広場だより18号 巻頭寄稿文 2016年5月16日 ちくりん舎訪問記

2016年5月16日 ちくりん舎訪問記

石井 暁子

 5月16日に西田、槌谷、佐々木、石井の4名でちくりん舎を訪問してきました。対応して下さったのは、ちくりん舎の浜田和則さん、青木一政さん、中西四七生さん、濱田光一さん、女性スタッフの方でした。

八王子を車で出発し、1時間ほどで日の出町の目的地に到着。ちくりん舎に登ってゆく急な坂の入り口では、「風の塔」と呼ばれるナウシカに出てくるような大きな風車のモニュメントが迎えてくれます。そして、ぐんと急坂を登りきったところに竹林をバックに現れる山小屋風の建物がちくりん舎でした。緑の濃い森を見下ろす絶景に鶯の鳴き声が響き、なんとものどかな様子。到着するとすぐに青木さんが出迎えて下さいました。

まずは見学、ということで、測定室に2台あるゲルマニウム半導体測定器を見せていただき、設置したときのご苦労や、温湿度を低く保つための工夫、冷却用の窒素が漏れた場合に警報が鳴るように設置された酸素濃度計のことなど、詳しく説明していただきました。測定室のすぐ外に設置されたパソコンで、2台の測定器から送られてくる測定データが見られるようになっており、スペクトルの鮮明さに一同息を呑みました。

次に検体の準備室。居室とはビニールで仕切られた明るく清潔な作業場は、理科実験室(ラボ)のようでした。様々な経験から積み重ねられてきた工夫の数々。中でも、汚染濃度の高い検体が部屋に舞うのを防ぐため、掃除機を利用して手作りした排気装置付きドラフトチャンバーには、ハカルワカルメンバーから「これ欲しい!」の声も。高機能の測定器で、尿のような濃度の低いものから土などの高いものまで測るので、微量な汚染も防がなければいけないというところでの試行錯誤があったそうです。また、布団乾燥機をプラスチックのコンテナに繋いだ検体用の乾燥機も見せていただき、創意工夫に感心するばかりでした。

一通り見学も済み、交流会となりました。まずは、今回測定をお願いする「ふくしまの水」を渡し(※)、なぜ福島市の水道水をわざわざボトリングして売るのか、というところから、放射能安全神話、シーベルトのまやかし、土壌検査の必要性、リネン布を使って空気中の粉塵の放射性物質を捕まえる試み、尿検査の結果からわかってきたこと、放射能汚染の高い植物についての情報交換などへと話題は広がりました。

中でも興味深かったのは、気流の知識が豊富な中西さんたち(たまあじさいの会)の検証から、汚染物質は川下へ集まっていくだけではなく、森と街との寒暖差により霧が上流に押し戻され、上流にも汚染スポットができることを発見したというお話でした。このような興味深いお話をハカルワカルのお茶会でもぜひしていただきたいとお願いしてきました。

今回の訪問では、福島と宮城に太いパイプの繋がりを持ち、長年の知見と技術力を駆使して被災地を力強く支援するちくりん舎の姿に感銘を受けました(市民の力ってすごい!)。また、みなさんの知識の豊富さとわかり易い説明に感服するとともに、大変あたたかく、快い対応をしていただきましたことに感謝の気持ちでいっぱいになりました。

これを機に、さらに交流を深め連携していきたいと思います。ちくりん舎の皆様、ありがとうございました。

※「ふくしまの水」は福島市の水道水をペットボトルに詰めたもので、福島市で販売されています。後日ちくりん舎より送られてきた放射能測定結果報告書によるとCs134 不検出(検出限界値 0.031Bq/kg) Cs137 不検出(検出限界値 0.033Bq/kg)でした。

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「おすすめ映画・動画の紹介」

ハカルワカルだより18号で紹介した動画のリンクをリストアップします。

1. 『ナミビアウラン採掘ラッシュ』
Namibia’s Uranium Rush
日本語字幕にするには、設定で「Japanese」を選び、字幕「CC」をオンにしてください。

2. 『福島のウソ』
ドイツ国営テレビ放送ZDF「フクシマの嘘」第三弾

3. 『真実はどこに? 〜WHOとIAEA 放射能汚染を巡って〜』
真実はどこに? WHOとIAEA 放射能汚染を巡って/ NUCLEAR CONTROVERSIES

4. 『あれから5年〜福島からの避難者はいま』
レイバーネットTV第98号放送「あれから5年~福島からの避難者はいま」

5. 『草原の実験』予告編
全編セリフなしで展開する衝撃のドラマ!映画『草原の実験』予告編

追加として、以下の映画の予告編も紹介しておきたいと思います。
現在、公開中の素晴らしい作品です。

『アトムとピース』予告編
『アトムとピース ~瑠衣子 長崎の祈り~』

 
リンク先が切れている等の問題があった場合は、こちらまでご連絡ください。
 

ハカルワカル広場からの閉室(夏季休業など)のお知らせ

ハカルワカル広場は夏季休業のため、次の日を閉室とさせていただきます。

8月6日(土)および、8月11日(木)~22日(月)

どうぞご確認のうえ、他の日をご利用ください。よろしくお願いいたします。

また、8月のお茶会はお休みとさせていただきます。

9月3日(土)のお茶会は、ちくりん舎をお迎えしての講演会です。ご期待ください。

以上よろしくごお願いいたします。

ハカルワカル広場

7月2日(土)定例お茶会のご案内

先日のハカルワカル映画会「真実はどこに?」にはたくさんの方にご参加いただき、映画会の後の学習会もとても活発な意見が出て、充実した映画会となりました。ありがとうございました。

 

さて7月のお茶会のご案内です。7月2日(土)10時~12時まで、ハカルワカル広場にて恒例のお茶会を開催いたします。今回はいつものように前月の測定データを振り返ったのち、「水産物汚染について」学習いたします。魚の測定は件数が少ないのですが、他の機関の測定データも参考にしながら、水産物汚染を見てみたいと思っております。

 

ご参加をお待ちしております。

 

ハカルワカル広場

6月4日(土)お茶会のご案内

大変申し訳ありません。ご案内が当日になってしまいました。

6月4日(土)10時より12時まで、定例お茶会をいたします。

いつものように、前月のデータを振り返ったのち、今月のテーマは「隠されてきた小さな原発事故」です。これまでの、隠されてきた事故を概観します。(驚くほどたくさんの事故が起こされていますが、隠されてきました)。

不手際で、ご案内が当日になりました。お詫びいたします。

ご都合のつく方は、ぜひ、いらしてくださいませ。

ハカルワカル広場

熊本地震への皆様の寄付を熊本県へ送りました。

皆様

ご報告が遅くなりましたが、先日ハカルワカルの浜岡原発見学ツアーで集めさせていただいた、熊本地震への寄付は42850円でした。翌日4月18日に早速熊本県の震災寄付受付口座(肥後銀行 熊本県知事名義口座)へ送らせていただきました。ご協力ありがとうございました! ご報告が遅くなり申し訳ありませんでした。引き続き、ハカルワカルでは、熊本地震へのご寄付を集めております。来室の際、ご協力よろしくお願いいたします。

ハカルワカル広場

ハカってワカった話17号 5年間、原木椎茸測定記録

5年間、原木椎茸測定記録

二宮 志郎

相模原市の方が5年間同じ場所で採取した原木生椎茸の測定を続けてくれています。その測定結果を測った年との相関で示したグラフが以下です。

年々減って来て、今年の測定では測定限界に近いところまで減ってきています。2014年の段階では、Cs137は半減期が長いので減ってくれないのか、と思われましたが、今年の測定値ではかなり減ってくれています。

椎茸栽培の原木は5年程度が寿命で、そのくらい経つと椎茸に栄養を吸い取られた原木はカスカスになってしまうということですから、セシウムのかなりの部分が椎茸に吸い取られてしまったということでしょう。

そうすると、「これから先は5年前の放射能が飛来してきた時からの原木で栽培された椎茸というのはどんどん減ってくるから、それほど椎茸のことを心配する必要もなくなるだろう」、とそう考えたいところです。新しい原木がきれいな原木であれば、それは間違いないことでしょう。

新しい原木はきれいなのだろうか?

そういう疑問が当然出てきます。
椎茸の原木に向いているのはクヌギ・ナラ類ということですが、これから原木として切り出されるこういう木は、おそらく樹齢10年程度かそれ以上でしょう。そうなると、やはりあの時に汚れた木ということになります。

そういうことをお茶会の時にいろいろ議論したりしていたら、ちょうどいいタイミングで、昨年「核分裂過程」の上映会でお世話になった飯能の小林大木企画の方々から柿の木の表皮を剥ぎとったという検体の測定依頼がありました。

その測定結果が Cs137:156Bq/kg, Cs134:44Bq/kg

合わせて200Bq/kgです。もしこの木で椎茸を育てたらかなり高濃度に汚染された椎茸になるでしょう。柿の木で椎茸栽培というのはあまり聞きませんが、調べてみたらエノキ茸の栽培には適しているということです。

柿の木の表皮がこの程度汚染されているのであれば、クヌギの表皮も似た感じなのではないでしょうか。いずれにしても、「椎茸はもう安心」と言うのはちょっとまだ早すぎるようです。

そもそも「木を汚す」ということが問題なわけで、汚してしまったことを反省して「二度と汚さないようにしよう」と考えて行動することこそが、何よりも重要ですね。

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広場だより17号 巻頭寄稿文 「福島原発事故の実相について」

ハカルワカル広場お茶会特別企画 「福島原発事故の実相について」講演会

講師 佐藤和良氏

5月7日(土)1時より、アミダステーションにて、福島県いわき市の前市議・佐藤和良氏をお招きし、「福島原発事故の実相」について講演をいただきました。講演の要旨は次の通りです(特に印象深かった点をまとめました)。参加者は65名(スタッフ10名を含む)の盛況。現地の生の声を届けてくださった講師の佐藤和良様と仲介の労をとられた小金井市議・片山薫様に感謝いたします。講演後、手挽きのコーヒーとお菓子をいただきながらの交流会も活発に意見が出され、大変好評でした。

*日本中どこでも地震と原発事故は起こりうる    明日は我が身

福島原発事故は他人事ではなく、日本列島の活断層が活動期に入っている今、地震は日本のどこにも起こりうる。そこに原発があるのだから、原発事故も起こりうる。特に、熊本大地震は中央構造線に沿って起きており、伊予灘を超えると伊方原発があり、西の先端に川内原発がある。非常に危険である。歴史的にみると平安時代の貞観地震や秀吉の時代の慶長地震などの歴史地震に学ばねばならない。

*福島原発事故の背景

私(佐藤)自身は事故の前から脱原発ネットワークに参加していた。原発事故の直後、菅首相が「原子力緊急事態宣言」を出したとき、背筋が凍ったことを覚えている。メルトダウンが起こったと思った。そして、福島に残り、最後まで見届けようと覚悟した。原発の背景には貧困と差別がある。原発立地の浜通りは、「東北のチベット」と呼ばれていた。その地域が原発立地として選ばれた。原発が来れば冬場の出稼ぎはなくなると言われた。「安全神話」がそれを後押しした。命よりカネの論理が働いた。

*事故から6年目の現状

事故原因の真相は今も解明されていない。今も原子力緊急事態宣言は解除されていない。事故は収束していない。毎日、1368万ベクレルの放射性物質が大気中に放出され、アルプスという多核種除去設備でとりきれないトリチウムなどは海に放出されている。原発労働者の被ばくも深刻な問題である。

*放射能安全神話により、帰還を強いられる被害者

「原発安全神話」は「放射能安全神話」に変わり、年間20m㏜までは安全だとし、福島への帰還が強いられている(他の国民の被ばく許容量は年間1m㏜なのに、福島県民だけが20m㏜を強いられるのは憲法違反ではないか?)。2017年3月で住宅無償提供の打ち切りと、避難区域指定の解除が行われる。棄民政策である。国は、東京五輪までにと復興を急ぎ、福島原発事故はなかったことにしようとしている。福島原発事故は全国で「風化」し、加害者は「居直り」、被害者は「疲弊」している。故郷を追われた避難者は10万人、汚染地で暮らす福島県民は190万人にのぼる。また、甲状腺がんの多発、急性心筋梗塞による死亡率は全国一位である。健康被害の広がりはこれからであろう。

*声を上げ続ける被害者たちの闘い

これだけの事故を起こしながら、誰も責任をとっていない事実に、福島原発事故の刑事責任をただす福島原発告訴団の発足があった(2012年3月)。2013年3月不起訴となったが、検察審査会が二度の起訴議決をし、16年2月強制起訴へ持ち込んだ。同時に全国で東電への損害賠償請求訴訟が起こされた。この訴訟団やADRの申立団、告訴団などを結び、原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)が設立された。1.被害者への謝罪 2.被害の完全賠償、暮らしと生業の回復 3.被害者の詳細な健康診断と医療保障、被ばく低減策の実施 4.事故の責任追及 を目標としている。

*結び    これからの課題

これからはカネより命の時代、廃炉の時代になると思う。内部被ばくを低減するために市民放射能測定室活動が行われている(いわき市の「たらちね」など)。食品・全身測定と甲状腺検査の継続、検診センターの開設準備も進んでいる。原発事故被害者を救済する全国運動(100万人国会請願署名を秋の国会へ)もおこなっている。原発事故被曝者援護法の制定−−被曝者健康手帳の交付、健康診断・健康被害の予防・治療を国の責任で行うことを求めていく。中長期的目標の脱原発ではなく、即時・無条件の原発停止と廃止が必要である。

大地動乱の時代である現在、原発は今、そこにある危機である。エネルギー問題ではなく命の問題である。そして、このような問題を解決するには、原発推進が国策として行われている以上、政権を変えるほかはない。7月10日の選挙が大切だと思っている。(西田)

~福島の声を聞いて~

 佐藤和良氏の講演で最も心に響いたのは、東京に住む私たちも、単なる支援者ではなく当事者なのだということでした。熊本の大地震は、日本中どこでも、地震と、ひいては原発事故が起こりうることを実感させました。福島の被災者の方たちの苦しみを、他人事ではなく明日は我が身の問題として感じないわけにはいきません。

 私たちにできることは何なのか。今回のように現地の方たちの声を直接聞く機会を設け、交流を深めていくこと、そして、現地の実情を理解することが大切だと思います。具体的には、原発事故被災者を救援する全国運動の署名活動支援や、検診センター設立などへの協力、福島の土壌測定への協力など、福島の方との交流を通してやるべきことが見えてくると思いました。(西田)

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講演会「福島原発事故の実相について」は好評のうちに終了!

5月7日(土)のお茶会特別企画:佐藤和良氏の講演会「福島原発事故の実相について」はアミダステーションにて開催。65名もの方が参加され会場は満員、資料も足りなくなり、コピーに走るほどでした。現地からの生の声の報告に、参加者の皆さまは熱心に耳を傾けてくださり、大変好評でした。

熊本大地震が中央構造線沿いの活断層に起こっている事実をあげられ、「日本中どこでも地震、ひいては原発事故は起こりうる。他人事ではなく明日は我が身ととらえなければならない。原発はエネルギー問題ではなく、命の問題である。中長期的な脱原発ではなく即時停止、廃止を求める」と語られました。現地の方の声だけに、福島原発事故の報告も説得力があり、皆さん感銘を受けておられました。

講演後の交流会もおいしいコーヒーをいただきながら、活発に意見が出され、大変充実した講演会ができました。

講師の佐藤和良前いわき市市議と仲介の労をとってくださった片山薫・小金井市議に感謝いたします。また、参加された皆様、大変ありがとうございました!

ハカルワカル広場

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