26日測定結果

測定データの集計表は2014年2月1日〜2014年4月26日分になります。

検体種類 検体数 Cs137 Cs134
土・砂 31 27 27
土混じり植物 3 2 2
土・その他 2 2 2
泥、泥水 0 0 0
池水、川水 0 0 0
雨水・雪 2 0 0
水・その他 0 0 0
葉菜 3 0 0
根菜 2 0 0
果実・果菜 2 0 0
穀類 10 1 1
きのこ類 7 7 5
魚介類 2 0 0
肉類 0 0 0
卵類 0 0 0
水産加工品 1 0 0
肉類加工品 0 0 0
野菜・果実類加工品 1 0 0
穀類加工品 5 0 0
飲料 2 0 0
食品混合 0 0 0
茶葉 1 0 0
ペットフード 0 0 0
芽・茎野菜 11 4 3
海草類 0 0 0
食品・その他 3 0 0
植物葉 5 4 3
植物茎・枝 1 0 0
植物根 0 0 0
木質ペレット 1 1 0
植物・その他 3 2 2
2 2 2
0 0 0
その他 5 4 3
総計 105 56 50

【今年の筍は?】

春になって筍の測定も始まりました。まずは、去年・一昨年の筍の測定結果をおさらいしてみましょう。

(最高値、平均値の単位はBq/kg)

測定数 Cs137検出数 Cs134検出数 Cs137最高値 Cs137最高値
2012 25 14 12 35 16
2013 16 4 1 21 12

一昨年はだいたい半分程度から検出、昨年はだいたい1/4程度から検出という感じでした。今年は今までのところ6検体測定して半分の3検体から検出されていて、Cs137の平均値は9Bq/kg程度です。もう少し測定数が増えないと傾向についてコメントするのは難しいところですが、どうやら今年も微量ながら検出が続きそうです。

毎日食べるのでなければさほど気にすることもない汚染量だとは言え、こんな数字を気にせずガバガバ筍を食べることができる日を早く取り戻したいですね。

【桜の花びら】

八王子の桜の花びらを3回測定しているのですが、Cs137+Cs134の平均値で54Bq/kgというかなり高い数字が出ています。これらの花びらはいずれも地面に落ちたものをかき集めたものなので、花びらの表面に土埃が付着していて、その影響があると思われます。
1リットル容器に桜の花びらを詰め込んで400g程度ですが、そこに200Bq/kgの土が入り込んだと仮定してみると、土が100g入り込んだ場合で+50Bq/kgになります。

100gの土が紛れ込んだら、それはもう目で見てもはっきり土混じりであるのがわかるでしょう。ですから、そこまでの紛れ込みはないと思われます。そう考えると、やはり桜の花びらにかなりの汚染が出ていると考えるのが妥当な様に思えます。

桜の花は微量な放射能に反応して異常(花弁数が変わったり、雄しべの花弁化が起こったりする)を起こすものとして、以前から放射能の調査に使われています。たんぽぽ舎呼びかけによる「さくら調査ネットワーク」は2004年から調査を続けています。異常花をつける率が通常は0.01%程度らしいのですが、近年の調査ではとても高い数字が出ています。原発周辺地域で高くなる傾向があるようにも見えるのですが、原発と関係ないところでも高い数字が出ていたりします。異常花をつける原因は放射能だけではなく土壌汚染やダイオキシンも影響しているらしいということで、なかなか判断が難しいところです。

興味のある人はたんぽぽ舎のホームページ http://www.tanpoposya.net/ に行けば調査結果をダウンロードできますから、是非じっくりいろいろな角度から眺めてみてください。

【定点観測の薦め】

ご存知の様に、最近は一部を除いて食品から検出されることはめったにありません。この号で紹介した筍など、今でも出やすい食品がありますが検出値は微量になってきています。こういうごく一部の汚染を見つけて公表していくことは測定室にとって非常に重要な活動です。

同時に、福島事故の影響が長期間続いていることをはっきりした形で示していくためのデータ収集も大きな役割だと思っています。その意味で呼びかけているので土壌の定点測定です。

半年に一回程度、自分の身近なところで土を採取して、測定室で測定してその記録を撮り続ける活動をみなさんにお願いしたいのです。できるだけ掘り返されることがないような場所で、表面から5センチに近い一定の基準で土を採取できるところを選んでください。一度採取した後に土を戻した場所は、掘り返したことで条件が変わってしまいますから、次回の時はその近辺の別の場所から採取します。長期間採取し続けるとして10ヶ所以上掘れる場所があるところを選ぶのがいいでしょう。

測定データは個人的に記録して観察してくださるのでもかまいません。測定室で定点観測点として登録してくだされば、測定室で地図上にデータを記録したり、観測点の変化の様子を調べてみなさんお知らせすることができます。

測定室で定点観測点としての登録を申し出てくだされば、定点観測番号を発行すると同時に、その場で測定点の場所をお聞きして正確な緯度と経度を調べて記録します。

測定点を増やせば、八王子近辺で土壌汚染の変化具合を把握できるようになると思います。また「汚染が消えてない」という
現実を見つめ続けることもできると思います。是非ご協力よろしくお願いします。

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広場だより9号 巻頭寄稿文 冊子『放射能ってなんだろう?』編集 裏ばなし

冊子『放射能ってなんだろう?』編集 裏ばなし

維持会員 石井 暁子

 昨秋のある晩、西田さんからお電話をいただきました。「ハカルワカル広場で子ども向けに放射能のことを解説する小冊子を作るので、編集を一緒にやりませんか?」と。とっさに面白そう!と思いつつ、私でお役に立てるのかしらと不安もありましたが、「みんなでやるから大丈夫!」という西田さんの力強いお言葉を信じて、小冊子チームに入れていただくことになりました。

 メンバーは西田さん、二宮さん、鈴木さん、イズミコさん、鵜飼さん、石井の6名。集まっての編集会議は10月25日から始まり、全6回。あとはメールのやり取りで内容を詰めて行きました。話し合いは、自由闊達、言いたい放題、時々脱線で、ユーモアやら勘違いやらに溢れたとても楽しいものでした。その自由で楽しい雰囲気の中で、いいアイデアがポンと飛び出すという感じで、「ハカルちゃん」と「ワカル先生」のやり取りにするというアイデアもそんなふうに生まれました。

 冊子作りに関してはほぼ全員が素人で、何からどう始めていいかわからない私たちでしたが、さすがはプロのイラストレーター•イズミコさん。まず始めに、仮決めのタイトルや章立てを入れた大まかな冊子の形を作ってくれました。これを見たみんなは大喜び。「あとは文章を入れるだけだから、半分できたも同然だわ!」と喜ぶ西田さん。

(このときイズミコさんは内心「えっ?まだまだこれからが大変なんだけど…」と少し慌てたそうです。後日談。)
けれど、具体的な冊子の形が見えたことで、やるべきことがはっきりと分かるようになりました。それぞれ担当の章の原稿を書き、見せ合っては意見し修正し、だいたい形が整ってきて、あとはメインの章になる「放射能ってなに?」の二宮さんの原稿を待つばかり。1月9日に二宮さんから第一稿が送られてきました。それまで、ハカルちゃんとワカル先生の、のんびり、まったりとしたやり取りでまとめていたので、「ラジ男」の登場は衝撃的でした。これをどう違和感なくおさめるか?が急遽大きな課題に。でも、

 二宮さんの原稿の勢いと面白さを活かさない手はない、ということで全員一致したので、ほかの部分の言葉遣いなどを変えて、ワカル先生を少しワイルドにしました。

 また、もう一つ悩みの種となったのが、
この原稿にイズミコさんがつけてくれたイラスト、ラジ男の顔の色でした。私は「ラジ男」という名の暴れ者の顔が青いことに違和感をもったので、何人かの子どもたちに意見を聞いてみたところ、怖い、気持ちが悪すぎる、という返事。けれど茶色やオレンジにしてみたら、どうも迫力がない。

 結局、イズミコさんの色のセンスとラジ男の生みの親である二宮さんのご意見で、顔の色は青にすることになり、替わりに名前の方を「怪人ラジ男」としました。(怪人なら顔が青くてもいい、という子どもたちの助言もあり。

 こうして冊子『放射能ってなんだろう?』は出来上がったわけですが、小冊子チームのみならず、助言を下さり、応援して下さった方々、協力してくれた子どもたちのアイデアや想いもいっぱい詰まった、充実した内容の冊子になったと思います。
この冊子作りに関わらせていただきましたことを心より感謝申し上げます。

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