学校給食を全部まとめて測るとなぜダメなのか

学校給食を全部まとめて測るとなぜダメなのかを考えてみましょう。

参考に、文科省、学校給食の標準食品構成表からパン食の場合で10~11歳を見てみましょう。一食の給食として食べる総重量がだいたい560gとなっています。一食品だけ100Bq/kgのセシウム汚染があり、あとは汚染がなかったとします。そうすると560gに対して10%を占めれば(56g使われれば)10Bq/kgで出てきます。10Bq/kgが検出限界ならそれ以下の比率だと100Bq/kgの汚染食品があっても見えないことになります。

食品構成表を見てみます。表に出ているのはあくまで平均値ですから、その日その日で見るとある食品だけが多かったりするようなことはあるでしょう。しかしパンの小麦とミルクを除くと、ほとんどの食材は10%の56gは使われそうもないように思われます。

100Bq/kgというのは、消費者庁が食品安全衛生法違反として取り締まるレベルです。消費者庁は「混ぜて薄くなるからいいというものではなく、一品たりともそういうものは流通させてはいけないということです」と明言していました。全部混ぜて測定している限り、そういうレベルのものがあってもほとんど不検出になってしまうということですね。

ハカルワカル広場の4月までの測定データを見てみると、食品で100Bq/kgを越えたものは、椎茸とお茶だけです。給食でお茶の葉を食べることはありません。200Bq/kgで汚染されている椎茸が一人分に28g以上使われるようなことがあればやっとぎりぎりでひっかかってくる、そういうレベルの測定ということです。

こんなことをするくらいなら、椎茸だけ測っている方がまだましです。

給食をまるごと一緒にしてしまって測るのがダメなら、どういう測り方をすればいいというのでしょう。ダメだ、ダメだ、と言っているだけでは何なので、私なりに私案を提案してみましょう。

今の測定室と同等レベルのシンチレーション式の測定器での測定では、1検体の測定に30分程度は必要になります。そうなると、がんばっても1日に10検体程度でしょう。一ヶ月に200検体とか、その程度です。

その程度しか測れないということをまず認識した上で、測定対象にする検体の絞り込みが必要でしょう。絞り込みは次の3点から行います。

  • 生産地
  • 使用量
  • 食品種類

ハカルワカル広場のデータや、その他の測定所の公開データも参考にして、どういう生産地のものが要注意かを調べて、西日本などの安全と思われる産地のものは測定対象から除外します。

使用量に関しては多いものの測定優先度をあげて、ごく少量しか使用しないものは測定対象から除外します。

食品種類は、ハカルワカル広場のデータや、その他の測定所の公開データを参考に毎月の様に危険度の高い食品リストを更新しながら、そのリストにあるものを優先的に測定するようにします。

これらで、月に200検体程度にまで絞り込みます。どうしても絞り込めない場合は、抜き取りにするしかしょうがないでしょう。

絞り込みの作業、測定業務、測定結果の評価・公開、といったようなことを行う市の職員はそれなりに知識と経験を積んでいないと無理です。今までの既存の部署を横断して指導できるような担当者の養成が必要でしょう。そういう担当者の養成には多少の時間が必要でしょうが、ここは急がば回れです。安易な測定プランから無意味な測定を開始するくらいなら、しばらく待ってもしっかりした測定を開始できるようにした方がずっといいでしょう。

どうやって、そういう知識と経験を積んだ担当者を養成するのでしょうか。とても安上がりですばらしい方法があります。担当者に一ヶ月間ハカルワカル広場でボランティアしてもらえばいいのです。

私たちの測定室で連日で一ヶ月ボランティアすれば、測定に関してはかなりの知識と経験を積めます。それに多くの市民との対話もできますから、市のやることとしては一石二鳥の効果を得られます。

私たちとしては、どこかから給料をもらっていてボランティア精神が確認できない様な人をボランティアの一員として迎え入れることは、通常ではかなり慎重になるところですが、市がよりよい測定を実現するためというのであれば、特別に歓迎して受け入れることができるでしょう。
市の職員を受け入れることに対して多少のお金を市が測定室に落としてくれるならそれは歓迎ですが、私たちはケチなことはいいませんからそれがないと受け入れないなどということはありません。ですから、なんと、市としては外部に出て行く予算ゼロで職員を教育することが可能なわけです。

どうでしょう、八王子市はハカルワカル広場と協力しながら消費者庁から貸与される測定器の運用を十分練り上げて最大限に有効活用することが可能なはずです。他の自治体が模範としたいようなそういう測定ができるでしょう。要は、それをやる気があるかどうかです。

「学校給食を全部まとめて測るとなぜダメなのか」への13件のフィードバック

  1. 31日(木)の午前10時半に、市の山の井学事課長と、久間子ども家庭部課長が見学に来られるということです。その時に、給食の測定に関して私たちの要望も聞いてくださるということですので、急いでこの投稿を書いておきました。

    31日に測定室の来れる方は、ぜひその話し合いの場にお出でください。疑問、不安、要望などを直接に市の職員の方に聞いていただけるいいチャンスだと思います。

  2. 二宮さん、まとめて頂きありがとうございます。
    まったくその通りです。
    機種にあった測定方法を望みます。
    実際に小中学校の献立表を見ると、測るべきものは全てではないと思います。
    業者さんも栄養士さんも仕入れで頑張っていると思いますし、
    学校(市)は契約した業者から購入しているので、
    食材を流通段階で測る事も不可能ではないはずです。
    一般市民がここまで本気なのですから、それに応えて欲しいです。
    子どもたち&食の安全を守るのに垣根はいりません。

    どうしてもまるごとで測る必要があるなら、ゲルマでないと意味ないので外注するくらいのやる気を見せていただきたいです。ただし、その場合も食材の検査は必須ですね。

  3. 二宮さん、「ませて測るとなぜだめなのか」を早速投稿してくださって、ありがとうございます! それに提案も具体的にしてくださって頼もしいです。これを市に提案しましょう。市の職員がボランティアで来てくれれば、研修になりますよね。このアイデア、最高です! 子どもの内部被ばくを防ぎたいと願って、この測定室を立ち上げました。だからそのためなら、市と喜んで協働します! (西田)

  4. 市の公報をみたら764万円が計上されています。
    https://dl.dropbox.com/u/17141431/2012-06-13%2023.34.00.jpg
    これです。

    「まるごとミックス」でわざと検出されにくくして、わかりきっている「ND」を報告するためだけに764万円。かくのごとく市民の税金はドブに捨てられていくものなんですねぇー。

    764万円あったら、ハカルワカル広場をもう一室、もしからしたら二室、新たに作ることができるでしょう。

    この予算をめぐる市議会の審議は以下の様になっているというということです。
    ——————————————-
    6月14日 本会議 10時より 
          代表質疑で各会派から質問が出ています。
    6月15日 厚生委員会 10時より
          補正予算の審議をします。
    ——————————————-

    興味のある方は是非傍聴に行ってみてください。

    1. 傍聴には行けなかったので、家で午前中だけインターネット中継を見ていました。

      会議開始1時間半頃保健所の担当者の答弁がありましたが、

      *八王子市の給食は新鮮なものを提供する為、食材は当日朝の納入なので、事前検査は無理

      *現在国や都が行っているサンプル検査で、市場の食品の安全は確保されている。八王子市が行う1食分丸ごと検査は、給食提供後に給食の安全を再確認して安心していただくためのもの

      という趣旨の回答をしていました。

      その後お昼休みになり、午後の審議は見られませんでした。

      今日の本会議の模様は、1週間以内に市議会HPにUPされ、4年間見ることができます。

      http://www.hachioji-city.stream.jfit.co.jp/
      平成24年第2回市議会定例会

  5. この給食一食丸ごと測定については、15日の市の厚生委員会で検討されて、丸ごとミックスで行くことに決定。補正予算も全会一致で通過したとの連絡がありました。大変残念ですが、私たちは、コツコツと測定を続け、食品汚染の傾向を公表し続けて行きましょう。迂遠な方法に見えて、結構効果的なことも世の中にはあることですから。(西田)

  6. 市が測った後の「まるごと」の試料を譲ってもらうことはできないでしょうかね。
    測定室で、徹底的に乾燥させて、10倍くらいに濃縮することができれば、もうちょっとまともな測定ができると思うのですが。

    しかし、市が汚染を隠蔽するためにわざと絶対にNDにしか出ない測定をしているのであれば、試料を譲ってくれたりは絶対にしないでしょうね。

    1. ペースト状になってしまっているものを乾燥させるにはどうするのがいいか考えてみました。

      1) まだ煮詰められるようであれば、焦げ付かない程度まで煮詰める
      2) アルミホイルの様なものの上にできるだけ薄く広げる
      3) お天気がいいなら天日で干す。扇風機で上から軽く送風すると効果的。
      4) お天気が悪いなら、ホットプレートなどで低い温度で加熱して水分を飛ばす。この時も扇風機は効果的。
      5) カリカリになったら回収する。

      やはり乾燥には、表面積をできるだけ大きくした上での、加熱・送風がポイントであろうと思います。
      しかし、これでうまくカリカリになってくれるのかどうかは、やってみないとなんともですね。

      テフロンプレートの様なもので焦げ付かないのなら、加熱一本やりでもカリカリできるのかもしれません。

    2. 乾燥ならmicrowave ovenにかなう物はないでしょう。日本語でいう電子レンジです。ただ電気食いなんですよねぇ…。全自動だからといって放置してると中で発火することが結構あるようなのでその辺も気をつけないといけない。

      1. 電子レンジはある程度まではけっこういけると思うのですが、換気がそれほどよくなさそうなので、湿気が充満してしまった状態から後は効率悪い気がします。
        電子レンジのタイプによるのかもしれませんが、うちにあるのは、換気よくないですね。

        いずれにしても、あれでカリカリにするには相当の電力がいりそうで、あんまりやりたくはないですね。

  7. 丸山さんが、5月16日に乾燥させたライスを測定する実験をされていますね。「測らないとわからない放射線」 http://radimaru.blogspot.jp/ に掲載されています。沖縄のライスを測ったものですが、重量が11分の1になり、11倍精密に測定できる計算です。乾燥させるのに、どういう方法を使ったのか書いてありませんが、半日かかったと書いてあります。またオーブンを使おうとしたが、半日つけっぱなしで、後ろの壁が灰になるから、やめろと言われたそうです。沖縄の方はどうやって乾燥されたのか、彼女に聞いてみます。(西田)

    1. http://radimaru.blogspot.jp/2012/05/blog-post.html
      このぺーじですね。
      1730g→734g
      というのですから、約2.4倍の濃縮ですね。
      11倍というのは、もし1食分だけで測ることがあったらそれに対してということで、この時の1食分220gは少なすぎるので正しくありません。

      2.4倍程度の濃縮では、ちょっと効果のほどは?です。
      これはご飯だけの場合の話で、野菜などが入っているとさらに含水率が上がると思いますからもう少し濃縮率が上がると期待できます。
      さらに汁物のおかずなどが混じっていたら10倍濃縮もありえるかもしれません。

      10倍濃縮できたら限界値が10Bq/kgでも濃縮前なら1Bq/kgということになりますから、100Bq/kgの汚染食品が一桁%しか含まれていない場合でも検出可能になってきます。

      「安全を再確認して安心していただくため」というなら、市がこのくらいのことをやったらどうなんでしょう。保健所ならでかい乾燥機を持っているような気がするのですが。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です