ハカってワカった話2号 たけのこ、新茶、土、誤検出

たけのこ、新茶、土、誤検出

二宮 志郎

4月12日~7月10日測定結果

前号の続きからこの原稿を書く時点まで(4/12~7/10)のデータの集計表を以下に示します。

検体種類 検体数 Cs137 Cs134
土・砂 82 78 8
土混じり植物 4 4 4
土・その他 4 3 4
泥、泥水 0 0 0
池水、川水 1 0 0
雨水・雪 1 0 0
水・その他 12 0 0
葉菜 31 7 2
根菜 20 2 0
果実 21 3 3
穀類 42 3 2
きのこ類 19 11 10
魚介類 5 0 0
肉類 0 0 0
卵類 1 0 0
水産加工品 2 0 0
肉類加工品 0 0 0
野菜・果実類加工品 5 1 1
穀類加工品 8 1 1
飲料 14 1 0
食品混合 3 0 0
茶葉 11 4 4
ペットフード 1 0 0
芽・茎野菜 30 14 12
海草類 1 0 0
食品・その他 11 2 3
植物葉 21 11 7
植物茎・枝 4 1 2
植物根 0 0 0
木質ペレット 0 0 0
植物・その他 3 1 1
5 5 5
0 0 0
その他 0 0 0
総計 362 152 141

測定した総検体数は362です。この3ヶ月間はほとんど予約が空きになることはなく、測定日には5検体以上計り続けました。現在もほぼ3週間分の予約が一杯といううれしい悲鳴状態です。

【たけのこ】

測定室に持ち込まれる検体の中で、食品関係は季節を反映しているものがかなりあります。今回出てきているデータの中では、「芽・茎野菜」というのが30検体あり、そのうち14検体からCs137が検出されています。このほとんどは筍でした。「筍はあぶないらしい」という情報を得て心配になり測定に来られた方もたくさんいました。

Cs137+Cs134で56Bq/kgというのが最高で、30Bq/kg程度が八王子近辺の筍の一般的な汚染値でした。全て100Bq/kgの基準値以下に収まっていることは間違いありません。しかし、福島原発事故がなければ検出されるはずのなかった放射能です。「食べるのはひかえる」、「微量だから食べる」、どちらの選択をする人も、検出値を確認した時にはつらい表情をされていました。例年なら自分で掘った筍を食べる楽しみは格別なはずだったことでしょう。

来年の筍はどのくらい汚染が減ってくれるのか、多少は減ると期待できますが、どのくらいかは測ってみないとわかりません。来年の春の測定結果に注目してください。

【新茶】

椎茸やお茶で検出される傾向は前号に引き続き同じようにあります。今年の新茶はまだ測定数が少ないです。去年より汚染はかなり減っているものの微量な検出があるので、今後も測定を続けて注意していく必要があると思われます。新基準になり、一般食品とは違って飲む状態にして飲料水の10Bq/kgという基準の適用になりました。そのせいで、「不検出」として売られているお茶でも茶葉状態ではかなり汚染されているものがあって不思議はないですから、測定してみる重要度は高いです。

【土】

「土は必ずと言っていいほど汚染されています。」と、測定室でボランティアをしている人たちは毎回の様に口にしていますから、もうそれがあたりまえのような感覚になってしまっています。実際にはそういうことを知らない人の方が圧倒的に多いのでしょう。政府やマスコミはそういう事実を積極的に伝えません。「大地を汚してしまった」ということを直視して認めないで、「影響はない」というようなことだけ言いたいのです。
大地の汚染は遠く小笠原にまで及んでいることが私たちの測定でわかりました。小笠原の汚染は濃縮されている様な場所の土でやっと出てくる程度でしたが、放射能は1000kmくらいは平気で飛んでいくことが実際の測定で確認されたわけです。

【誤検出】

微量な値が検出された時、「誤検出」でないかどうかの検討がいつも必要になってきます。
実は今回の測定結果をまとめた表の中にもいくつかは誤検出と思われるものも入り込んでいます。その場で直ちに「誤検出」と判定できるものはいいのですが、スペクトルを眺めて慎重に判断する必要がある時もあります。

例えば、下のスペクトルは小松菜を測ってCs137が8.2Bq/kgと検出されてしまった時のものです。Cs137があれば662keV、 Cs134があれば605keVと796keVに山が出てくるのですが、それらしき山は見当たりません。微妙な盛り上がりを判断しようと目を皿の様にして何度も見たのですが、これで「セシウム有り」とはとても言えません。結果的に、コメント欄に「不検出」であるということを書きました。

限界値すれすれの微量なところの数値にはいつも悩まされています。

⇒ハカルワカル広場だよりの主要記事のインデックスは、ここにあります。

広場だより号 巻頭寄稿文 測定室の活動報告(4月~6月)

測定室の活動報告(4月~6月)

西田照子

土曜日も測定開始

ご希望の多かった土曜日の測定を6月から開始しました。平日お勤めの方もご利用いただけます。心配していたボランティアも、平日は勤めだから、土曜日だけでもボランティアをしたいと希望される方もいて、無事、開室にこぎつけました。当面午前中2枠の測定ですが、どうぞご利用をお待ちしております。

維持会員200名を突破!

ハカルワカル広場は、子どもの内部被ばくを防ぐために設立されました。その為には多くの方に利用していただきたいと、測定料を安価にしています。それで、ボランティアによる無償の測定と、維持会員の皆様の財政的サポートが必須です。健全な運営には、200名以上の維持会員のサポートが必要でした。

その目標を僅か4ヶ月で達成!最近では、測定に来て、私たちの活動に共感して、会員になってくださるかたが増えています。皆さまのご支援に感謝です!

給食の測定方法で市と交渉

5月31日、八王子市の山野井学事課長と久間子ども家庭部課長がハカルワカル広場を訪問。その場で、八王子こどもの未来を守る会の方々や私たちボランティアスタッフで、「市が方針としている給食1食まるごとミックス測定はシンチレーション測定器では、食材の汚染を検出できないこと」を説明し、「給食の素材を測定して欲しい」と交渉しましたが、市の方針を変えることはできませんでした。測定そのものを目的とせず、子どもの内部被ばくを防ぐために有効な測定をして欲しいと、これからも訴えて行きます。

→HPの http://hachisoku.org/blog/?p=485

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ハカってワカった話1号 測定限界値、測定結果、ホームページで公開

測定限界値、測定結果、ホームページで公開

二宮 志郎

測定限界値について

放射能や放射線の測定が身近な話題になってしまって、「測定限界値」とか「検出限界値」というような言葉も聞きなれた言葉になっている人が多いようです。実は、限界値というのは測定の度に変わってくるものなんです。それでは「測定器を買う時に何で性能を見ればいいのだ」というので、カタログ値らしきものは存在します。

私たちの測定室で使っているAT1320Aのカタログ値らしき「限界値」ですが、取説の中にあります。

「試料1時間測定、統計誤差50%(P=0.95)、バックグラウンド測定3時間」という条件下で

1000cc容器 Cs134:4.0 Bq/kg Cs137:5.7 Bq/kg
500cc 容器 Cs134:20 Bq/kg Cs137:20 Bq/kg
100cc容器 Cs134:50 Bq/kg Cs137:52 Bq/kg

最初にあげている条件が非常に重要で、これを変えれば大きく違った限界値になります。
実は、この数値は英文マニュアルの方には出ていません。そして、測定器が出してくる結果の数値は上の条件よりかなり甘いところ(統計誤差100%)で検出、不検出の判定をしています。

おそらく日本の代理店がいろいろ悩んだ挙句の上で独自に条件を設定して限界値を決めたのでしょう。

3ヶ月近く測定室を運営してみて、私たちもその悩みが十分共有できるようになってきました。測定器が出してくる数値をそのまま記述していたら、実質的には「不検出」のものも「検出」という扱いにしてしまいます。「とにかく危ないものははじき出す」という目的の検査であれば、それでいいのですが、できるだけ現実の汚染状況を正確に伝えたい私たちの目的にはそぐいません。

統計誤差が50%を越えていても、スペクトルをよく眺めてみると「これはある」と言えそうなものがあります。和文取説で採用している条件「統計誤差50%」ですぱっと不検出にしてしまうのもまた問題です。実は、私たちが公表している測定結果で「検出」になっているもののかなりは「統計誤差50%」を越えています。

というわけで、これと言った明解な「限界値」はないのです。それでも、「ごちゃごちゃ説明は抜きに、ハカルワカル広場で使っている測定器の限界値はいくつよ」と聞かれることはあります。そういう場合は「1000cc容器で30分の測定でCs134+Cs137合算で約10Bq/kg」と答えています。かなりいい加減ですが、「ごちゃごちゃ言うな」と言われた場合の話です。

測定結果通知書と結果説明

私たちは、ボランティア測定員が機械的に判断して測定結果を記入できる基準を作り、それにしたがって測定結果通知書を記入しています。後はその場のボランティア測定員の知識で説明できる限り口頭で説明しています。さらなる説明は私がスペクトルを眺めながら自宅からインターネットでデータ公開ページ上に書き込んでいます。公開ページ上では説明しきれない時は、ホームページのボランティアブログのところを使って補足しています。

「測定して出てきた結果を写し書きして終わり」という世界にしてしまえば楽です。測定器が出してくれる印刷出力をそのまま渡すだけというのはもっと楽です。しかし、手間暇かけてもそうしないでできるだけ正しい情報をお伝えするようにがんばっています。

微妙な領域でよくわからないことは正直によくわからないとお話しますし、時には依頼者の人たちと話し合いながら結果を吟味しています。

ボランティア測定員も日々経験を積んでいます。毎日の様にスペクトルを眺めて経験を積めば、人間が百数十万円の機械に負けるなどということはありません。「私は理系な話はまったくダメ」と言っていた人たちでも、セシウムのスペクトルピークをしっかり説明できるようになってきています。

測定結果通知書を受け取ったみなさんは、わからないことがあったらどんどんボランティア測定員に質問を投げてください。ボランティア測定員も投げられた質問を考えることで勉強を重ねます。

4月までの測定結果

4月11日までの測定結果をまとめたのがこのページ右の表です。インターネットをアクセスできる方は http://goo.gl/B4Jxp でグラフと一緒に見ることができます。

測定した総検体数は260です。簡単な事の様に聞こえますが260検体も測定するのはかなり大変なことで、ボランティアが人たちが毎日測り続けた、貴重な成果です。

そのうちセシウム137を検出しているのは84検体、セシウム134もほぼ同じ数字です。

検出率は約32%で、だいたい持ち込まれたものの1/3くらいからセシウム汚染が検出されているということになります。
測定した検体の36%が穀類で13%が土・砂になり、この二つが群を抜いて大きな比率を占めます。
一方で検出された検体の中では、34%が土・砂で17%が果実、穀類が9%、きのこ類が8%と続きます。

測定依頼される多くの人の関心の中心が主食の米にあることがわかります。続いては庭や畑の土になるようです。土に関しては、八王子周辺の土壌がだいたい100Bq/kg程度の放射性セシウムで汚染されていることはわかっていたことなんですが、それを裏付けるような結果が出てきています。たまに100倍というレベルの濃縮が起こったと見られるホットスポットの土も見つかっており、最高はセシウム134と137合わせて9850Bq/kgという数字でした。

土に関して、100Bq/kgや200Bq/kg程度の土を除染する必要があるかどうか聞かれることがありますが、そこいら中が100Bq/kgの世界に生きているのに、それと同レベルのものを除染することにあまり意味はありません。「そこいら中が100Bq/kgの世界」になってしまっていることが問題なんですが、それが悲しい現実です。

舞い上がる土埃を吸うことを心配される方もいますが、土埃を吸ってもミリグラムの単位ですから、量的には6桁程度下がり、摂取量は小数点以下の世界になります。セシウムの場合吸い込むことによる危険性が食べることよりも大きくなる度合いはせいぜい10倍程度までなので、どう考えても食品の影響の方が大きいです。(せいぜい10倍程度までという説が多少揺らいでも結論に差は出そうにないです。)

いくらマスクをして土埃を吸うのを防いでも、食品から数ベクレル摂取したらその努力も水の泡です。そう考えると、やはり注意を払うべき中心は食品ということなのだろうと思います。

セシウム以外の核種を気にされる人もいます。プルトニウムなどは、その吸引の危険性が非常に大きいというのは事実です。しかしながら、八王子近辺では存在比率を考えるとセシウムに比べれば非常に少ない量になります。そういう観点からセシウムを越える危険性をもたらすものではないと言えます。

食品の中では、お茶・果実(主に柑橘類)・きのこ類(主に椎茸)の3種類が非常に高い割合で検出されています。

これらの中でもお茶はかなり高い汚染が検出されており、一番高かったものは、セシウム137+134で676Bq/kgという、3月までの暫定基準値をも越えていました。お茶は汚染が高いとは言ってもお茶の葉をそのまま食べるわけではありません。お湯で出して一杯分で飲む量となると、かなり低くなるということはあります。

お茶の次に高いのは椎茸で、これは干し椎茸だけでなく生椎茸でもかなり出ています。4月からの新基準値の100Bq/kgを越えるものいくつかありました。八王子近辺で原木も地元のものでそういう数値が出ましたから、椎茸をはじめとするきのこ類はかなりセシウムを濃縮して取り込んでいるように思われます。

柑橘類関係はかなり微量で10Bq/kg~20Bq/kg程度なんですが、八王子近辺で採れたものからも出ています。皮に対して実の部分は6割程度の比率で出てきています。

穀類をたくさん測った中には、検出されたものもいくつかありました。かなり微妙な検出値が多く、検出されたものもほとんどが10Bq/kg~20Bq/kg程度のところでした。文科省の航空機モニタリング調査による土壌汚染マップで汚染が濃そうなところから出がちであるというのはありそうでした。

「10Bq/kg程度のものを食べて大丈夫かどうか」という問いには測定室見解としての回答は出ません。私は「ICRPの世界で大丈夫と考えるのでしたら、たぶん問題ないでしょう」と答えることもあります。ただしそういう時にはICRPがどういう組織なのか、預託実効線量という形でベクレルをシーベルトに変換することの怪しさも説明をするようにしています。

「汚染があるとわかったものはできるだけ食べたくはない」というのはみなさんが共通に思うことでしょうが、いろいろなものが汚染されているのでゼロを求めても無理ということはあります。ゼロが無理な時にゼロを求めて人間関係を壊したり、余分なストレスを蓄えてしまったら、元も子もありません。もちろんゼロ(事故による影響分)を無理にしてしまったことに対する「被害者としての責任」の追求と「加害者としての反省」が必要であることは言うまでもありません。

微量の検出値を公表すること自体を「風評被害を煽っている」と言う人たちもいます。汚染の実態を正しく知らせることがそういうことにつながるとは思いません。実態を正しく把握して、一人一人が自分の頭で考えられる様にすることこそが「風評被害」を防ぎます。「会津のお米10B/kg未満不検出」こういう事実を知らせることと、有名人がテレビで福島産を食べることと、どちらが「風評被害」を作るのでしょうか。「有名人にテレビで食べさせることで…」という発想には、「人々はアホで自分たちは賢い、原子力政策を決めるのは賢い自分たち」という原子力村の発想が見える気がします。

微量検出された食品に関してどうするのか、生産者とともに東京電力や政府に補償を求めるか、健康被害がゼロではないが生産者との痛み分けで食べるか、生産者には申し訳ないとは思いながらそういうものは避けるか・・・。人によっていろいろな対応、考え方があります。そこのところもオープンに話をしながら、それぞれの自己決定を尊重しつつも、「福島事故の後始末をみんなでどうやっていくのか」考えていけるところが私たちの測定室だと思っています。

ホームページでのデータ公開

この冊子の限られた紙面でたくさんの測定結果についてお伝えしきることはできません。毎日の測定データは、たいていその日のうちにホームページから「測定結果を見る」をクリックすることで見れる様にしています。インターネットにアクセスできる人は、ぜひ活用してみてください。

測定依頼の方の感想

ずっと不安を覚えつつ、行動を起こしてこなかったのですが,こちらの広場の存在を偶然知ったおかげで,ようやく測定していただくというアクションに移れました。ありがとうございました!皆様の行動力に敬服します。(Hさん)

地元(相模原市)でも測定室を作りたいと思いながらもなかなか一歩が踏み出せず‥‥お隣の八王子市でこのような場所を作ってくださりありがとうございます。これからいろいろ勉強していきたいと思います。何よりも確かな事実・情報が頼りになると思っていいます。測定結果の公表も助かります。がんばってください。(Yさん)

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広場だより1号 巻頭寄稿文 ハカルワカル広場が測定活動開始!

ハカルワカル広場が測定活動開始!

西田 照子

        
会員の皆様!

お待たせしました!10月以来進めてきた設置運動が実り、1月29日に八王子市民放射能測定室《ハカルワカル広場》がオープンし、測定活動を始めております。みなさまのこれまでのご支援に感謝いたします!

私たちの測定室は次の三つがなにより大切と考えています。

*子どもたちを内部被ばくから守りたい
*ひとびとが集い交流できる広場にしたい
*市民が気軽に測れる低価格
~1件1000円 実現~           

この三つの目的を実現するために維持会員の皆様に運営をサポートしていただいています。

八王子市の片隅の小さな測定室。でも「子どもたちを内部被ばくから守りたい」という願いは熱く、その思いで、無償のボランティアが測定し、結果を説明しています。

非力な私たちですが、科学的に測定し、データを市民が持つことが、国や企業がデータを隠すことを監視できる方法だと信じています。まだまだ低線量の被ばくが人体に与える影響の全貌は解明できていません。私たちは食品を測定して、より安全なものを、子どもに与えたい。また、このような測定室が将来不要な時が来る、その日まで、皆さんとともに測定室活動をやって行きたいと考えています。

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