ハカってワカった話15号 減っているのかセシウム土壌汚染

減っているのかセシウム土壌汚染

二宮 志郎

ハカルワカルの呼びかけに応じて、身近な場所で土壌の定点測定を継続してくださっている人達がいます。おかげで、原発事故の影響が継続していることを実感するための貴重なデータ採取が可能になっています。今回はそのようなデータに注目してみたいと思います。

上のスペクトルは八王子市小比企町の2012年
5月(赤線)と2015年10月(青線)の比較です。この間に約3.4年が経過しており、それはセシウム134の半減期の1.7倍になります。その場合のセシウム134の減衰量を計算すると31%になります。796keVのピークは赤線の盛り上がりに比べて青線の盛り上がりは3割程度に減っているように見えます。また605keVのピークは赤線の方ではふたこぶになっている山の左側の位置ですが、青線の方ではこぶが見えなくなっています。3割程度に減って、右側の山の斜面に隠れて見えにくくなっているのだと理解できます。

一方セシウム137の方を同じ期間での減衰量を計算すると92%ということになります。1割程度減るかどうかというところですが、662keVのセシウム137ピークの場所で赤線の盛り上がり部分と青線の盛り上がり部分のヘリ具合はちょうどその程度に見えます。

結局この地点の放射性セシウムの減衰はほぼ物理的な半減期に従っているように見えます。この調子で行くと、現在2000Bq/kg程度あるセシウム137の汚染は30年後にも1000Bq/kg程度残ることになります。

上のスペクトルは千代田区の公園の土を毎年測っている4年分のデータを重ねています。
緑→黄→赤→青 の順で1年間隔で経過しています。数値変遷を括弧内前年比とともに示すと
Cs137:377→286(76%)→208(73%)→194(93%)
CS134: 302→166(55%)→92(55%)→63(68%)
のようになります。物理半減期に従うならCs137は毎年98%に、Cs134は71%に減っていきます。

最初の3年間は物理半減期よりかなり早いペースで減ってくれていたのに、去年から今年にかけては物理半減期に近いペースに減速しています。
おそらく、細かい粒子に付着していたセシウムは雨水が流れる度に細かい粒子の流れと共に少しずつ持って行かれて、そのおかげで物理半減期より早く減っていたのでしょう。そういう細かい粒子が流れ尽くしてしまって、残った付着分は雨水の流れで減ることがほとんどなくなり、物理半減期に近づいてきているのではないかと思われます。

こういう現象があちこちで起こっているのではないかと思うのですが、それを調べることができたのは4年間の定点測定のおかげです。

もう一箇所データを見てみます。
上のスペクトルは新宿区の公園の土で、去年の7月(赤線)と今年の9月(青線)の比較です。ほとんど重なるスペクトルですが、セシウム137を示す662keVのピークは青線の方がむしろ上に来ています。去年に比べて増えているということになります。
測定値でも
Cs137:333→394, Cs134:130→108
となっています。Cs134の数値は減っていますが、物理半減期に従うと1年2ヶ月経過すると130→87程度に減っているはずで、108との差の21は、その程度増えたと考えるのが妥当でしょう。
「増える」ということはあり得るのでしょうか。

それは、私達が「微量放射能漏れ監視プロジェクト」で雨樋の下に置いたゼオライトが毎月汚染値を増やしていることを考えれば、十分あり得ることだと理解できるでしょう。

再浮遊・再降下という形で日々降り注いでいる放射性セシウムは微量ではありますが、集積させて吸着させていくとかなりの量になっていきます。
「再降下の影響で新たに集積する分」ー「再浮遊で出て行く分」ー「流出による減少分」ー「物理半減期による減少分」
この結果がプラスになれば増えることになります。

おそらく新宿区公園の検体を採取した場所は少し窪地になっているとか、何か再降下してきたものを集積しやすい状況になっているのでしょう。

結局、全体で考えれば、物理半減期で減る分以外は単に移動しているだけです。物理半減期より早く減ってくれるところがあれば、早く減った分はどこかに移動しただけの話です。その移動した分を引き受けた場所では、物理半減期より遅く減っていったり、場合によっては増えたりするということになるわけです。

生み出してしまった放射能との付き合いは決して逃れられないですね。

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