ハカってワカった話 原木しいたけ4検体

二宮 志郎

 世の中コロナウィルス騒動で大変ですが、コロナウィルスに感染しているかどうかの検査にはPCR法というのが使われています。私は全然知らなかったのですが、今は高校の生物の授業でも教えている、基本的なバイオテクノロジーの一つのようです。「特定のDNAだけ増殖させる」ということができるのですから、バイオの世界は大したものです。

 しかし、バイオの世界でも誤判定というのはつきまとうようで、「偽陽性」「偽陰性」という誤った結果が一定程度出てしまうのは避けがたいようです。それでも「検査して判定を知る」ことができることのメリットは絶大で、100%の正確さでなくても客観的事実に近づければ、有効な対策も打ちやすくなるということでしょう。ハカルワカルの測定にも共通するものがあるように思えます。

原木しいたけ4検体

測定番号 検体産地 Cs137 (Bq/kg)
19121702 東京都、日の出町 10.9
20020402 東京都、八王子産 37.3
20022001 秋田県、購入八王子 誤検出(11.7)
20022101 秋田県、購入八王子 不検出
(上記を洗浄後再測)

 微妙なところで検出、不検出に分かれている結果です。秋田県の検体のスペクトルを以下に示します。

 青線のスペクトルを見れば明らかにウラン系列の自然放射能による誤検出であることがわかりますが、洗浄して再測定した結果の赤線はほとんどバックグランドと重なっていますから、自然放射能の原因は付着物にあったことがわかります。

八王子産は検出

 八王子産は37.3Bq/kgとやや大きな数値が出ています。誤差範囲の13Bq/kgを考慮に入れてもセシウム137による汚染が少なからずあるようです。

 この検体と日の出町産の検体のスペクトルの660keV付近を拡大したものを以下に示します。

 八王子産が赤線ですが、660の線のところまで山が広がっているところから見ても、自然放射能の影響だけではなくCs137が存在していることを示しています。青線の日の出町産はCs137の存在は微妙です。誤差範囲は4.5Bq/kgで限界値ギリギリのところでの検出になっています。

 林野庁のホームページに行くと、「きのこや山菜の出荷制限等の状況について」という情報があり、まだまだ多くの市町村で原木しいたけに対して出荷制限がかかっていることがわかります。福島原発事故から9年、放射能はまだまだ人を苦しめ続けているという現実がそこにあります。

 ハカルワカルの測定で原木シイタケから放射能の検出がなくなる時が来たら、少し喜んでいいのかもしれません。もちろん、目を背けることでなくなるのでなく、測り続けることで「本当になくなった」ことを知るのでないと喜べません。

⇒ ハカルワカル広場だよりの主要記事のインデックスはここにあります。

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