ハカってワカった話21号 19000Bq/kgの衝撃

19000Bq/kgの衝撃

二宮 志郎

原発推進の政府が躍起になって福島事故を終わったものにしようとしても、物理法則まで変えることはできません。6年前にセシウム137が1万ベクレルあったなら、今でも8700ベクレルは残っています。半減期が30年である以上、これはどうにもなりません。そして、物質は移動させることはできても消滅させることはできません。もし移動が起こらなければ、6年前も今もたいして変わらない量のセシウム137がそこには存在しているはずです。

1万Bq/kg程度の土が八王子のどこかの雨樋の下に今も放射線を出しながら存在しているということは十分想像の及ぶ範囲で、ハカルワカルのスタッフならさほど驚くことはないでしょう。

しかし、3月の測定値で以下の数字を見た時は、我が目を疑い、何か誤測定?と思ってしまいました。
Cs137: 16600Bq/kg, Cs134: 2790Bq/kg
合わせて19000Bq/kgを越えるこの数字は、この6年間の測定活動の中でもまだ一度も見たことのない大きな数字です。

この662keVがすさまじくするどいピークを示すスペクトルが2万ベクレルの猛烈さを物語っています。最近では検出が難しいことが多いCs134の796keVのピークも十分にはっきりわかります。

高汚染の理由は?

  • ? 雨水を集める屋根面積が大きい等の高濃縮の条件がある
  • ? 雨樋下が窪地状になっていて表土が流出しにくい

おそらく上のような状況下にあり、6年前にかなり高濃度に汚染されたものがそのまま残っていたのでしょう。

さらに、わずかずつでしょうが、再浮遊・再降下で循環するセシウムを集積し続けて、初期の高濃度汚染に積み上げたのでしょう。

こういう場所がいったいどのくらい残されているのでしょうか。想像するしかないですが、雨樋の下という場所は家の数よりずっと多いわけですから、かなりたくさんあっても不思議ではないでしょう。

もっと高汚染地域なら

八王子で高い汚染値が出た時、「八王子ですら‥」ということがいつも頭をよぎります。八王子の10倍程度汚染された地域なら、20万Bq/kgがあっても不思議ではない、100倍程度汚染された地域なら200万Bq/kgがあっても不思議ではない。そういう場所はより丁寧に除染をやっているとは言っても、除染もれは必ずあるでしょう。そういう環境の中で生活する不安はいかほどのものなんでしょうか。福島事故の影響だけでなく、チェルノブイリの影響も、核実験の影響も、どこかで今日も残り続けているわけです。

「核エネルギーと縁を切る」それ以外にないという結論はもう出ていると思うのですが。

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広場だより21号 巻頭寄稿文 森とキノコと放射能

森とキノコと放射能

維持会員 長谷川 明

 福島原発事故から6年、放射性セシウムはハカルワカルの測定結果を見ても土以外はあまり検出されなくなった。その中で、時々検出されるのが山菜の一部と野生のキノコである。キノコは森の生き物。森は国土の6割を占め、多くの放射性セシウムも森にある。初めは落葉層と腐葉土の多い土壌表層に留まり、徐々にマイナスイオンを持つ粘土鉱物の多い層へと移動し結びついて固定すると思われていたが、実際は落葉層と土壌表層に留まっていた。

なぜ落葉と粘土鉱物の少ない土壌表層部に動かず存在するのか。これは森林の物質循環に放射性セシウムが取り込まれたためと言われている。この物質循環の分解を担っているのがキノコである。ではキノコはどんな生き物か、何をしているのだろうか。植物は根から無機物を取りこみ、葉は光合成を行い、枝はその葉を支え、その先に花や果実をつくる。キノコを植物に例えると、根の様に見える菌糸は根や枝や葉の役割をしている。キノコは花や果実に相当する。つまり菌糸がキノコの本体である。菌糸の径は植物の根の1/10と細い。体外消化という方法で有機物を分解・吸収するキノコにとって細いということは外界との接触面積が大きく有利である。そのうえ、細胞は長く連なり、網の目の様に縦横無尽に張り巡らせることで、さらに効率よく取り込んでいる。その規模は我々の想像を超えている。

1992年にミシガン州の山間でのナラタケの菌床では約15万平方メートルにわたって広がり、山一つ覆い尽くすほどの大きさがあり推定重量は約100tだと言う。キノコの菌糸コロニーはこのように森林の地下に広がり森の物質循環の分解を担っている。

そのキノコの生き方は、落葉や枯死木、動物の排泄物や死骸などを分解して栄養源としたり生きた植物から養分を得て、植物には水分、窒素、リン、カリ、カルシウム、マグネシウムなどの無機物を供給している。とくに窒素、リン、カリは多量要素といい植物に多量に要求される要素である。そのうちのカリはセシウムと化学的に同じアルカリ金属のため区別せず放射性セシウムを取り込んでしまう。その取り込み方は隈なく張り巡らされた細い菌糸によって効率よく集めるのである。そのほか植物の成長促進、病原菌の侵入阻止、窒素およびリン酸吸収の促進、植物への重金属の吸収を抑制などを行っている。

その棲み家としているところは有機物の多い落葉層や土壌表層部である。種によって落葉を好むもの、分解の進んだ有機層を好むものそれぞれだが、その好むところに一様に菌糸を張り巡らせコロニーを形成している。放射性セシウムもまた同じ所に留まっている。それは、たまたま菌糸と放射性セシウムが出合わせたのではなく、菌糸が放射性セシウムを取り込んだのである。チェルノブイリ原発事故後の研究でキノコの生息域の土壌中では放射性セシウムの30%から40%が菌糸によって保持されていることが明らかになっている。森林の地下には目には見えない菌糸の森が広がっている。その菌糸が放射性セシウムを保持している。こうして、放射性セシウムは森の中に留まっている。

富士山のキノコと放射性セシウム

134の実測値から福島由来の137の値を計算すると

発表日(月/日/年) 品目 採取地点 Cs137 Cs134 Cs計(Bq/kg) Cs137の計算値 Cs134実測値
10/25/12 シロナメツムタケ 河口湖町 104 54.8 160 92 54.8
10/25/12 アカモミタケ 富士吉田市 108 39.8 150 67 39.8
10/25/12 カヤタケ 富士吉田市 89.6 48.8 140 82 48.8
10/25/12 キヌメリガサ 富士吉田市 246 97.9 340 164 97.9
10/25/12 チャナメツムタケ 富士吉田市 91.4 56.4 150 94 56.4

山梨県衛生環境研究所による検査(Ge)

測定日(月/日/年) 品目 採取地点 Cs137 Cs134 Cs計(Bq/kg) Cs137の計算値 Cs134実測値
9/10/12 イロガワリシロハツ 富士山奥庭 90 19.28 109 32 19.2
9/9/12 キハダチチタケ 富士山奥庭 170 42.8 213 72 42.8
9/9/12 トビチャチチタケ 富士山奥庭 118 72.6 191 122 72.6

八王子市民放射能測定室による検査(Nal)

福島事故の放射性セシウム137と134は1対1の割合で放出された。放射性セシウム137の半減期は30年、放射性セシウム134の半減期は2年であるから、2012年10月頃の割合を計算すると約1対0.6となる。これを基に放射性セシウム134の実測値に合わせて放射性セシウム137の値を計算すると明らかに実測値と差の大きいものがある。河口湖での放射性セシウム137の実測値と計算値はキヌメリガサ以外はほぼ同じとなる。従ってそれらは福島由来の影響によるものと思われる。同じように奥庭の実測値と計算値を比較すると、イロガワリシロハツ、キハダチチタケは実測値が計算値より2~3倍高く検出されている。それは福島事故だけでなくチェルノブイリ事故、大気圏核実験の影響が残っていた分があるため、放射性セシウム137の値が高くなっていたと考えられる。標高の高い奥庭がその影響は大きかったと思われる。しかし、富士山の奥庭は溶岩の上に苔と薄い腐葉土だけが広がる森林で土らしいものはほとんど無い。したがって森に降下した放射性セシウムと結びつく粘土鉱物も少ない。長く留まることは無いと思われるがチェルノブイリ事故から30年経った今でも留まっていることになる。何故だろうか。チェルノブイリ原発事故後の研究でキノコの生息域の土壌中に放射性セシウムの30から40%が地中の菌糸によって保持されていると言われているがそのことを物語っているのではないだろうか。

(詳しくはこちらをご覧ください。https://goo.gl/4E4WmE )

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「日本と再生」が八王子で上映されます

「日本と再生」(河合弘之監督作品)が、3月24日(金)午後6時より、(旧)八王子ニューシネマにて上映されます。再生エネルギーの可能性を探った映画です。なお、午後7時40分頃から河合弘之監督のトークもあるとのことです。

なお、4時からの映画上映はありません。6時からの1回のみです。

詳しくはこちらの「日本と再生」ホームページをご覧ください。

http://www.nihontogenpatsu.com/

*料金は1200円/シニア 1000円。

ぜひご覧ください。

ハカルワカル広場

ハカってワカった話20号 昨年の一ヶ月あたりの測定検体数

昨年の一ヶ月あたりの測定検体数

二宮 志郎

1月のお茶会の時に2016年の測定データについての総まとめの話をしました。その一部について再度ここで紹介してみたいと思います。

はじめに一ヶ月あたりの検体数ですが、まず開室以来の変遷に注目してください。次のグラフです。

開室後3年間くらい急激に落ち込んで、その後は低迷しながらも微減傾向を維持していると言えなくもありません。しかし、2014年からの3年間の傾向を下のグラフのようにして示してみたらどうでしょう。

2016年は2014年からの微減傾向では持ちこたえておらずがくんと落ち込んでいるとも言えます。

要するにどうとも言えるわけで、「測定数の減少に歯止めをかけてがんばっている」と言いたければ、上のグラフだけ見せ、「再び急激に落ち込んできている」と危機感を煽りたければ、下のグラフだけ見せればいいわけです。

政府や大企業が何か統計数字を発表する時は、「何を見せたいか」という意志が必ず働いているでしょうから、こういう細かい操作がいたるところで行われていると思っておいた方がいいでしょう。統計結果の数字で判断するというのも、なかなか一筋縄ではないですね。でも、だからと言って「感覚だけで勝負」という方向に行くのはもっと危険ですから、あくまで注意深くデータを見るということで対処するしかないと思います。

Cs137、100Bq/kgの世界は続く

測定年 検体数 Cs137 (Bq/kg)検出値平均
2012 188 273
2013 188 237
2014 73 115
2015 67 106
2016 38 110

上の表は東京都内で採取した土のCs137の測定データをまとめたものです。条件を統一して測定しているわけではないし、検体数も小さいので、断定的なことが言えるわけではありませんが、Cs137が100Bq/kg程度、表土に平均的に存在している世界に私達が住んでいて、これからも住み続けるということを物語っています。

「どうにもならないことを考えてくよくよしてもしょうがない」、私もそう言える性格でありたいと思うのですが、100Bq/kgの世界から200Bq/kgの世界へ、そしてさらに積み上がっていく世界へと、そういう方向に行く心配は、原発のない世界にならないと消せません。

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広場だより20号 巻頭寄稿文 たらちね見学会で思ったこと

たらちね見学会で思ったこと

維持会員 金子 淑子

 2016年11月14日『いわき放射能市民測定室たらちね』見学会に参加しました。
行きのバスの中では、資料(A4紙7枚)を見ながらハカルワカル広場の佐々木さんの説明で『たらちね』の全体像を予習し、期待とともに改めて気を引き締めました。

子どもたちをはじめ人々を被曝から守り続けることを目的に『たらちね』が開所したのは、原発事故から約8か月後の2011年11月です。「食品などの放射能(γ(ガンマー)線)検査とホールボディカウンターによる被曝検査」から始まり、2012年からは沖縄県久米島「球美の里」での「学童保養」のいわき事務局となり、2013年3月には診療所の認可を受け専門医などによる「甲状腺検診」の開始、2015年4月には市民団体では初の「β(ベータ)ラボ」を開設、β線測定が始まりました。そして2017年4月には「放射能測定室兼検診センター」開設及び事業の開始が予定されています。放射能測定も、汚染水の流出している福島第一原発沖の海洋調査や海水浴場などの砂浜測定など現在多岐にわたっています。

見学に当たっては、事務局長の鈴木薫さんと「βラボ」の責任者工学博士の天野光先生からお話を伺いました。以下は『たらちね』のごく一部、私が特に印象深かったことです。

βラボ β線測定(トリチウム・ストロンチウム90) たらちねメソッド

多少の予習をしたとは言え、見学した「βラボ」はまるでテレビなどで見る先端科学実験室のよう。頭の中は見慣れない機材や装置と聞き慣れない専門用語でいっぱいでした。

でもはっきり分かったことがあります。原発がある限り必ず出ており体内に取り込まれたら深刻なダメージがある「β線」を、何としてでも捕まえようとしている『たらちね』の決意の強さ、機材も人材も測定方法も最高のものを求める徹底性の凄さです。その強さ凄さが、独自のβ線測定分析法「たらちねメソッド」として結実しているように思えました。

「たらちねメソッド」は、「β線を測定記録しておきたい」との「たらちねの思い」に応え、天野先生をはじめ専門の方々が、原発事故後数年の実態を踏まえて生み出した「高精度で短時間」の測定方法です。利用時の測定料金も極めて安価で、専門機関に依頼すると一検体20万円かかる料金が『たらちね』では何と1000円~3000円。様々な努力の結果と分かってはいても、この料金は本当にビックリでした。これなら誰でも利用できます。

また「βラボ」では専門的なトレーニングの必要な測定作業を先生の指導を受け「たらちねメンバー」が担当しているとのことでした。そして精密な装置の横では身近な生活用品が測定道具として使われていました。これならできる範囲で誰でも関われます。

「βラボ」はハードもソフトも市民測定室と専門家のコラボレーションの賜物です。

ママベク測定(TEAMママベク子ども環境守り隊)

子どもたちの環境を守るために母親たちが立ち上げた「ママベク測定」はとても素晴らしいと思いました。「守り隊」はタブレットPCと高感度のγ線検出器を携帯し、校庭や公園や子どもたちの生活場所でのリアルタイムの放射線量を計測記録、ホットスポットを特定してそれを「いわき市役所除染課」に連絡しています。市はこれらの測定結果への対策を市独自に検討し実施しています(例えば同じ場所の複数回除染など)。当初『たらちね』はその測定活動のため「行政への反逆、いわきをつぶす気か」とまで言われたとのことですから、現在のような市との連携に至る道のりは想像に難くありません。しかし確かなことは、『たらちね』の市民による全市民を支えるための活動が市を動かしたという事実です。

「たらちね通信vol.11」には「測定してデータをだし、測定データを共有し子どもたちの暮らしの中に役立てることができてきました」と書かれていました。

放射能測定室兼検診センター(放射能測定から診察検査・相談ケアまで)

『たらちね』の甲状腺検診は専門医が担当しています。エコー検査に加え触診も行われており、親たちはその場でモニターを見ながら医師から詳しい説明を受けているのです。このように人々の「検査結果の理解」を助け「不安な気持ち」に応えることは、結果の程度に関わらずとても大切なこと、報告書一枚の送付でできることではありません。セカンド・サードオピニオンを求め、『たらちね』を訪ねる人も少なくないとのことでした。

鈴木さんのお話では、福島県では半数の親が「県内での子育てに不安を持っている」とのことです。この「不安を安心にかえるため」今進められているのが民間初の「放射能測定室兼検診センター」の開設です。診察検査も心身の相談もケアも一括して行い、隣の放射能測定室と一体となって将来にわたって人々を支えて行く場・・これは誰もが待ち望んでいたことだと思います。その事業説明の中で特に胸を衝かれたのは「形はまだ未定ですが、センターでは小児から思春期の子どもたちの精神的ケアを考えています」との鈴木さんの言葉でした。「たらちね通信vol.10」には「子どもたちの肩には、おろすことのできない重い荷物がのっており、それをどこまで軽くできるかそれが『たらちね』の活動の意味だと感じております」と書かれています。その活動の次の一歩、子どもたち一人ひとりに、その心にも向き合う専門的でかつ日常的で継続的な場が今ここに生まれようとしているのです。その重要性はどんなに強調してもしたりないと思いました。

鈴木さんは言いました。「放射能とは共存できない」、だからこそ「生きるためにより細かくより注意深く放射能測定の精度を上げ数字を残す」、そして「今必要なこと今やるべきことを実行する」と。天野先生は、ゼロから「βラボ」を立ち上げた「たらちねメンバー」との活動を「必要は発明の母」と評しました。

「たらちねの活動」は、その殆どを同じ思いを持つ人々の寄付と協力により支えられているとのことです。「必要」を一つひとつ具体化し「必要」だから様々な困難を乗り越え事業を進めている『たらちね』は、現場そのものであり原発に立ち向かう最前線でした。

帰りのバスの中は「では八王子は・・私は・・」と話の尽きることなく、26人の参加者の26通りの思いが溢れているようでした。

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パブコメ募集のお知らせ

廃炉費用、賠償金の一部を電気料金(託送料)に上乗せして、全国民に払わせようという案が浮上しています。これに対してパブコメを書く機会があります。以下が要綱ですので、短文でもいいので書きたいですね。

要綱は以下の通りです)

【1月17日まで】原発事故費用・廃炉費用- 東京電力が責任を取らないまま、国民負担でいいの??
https://publiccomment.wordpress.com/2016/12/20/baisyohairo/
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みんなで書くパブッ!(パブコメくん)
東京電力の責任が問われないままに、福島第一原発事故の廃炉・賠償費用の一部、
通常の原発の廃炉費用の一部を、「託送料金」で回収できるようにしよう、
という案が、導入されようとしています。
経済産業省の委員会で、9月下旬からのわずか2か月強の議論で「中間とりまとめ」が出され、
現在パブリックコメントにかかっています。

【総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 電力システム改革貫徹のための政策小委員会 中間とりまとめに対する意見公募】
↓資料・提出はこちらから (1月17日〆切)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620216013&Mode=0

パブリックコメントを経て「中間報告書」となり、今年度中には「経済産業省令」として決められる見通しです。
重要な問題なのに、国会での審議もありません。

◆なにが問題なの? こちらを参考に、3行でもOK!
最大の責任者である東京電力の経営者、株主、そして債権者(金融機関)が実質的に責任を取っていません。
それを問わないまま「国民負担」にできるしくみを作ってしまえば、
「こんな大事故を起こしても、無罪放免だ。それなら安全性はそこそこに経済性を追求しよう」
というモラルハザードが原発業界に蔓延してしまいます。
それが、原発再稼働、再度の原発事故につながり、同じ事が繰り返される恐れがあります。
福島第一原発事故を収束させるのに国民負担はやむを得ないとしてもまず、
東京電力を法的整理して資産を売却し、その分国民負担を軽減すべきです。
電力システム改革の趣旨は「発電」「送配電」「小売」を分離して自由・公平な競争を促進することであり、
事故処理・賠償費用や廃炉費用を「託送料金で負担」は、将来にも禍根を残してしまいます。

◆パブコメのポイント:もう少し詳しく見たい方はこちら!
(ページ数は、「中間とりまとめ」のページ数です)
1.<全体>福島第一原発事故について、東京電力(経営者、株主、債権者)の責任が問われないまま
「国民負担」の方法が議論されていることは、本末転倒です。
また、経済産業省令だけで決めるのではなく、国会で議論すべき問題です。
2.<全体>福島第一原発事故の事故処理・賠償費用21.5兆円の問題と「切り離されて」、
負担方法だけが論じられています。
3.<18ページ>「事故に備えて積み立てておくべきだった過去分」という考え方は非合理であり、
常識的には考えられません。
4.<20ページ>(東京電力が責任を取った上でさらに不足する賠償・事故処理費用について)
原子力の発電事業者が負担するのが原則であり、「託送料金」での回収は原則に反しています。
発電コストとして回収すべきです。
5.<20ページ>廃炉・賠償費用を含めてもなお、原発が低コストであるならば、当然事業者負担とすべきです。
6.<22ページ>福島第一原発事故の事故処理費用について、「送配電部門の合理化分(利益)」が
出た場合には、託送料金を値下げすべきであり、廃炉費用に充てることは電力システム改革の趣旨に反し不適当です。
7.<23ページ>通常炉の廃炉についても、廃炉は事業者責任で行うのが原則です。

◆参考資料:さらに詳しく見たい方はこちら!
・竹村英明さんブログ記事
原発維持温存のため、東電救済を全国民に押し付ける政府
http://blog.goo.ne.jp/h-take888/e/d0e98d10af87cf7ecde40e8c21af6f62

 

冬季休業のお知らせ 12月23日~1月9日は閉室です。

ハカルワカル広場は12月23日(金)~1月9日(月)まで冬季休業のため閉室とさせていただきます。1月のお茶会も1月14日(土)となります。

この一年大変ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

ハカルワカル広場

ハカってワカった話19号 ゼオライトの測定結果を見る

ゼオライトの測定結果を見る

二宮 志郎

微量放射能漏れ監視プロジェクト、協力者のみなさんのおかげで徐々にデータが蓄積しつつあります。特に継続して定期的に測定してくださっている方のデータは大変貴重です。

継続した測定データがある測定点を選んでグラフにしてみました。選んだ測定点は、元本郷A、町田市A、川口町B、御前崎市Bの4点です。測定年月を横軸に、ゼオライトを測定して検出されたセシウム137のBq/kgを縦軸に取っています。

グラフを見れば月日の経過とともにセシウムが蓄積していっていることがわかります。これは、空から降ってきているセシウムの蓄積分です。御前崎を除いては近辺の土壌から再浮遊・再降下の現象が起こっているせいによるものと思われます。

元本郷がひときわ高い数値になっています。たまたまこの測定点がセシウムを濃縮しやすい状況にある可能性もあるので、この結果だけから元本郷という地域に結びつけて考えることはできません。

元本郷、町田のデータを見ると梅雨から夏にかけて雨が多い時期に蓄積が激しいように見られますが、川口町のデータでは冬期も夏と同じペースで蓄積が進んでいます。季節による傾向をはっきり結論づけるにはもう少しデータが必要になります。半年に一回程度の測定ではこのような解析ができません。2ヶ月毎程度の頻度での測定継続を切にお願いしておきます。

御前崎、気になる廃炉作業との関係

御前崎の測定点は浜岡原発にかなり近いところになります。福島の影響は小さい地域なので、セシウムの検出はないか極微量であろうと予想していて、最初の数カ月はそのとおりの結果でした。ところが2016年6月測定ではっきりわかるレベルでセシウムが検出されて少し驚きました。

中部電力のホームページには「放射線管理区域内解体撤去が2016年2月15日に着手」とあり、何か解体作業とともに飛んでいるのではないかという懸念が持たれます。電力会社にもしっかりこういう調査をして欲しいですが、彼らに都合の悪い結果が公開されることは期待薄ですね。

⇒ハカルワカル広場だよりの主要記事のインデックスは、ここにあります。

広場だより19号 巻頭寄稿文 福島原発事故による水産物の放射能汚染について

福島原発事故による水産物の放射能汚染について

相澤 武子

 2016年7月のお茶会で「水産物の放射能汚染について」の題で発表の機会をいただきました。2011年3月の原発事故でどれだけ海は川は汚染されたのか?そしてそこに生息する生物の汚染の実態はどうなのか?出回っている魚は、貝類は、海藻は食べても大丈夫なのか?そのような疑問・不安は当然のことです。

さて海水や海底土の放射能汚染データは、どこが持っていると思いますか?水産庁?それとも環境庁?いいえ、じつは海上保安庁です。それも福島原発事故が起こる以前からずっと測定し続けているのです。平成27年の海上保安庁のデータから、海水、海底土の汚染状況をみてみましょう。
下図は日本近海(複数地点の平均)海水中、海底土中のセシウム137の経年変化です。海水中のセシウムは2012年以後減少していますが、海底土中のセシウムは高いままです。

縦軸は対数軸目盛、下から0.1—1.0-10-100-1000-10000となるので、見方に注意してください。
福島第一原発事故により、大量の放射性セシウムが3.5ペタ(ペタ=千兆)Bq、直接海に流入しました。
その他に大気中へ放出され、海に降下した分もあります。

大気中から降下した放射性物質や海中に放出された汚染水により海水中の放射性物質濃度は高くなるが、大量の海水により拡散・希釈されながら、水中に浮遊する懸濁物質に吸着されたり、生物に取り込まれてその排泄物や死骸として、やがて海底に堆積していきます。

水産生物はセシウムを他の塩類と区別せず体内に取り込みますが、尿などにより自然に体外に排出します。海水魚では塩類は排出されやすく、淡水魚では逆に排出されにくくなります(浸透圧の関係による)。海水魚も、回遊魚か否か、表層魚か底魚かなど生息の仕方や、何を餌にしているか、食物連鎖の位置によって汚染の状況は変わってくると考えられます。

平成27年に出された水産庁の報告書によると、事故直後は表層魚であるイカナゴやカタクチイワシに高濃度の汚染が見られたが、その後低下しています。ヒラメ、マダラ、アイナメなどの底魚はその後も高濃度汚染が報告され、福島沖合のマダラは平成26年にようやく出荷制限が解除されました。

この報告書にはいくつかの調査研究結果も掲載されています。事故以前に誕生した個体が高濃度汚染されており、事故後に生まれた個体の汚染度は小さいことから、事故以前に生まれた個体が次々と寿命を迎え、事故後産まればかりになったら、高濃度汚染個体は減少すると考えられると報告しています。これからの多年にわたる調査が、この推論が正しいかどうかを証明することになるでしょう。

海水魚の汚染の解明については、今までにまとまった研究がなく、ある意味ではこの福島原発事故により、一歩前に進んだかたちになったといえます。喜んでいいのか悲しんでいいのか…。

淡水魚では、前述したようにセシウムが排出されにくいので、海水魚とはまた違った問題があると考えられます。また川は山や森から汚染された土や植物などが流れ込み、沼や池は閉じられて、水の循環が悪くなる分、汚染物質が溜まりやすくなります。このような様々な条件があるので海の水産物とは分けて考察する必要があるでしょう。

さて、淡水魚の汚染については、日本では今までほとんどデータがありませんでしたが、ヨーロッパでは、チェルノブイリの事故後に継続的研究がなされていました。

下図はフィンランドでの継続的定点調査の図です。(「淡水魚の放射能」水口憲哉 2012 P29)

小さな森の湖で魚類のセシウム値を継続的に調査したグラフです。注目すべきはチェルノブイリ事故10年後までは減少しているが、15年後、20年後の値は10年後の値とほとんど変わっていないことです。日本でもこのような継続的調査がなされるべきでしょう。

ウクライナやベラルーシ、ロシアではチェルノブイリ後の淡水魚などの変化について厳しい報告がなされています。淡水魚の核の解体、細胞膜の厚化、卵母細胞の発生異常、精巣の破壊的変化、異常精子、通常無性生殖をおこなうイトミミズで20%が性細胞を持っていた、など生殖に関する点で多種多様な異常が見られました。(「淡水魚の放射能」水口憲哉 2012 P21参照)

2012年1月から7月まで霞ヶ浦に生息する魚類等のセシウム計測値を調べた結果、食物連鎖の上位に位置する生物ほど、高濃度に汚染されていることがわかりました。現在の霞ヶ浦(西浦)では食物連鎖の最上位は、外来魚のアメリカナマズであり175Bq/㎏、その下にウナギ127、ギンブナ138、ゲンゴロウブナ91、コイ41、エビ54、ワカサギ38、シラウオ37と続いています。

ハカルワカル広場でも水産物を測定しています。
測定依頼では、水産物の検体はあまりないのですが、それでも測定数104あり、そのうちセシウム検出は3件でした。

検 体 Cs137 Cs134
2012年 ヤリイカ(茨城産) 4.8±2.4 <3.4
2014年 ワカサギ(茨城産) 21.0±5.8 14.8±4.4
2014年 イワナ(群馬水上) 14.6±7.2 12.6±5.7

先日、べぐれでねが(秋田放射能測定室)によるアオザメの測定報告が話題になりました。アオザメ(沼津産)を乾燥させた後、ゲルマニウム半導体測定器で測定。その結果乾燥させた状態で3200Bq、濃縮前換算値(乾燥させる前の状態に戻したと仮定した場合)でCs137+134で707Bqの高値(2016/6/10)を示しました。

アオザメは、体長3m前後・体重65~135kgの大型外洋性回遊魚で、マグロやカツオ、イカなどを餌としています。食物連鎖の上では上位にいる生物ですが、回遊魚ではここまで高値の報告は他に出ていないので、今後のデータを待ちたいところです。

水産物の汚染について調べていて、一つのブログに出会いました。「フライの雑誌社ブログ あさ川日記」です。このコラムには事故後に国や自治体で調査されたほぼすべての淡水魚の測定結果が載っています(「淡水魚の放射能汚染まとめ」初回エントリ2012/2/26 )。測定結果を羅列しながら、川を愛し魚を愛し釣りを愛する想いが綴られています。ぜひ一度読んでみてください。以下はそのなかの文章です。

放射能は差別しない。しかもまだ出てる。

河川がいったん放射能汚染されたら、20年以上たっても魚の汚染は消えない。それはチェルノブイリ事故で明らかだ。かといって河川や山を除染するのは不可能だ。きわめて残念なことだけれど、福島第一原子力発電所の事故で放射能汚染された山や川、そしてそこに棲んでいる魚たちは、ぼくたちが生きている間はもとには戻らない。

だから、せめて、もうこれ以上の放射能汚染を引き起こすような原発はやめましょう、という結論になる。ごく単純な理屈だ。そもそも原発が出す核のゴミ捨て場さえ決まっていないのだ。「リリースなら釣らせてくれてもいいんじゃないか」とだけ喧伝しても汚染は消えない。こういうことになった根本要因を見つめなおさないと、本当に釣り場がなくなる。根っこを見つめてこなかったら、こうなった。私たちの代で日本の釣り場をなくしてしまっていいはずがない。(2016/09/25)

結局、放射能汚染の動きをどれだけ科学的に分析したり、予測しても、わからない点が多すぎる。しかもいったん起きた放射能汚染は人の手では消せない。核とも原発とも縁を切った方が人類は幸せになれます。(2016/05/29)

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ハカってワカった話18号 意外に高い岩手産原木椎茸、コシアブラは例外的に高い

意外に高い岩手産原木椎茸、コシアブラは例外的に高い

二宮 志郎

今回は少し早めの発行ということで、測定データが約2ヶ月半分しかありません。それでなくても測定検体が減っているのに期間まで短くなりましたから、件数はかなり少なく、表を埋めるために微量放射能漏れ監視プロジェクトのゼオライトの分も含めて検出したもの全てを載せています。

いつもこの表を眺めながら、「今回のハカってワカった話の話題は何にしようか」と考えるのですが、いよいよそこからネタが出にくくなってきました。測定結果と全然関係ない話を書くと「タイトルに偽りあり」ということになってしまうので、もう少し測定結果をネタにすることにしがみついていこうと思います。そうなると今回話題にできるのは、岩手産原木椎茸と、長野産コシアブラになります。

意外に高い、岩手産原木椎茸

岩手県奥州市産の原木しいたけでCs137が122Bq/kg出ています。とは言っても、これは検体重量が53gと非常に少量であるためかなり不正確な数字です。Cs134の方も検出されていますが、スペクトルではそれらしきものが見られないので誤検出扱いになっています。おそらくCs134もCs137の1/5程度は含まれているでしょう。

岩手県は福島からはかなり離れたところになるので、感覚的には東京あたりと同じだろうとなるのですが、その感覚からすると、いくら原木椎茸とはいえ120Bq/kgというのはかなり高い数値です。

しかし、汚染マップで奥州市の位置を確認すると少し納得です。奥州市の南に島のようになって汚染の高い地域があり、奥州市も周囲に比べてやや高めの地域に区分けされています。そういう地域の原木椎茸はまだ100Bq/kgを超えてくる状況だということですね。

(早川マップの一部を転載)

コシアブラは例外的に高い

長野県栄村産のコシアブラも、検体重量が149gと小さいので、Cs137が70Bq/kgという測定値はかなり不正確です。スペクトルではCs134のピークもしっかり見られるので、Cs134が検出できていませんが存在していることは間違いないです。

長野県栄村は八王子に比べても福島原発事故の影響が低いのではないかと思えるくらいの場所ですが、それでもCs137が70Bq/kgというのですから、やはりコシアブラ恐るべしです。私達も初めてコシアブラを測定した時はびっくり仰天だったのですが、その後いろいろ情報が入ってくる中で、「高くて当然」という感覚が身についてしまって、ちかごろはもう驚かなくなってしまいました。栃木県の道の駅で売られていたコシアブラが1600~2200Bq/kgの汚染を検出したというニュースも最近ありました。

とにかく、関東・東北あたりのコシアブラを食べる時はそれなりに覚悟の上で、ということですね。

椎茸にしてもコシアブラにしても、一回食べてしまったら「これは大変」というようなレベルの汚染ではありません。目に見えない形で放射能が蔓延する社会がじわじわ人類に影響をあたえているということでしょう。政治の世界は右にしても左にしても、それを是とするのか否とするのか、ちっとも真剣に考えてくれてないのが悲しい限りです。

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