広場だより17号 巻頭寄稿文 「福島原発事故の実相について」

ハカルワカル広場お茶会特別企画 「福島原発事故の実相について」講演会

講師 佐藤和良氏

5月7日(土)1時より、アミダステーションにて、福島県いわき市の前市議・佐藤和良氏をお招きし、「福島原発事故の実相」について講演をいただきました。講演の要旨は次の通りです(特に印象深かった点をまとめました)。参加者は65名(スタッフ10名を含む)の盛況。現地の生の声を届けてくださった講師の佐藤和良様と仲介の労をとられた小金井市議・片山薫様に感謝いたします。講演後、手挽きのコーヒーとお菓子をいただきながらの交流会も活発に意見が出され、大変好評でした。

*日本中どこでも地震と原発事故は起こりうる    明日は我が身

福島原発事故は他人事ではなく、日本列島の活断層が活動期に入っている今、地震は日本のどこにも起こりうる。そこに原発があるのだから、原発事故も起こりうる。特に、熊本大地震は中央構造線に沿って起きており、伊予灘を超えると伊方原発があり、西の先端に川内原発がある。非常に危険である。歴史的にみると平安時代の貞観地震や秀吉の時代の慶長地震などの歴史地震に学ばねばならない。

*福島原発事故の背景

私(佐藤)自身は事故の前から脱原発ネットワークに参加していた。原発事故の直後、菅首相が「原子力緊急事態宣言」を出したとき、背筋が凍ったことを覚えている。メルトダウンが起こったと思った。そして、福島に残り、最後まで見届けようと覚悟した。原発の背景には貧困と差別がある。原発立地の浜通りは、「東北のチベット」と呼ばれていた。その地域が原発立地として選ばれた。原発が来れば冬場の出稼ぎはなくなると言われた。「安全神話」がそれを後押しした。命よりカネの論理が働いた。

*事故から6年目の現状

事故原因の真相は今も解明されていない。今も原子力緊急事態宣言は解除されていない。事故は収束していない。毎日、1368万ベクレルの放射性物質が大気中に放出され、アルプスという多核種除去設備でとりきれないトリチウムなどは海に放出されている。原発労働者の被ばくも深刻な問題である。

*放射能安全神話により、帰還を強いられる被害者

「原発安全神話」は「放射能安全神話」に変わり、年間20m㏜までは安全だとし、福島への帰還が強いられている(他の国民の被ばく許容量は年間1m㏜なのに、福島県民だけが20m㏜を強いられるのは憲法違反ではないか?)。2017年3月で住宅無償提供の打ち切りと、避難区域指定の解除が行われる。棄民政策である。国は、東京五輪までにと復興を急ぎ、福島原発事故はなかったことにしようとしている。福島原発事故は全国で「風化」し、加害者は「居直り」、被害者は「疲弊」している。故郷を追われた避難者は10万人、汚染地で暮らす福島県民は190万人にのぼる。また、甲状腺がんの多発、急性心筋梗塞による死亡率は全国一位である。健康被害の広がりはこれからであろう。

*声を上げ続ける被害者たちの闘い

これだけの事故を起こしながら、誰も責任をとっていない事実に、福島原発事故の刑事責任をただす福島原発告訴団の発足があった(2012年3月)。2013年3月不起訴となったが、検察審査会が二度の起訴議決をし、16年2月強制起訴へ持ち込んだ。同時に全国で東電への損害賠償請求訴訟が起こされた。この訴訟団やADRの申立団、告訴団などを結び、原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)が設立された。1.被害者への謝罪 2.被害の完全賠償、暮らしと生業の回復 3.被害者の詳細な健康診断と医療保障、被ばく低減策の実施 4.事故の責任追及 を目標としている。

*結び    これからの課題

これからはカネより命の時代、廃炉の時代になると思う。内部被ばくを低減するために市民放射能測定室活動が行われている(いわき市の「たらちね」など)。食品・全身測定と甲状腺検査の継続、検診センターの開設準備も進んでいる。原発事故被害者を救済する全国運動(100万人国会請願署名を秋の国会へ)もおこなっている。原発事故被曝者援護法の制定−−被曝者健康手帳の交付、健康診断・健康被害の予防・治療を国の責任で行うことを求めていく。中長期的目標の脱原発ではなく、即時・無条件の原発停止と廃止が必要である。

大地動乱の時代である現在、原発は今、そこにある危機である。エネルギー問題ではなく命の問題である。そして、このような問題を解決するには、原発推進が国策として行われている以上、政権を変えるほかはない。7月10日の選挙が大切だと思っている。(西田)

~福島の声を聞いて~

 佐藤和良氏の講演で最も心に響いたのは、東京に住む私たちも、単なる支援者ではなく当事者なのだということでした。熊本の大地震は、日本中どこでも、地震と、ひいては原発事故が起こりうることを実感させました。福島の被災者の方たちの苦しみを、他人事ではなく明日は我が身の問題として感じないわけにはいきません。

 私たちにできることは何なのか。今回のように現地の方たちの声を直接聞く機会を設け、交流を深めていくこと、そして、現地の実情を理解することが大切だと思います。具体的には、原発事故被災者を救援する全国運動の署名活動支援や、検診センター設立などへの協力、福島の土壌測定への協力など、福島の方との交流を通してやるべきことが見えてくると思いました。(西田)

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