広場だより12号 巻頭寄稿文 浜岡原発のある町の現状

浜岡原発のある町の現状

浜岡原発を考える会 伊藤 実

正月明けに行き付けの理容店に行った。還暦近い店主が「同級生5 人が癌になった。癌が増えている」と言うので、私は「福島ではこれから子供達に癌が増えるかもしれない」と言うと、店主は黙ってしまった。隣の席に客がいたからである。そう、この町では原発に関する話題は今でもタブーなのである。

私の住む御前崎市は原発城下町だ。人口3 万5000 人、市議は16 名、内土建業4 名、原発下請け2 名。共産党1 名、民主党1 名を除く14 名が原発容認派だ。原発是非を自治体が判断するよりも、一切国任せである。

国が原発止めろ(菅内閣)と言えば止めるし、動かせと言ったら動かす。市民の不安よりも国策に従うというのは今でも変わらない。安倍政権が原発推進であるから、黙っていた議員達も今は元気が出ている。原発再稼働をすれば国からの交付金が増えるからである。「飴と鞭」作戦にまんまと乗せられている。力のある議員の地区では道路の拡張工事や新設で、土地代、移転費などの厚遇をうけている。御前崎市の西境に道の駅「風のマルシェ」が昨年オープンした。

7億円の建設費が土建屋を喜ばせたが、地元産の物より他所の物が目立つ。農協も漁協も原発容認だ。御前崎市では3.11以後も安全神話がまかり通っている。

中部電力は津波対策として高さ22m の防潮堤を建てている。その他ベント付フィルターや非常用電源としてのガスタービン発電所、使用済み核燃料の乾式貯蔵庫等、総額3000 億以上と言われる工事である。工事には全国のゼネコンが参加している。市内のスーパーでは多くの他県の車が駐車している。昨年2月には原子力規制庁に4号機の安全審査を提出し、再稼働に向けてやる気満々だ。世界で最も危険な浜岡原発が再稼働されれば、全国の全ての原発が再稼働するであろう。声には出せないが原発の怖さを感じている人は確実に増えている。特に若い人達は私達の世代のようなしがらみがないので、原発は無くして欲しいと言う。

3月には御前崎、掛川、牧之原、菊川市の周辺4市で河合弘之監督の「日本と原発」を上映する予定である。映画を見に行くことさえ勇気のいる土地柄だが、たくさんの人に見て欲しいと切に願っている。

浜岡原発周辺の7市2町UPZ圏(30 ㎞)内でも御前崎市同様の安全協定の締結を望む声が高まっている。中部電力と御前崎市は反対の姿勢だ。「他所の町は黙っていろ」と言うが、福島事故を考えれば100 ㎞以上離れた所でも汚染されたのだから、当然だろう。

川勝静岡県知事も泉田新潟県知事と同様原発再稼働には慎重である。浜岡原発には使用済、使用中の核燃料が9000 体もある。使用済み核燃料の行き先、処分方法が決まらなければ再稼働はあり得ないと川勝知事は言う。

原発事故はもとより、何十万年も管理が必要な放射性廃棄物の問題が解決されないまま、全国どこでも再稼働はしてはならないと思う。

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