ハカってワカった話10号 驚きのコシアブラ、ラドンガスについて

驚きのコシアブラ、ラドンガスについて

二宮 志郎

5月1日~8月20日測定結果

測定データの集計表は、2014年5月1日~2014年8月20日分になります。

検体種類 検体数 Cs137 Cs134
土・砂 31 27 28
土混じり植物 1 1 1
土・その他 12 11 11
泥、泥水 3 3 2
池水、川水 1 0 0
雨水・雪 0 0 0
水・その他 3 0 0
葉菜 6 1 1
根菜 5 0 0
果実・果菜 20 0 0
穀類 16 2 1
きのこ類 2 0 5
魚介類 2 0 0
肉類 0 0 0
卵類 0 0 0
水産加工品 1 0 0
肉類加工品 0 0 0
野菜・果実類加工品 1 0 0
穀類加工品 4 0 0
飲料 2 0 0
食品混合 0 0 0
茶葉 4 0 0
ペットフード 0 0 0
芽・茎野菜 9 1 2
海草類 0 0 0
食品・その他 2 0 0
植物葉 23 5 4
植物茎・枝 1 0 0
植物根 2 0 0
木質ペレット 0 0 0
植物・その他 0 0 0
1 1 1
3 3 2
その他 6 4 4
総計 161 59 56

【驚きのコシアブラ】

「茨城産の山菜で、別に乾燥・濃縮されているようなものでもない普通の生の葉っぱで、セシウムが合算で464Bq/kg」
というのを聞いた時、最初は何か測り間違いではないかと思いました。「関東の植物に出てくる量としてはあまりに高すぎる」と思ったのでした。

しかし、いろいろ調べていくとコシアブラというのは非常に激しく土壌のセシウムを吸収する樹木で、「除染に使えないか」という期待もあるような植物であることがわかりました。実際にコシアブラを測った測定データもわずかながらあって、それらはいずれもかなり高い数値を示していました。

そこまでわかって初めて、464Bq/kgというのを「あり得る」数値として見つめなおすことができました。今まで2年以上測定室を続けていながら、こういうセシウム高吸収の山菜があることを知らなかったことは少し恥ずかしい思いでした。一方で、私達ですら知らなかったということから、一般の人たちでこのコシアブラの事実を知っている人は非常に少ないと思います。「珍しい山菜をいただいた」などという機会に不用意に食べてしまっている人も多いことでしょう。

もちろん毎日食べるような人はまずいないと思いますから影響は限定的だと思いますが、これほどはっきり高レベルの汚染がわかっている山菜が存在するということをどうして消費者庁は強く警告しないのでしょう。またマスコミもその事実を取り上げないのでしょう。

その理由の推測は読者にお任せします。私達としては、「コシアブラはセシウム高吸収」という事実をみなさんの頭の中の忘れないところにしまっておくことをおすすめします。

コシアブラの様な植物が他にもある可能性は大です。珍しい食品などで気になるものがある場合、是非測定室に持ってきて測定してみてください。自分たちで調べてわかったことを共有していくことの重要性は、今回のコシアブラの件を見ても明白です。

【ラドンガスについて】

私達は放射性セシウムを測定している都合上、この放射性物質に関してはかなり勉強してきました。体内被曝した時の危険性の評価に関しては学者の中にも諸説あるくらいですから、ハカルワカルに集まってくる人の捉え方もいろいろです。

ただはっきり誰もが考えることは、「こんなものを自分の家の庭にばらまかれるのはたまったものではない」ということ、そして同時に、「他人の家の庭にばらまくようなことも決してしたくない」ということです。「自分が嫌なことを他人に強制したくない」というのは誰もが持っている基本的な道徳観だろうと思います。どういうわけか日本の首相は例外のようで、「日本がダメなら海外で」と率先して日本の原発を海外に売り込むのに熱心なようです。

「世界一安全な原発だから、決して放射性セシウムの様なものをばらまく様な事態は起こさない」と心の底から信じているのであれば、首相にもまだ言い訳の余地はあるかもしれません。しかし、仮に原発が絶対に事故を起こさない安全なものであるとしても、原子炉の燃料となるウランを掘り出すところから始まる原子力発電の様々な工程が、一部の人達に多大なる迷惑を押し付けることなしには成り立たないことははっきりしています。

ウラン採掘現場だけをとってみても、イエローケーキを作った後の残滓を広大な溜池のようなところに廃棄している様子を見て、あれが自分の町に来ても歓迎すると言える人がいるでしょうか。景観を著しく破壊するだけではなく、その残滓の中には大量の放射能があり、放射性のラドンガスが周辺に放出されています。

そこへの想像力を働かせるために、ラドンガスの危険性も少し知っておいて欲しいと思います。

ラドンガスの危険性はWHOの調査で明白になっています。WHOのラドンハンドブックには、「全肺がんのうちラドンに関係したものの割合は、国のラドン濃度平均および計算法の違いによって、3%から14%の間と評価されている」、「ラドンガス濃度が100Bq/m3増加するごとに肺がんリスクが10%〜20%程度増大する」とあります。

ウラン鉱山近辺になると、ラドンガス濃度が数万Bq/m3のレベルに及ぶこともあります。これをよその国の一部の地域の人たちに押し付けて、「原子力はクリーンなエネルギー」と言っていることは、あまりにも恥ずかしいことでしょう。

ハカルワカルではラドンの測定はできませんが、その存在を示す娘核種のビスマス214、鉛214などをスペクトルで知ることはできます。多少のラドンガスには曝されながら生きていることを実感できます。あくまで「多少」です、私達の場所では。

⇒ハカルワカル広場だよりの主要記事のインデックスは、ここにあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。