広場だより27号 巻頭寄稿文 福島原発事故を風化させないために

福島原発事故を風化させないために

八王子中央診療所 医師 山田 真

 このところ、高木仁三郎さんが1986年当時に書かれたものを読み返しています。高木さんは核化学を専門とする物理学者で、政府の原子力政策に対し提言を行うため、原子力資料情報室を立ち上げた人です。2000年に亡くなりましたが、ご存命中ぼくも接したことがあります。その高木さんが1986年、チェルノブイリ事故が起こって衝撃を受け、「同じような事故は日本でも起こり得る」と日記に書いています。そしてどんな事故になるか具体的な予測をしているのですが、それは2011年の福島原発事故をシミュレーションしたようなもので、高木さんの警告をぼくたちがきちんと受けとめて反原発運動ができていたら、福島の惨事は防げていたのではないかと思うのです。

 そして、福島の惨事が起こって7年余の今、また福島のことも忘れ去られそうになっています。いつまた原発事故が起こるかもわからないのに、身を守ることも考えられていないようです。

 原発で大事故が起こったら身を守ることも困難ですが、いくらかできることはあります。例えば安定ヨウ素剤を持っていれば、甲状腺を守ることができます。ですから、安定ヨウ素剤は原発が存在する国に住む人は必ず持っているべきものです。安定ヨウ素剤は事故が起こったらすぐにのまなくてはいけませんから、いつも財布などに入れて身につけていなければなりません。それでぼくは、フォトジャーナリストの広河隆一さんに協力して安定ヨウ素剤の無料配布会を行ってきました。そしてこのたび八王子でも行うことができました。特に放射線の影響を受けやすい子どもを守るためにも、どの家庭でもヨウ素剤を用意して下さい。

 

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