木くずの汚染はどの程度?
二宮 志郎
この3ヶ月間の測定結果を見て、少し気にかかったのが「木工の木くず」です。Cs137の測定値は10.9Bq/kgで誤差範囲が6.4Bqと出ています。検体重量が300gしかないこともあり、10Bq/kgは測定限界に近いところです。スペクトルを見てみましょう。
Cs137が存在する場合の特徴である662kevあたりのピークはほとんどわかりません。640kev〜700kevの範囲が少しバックグランドの赤線より上に来ているという点ははっきりしています。
こういう結果は何とも言いがたく、「微量に存在しているように思われるが、誤検出の可能性もある」というような、何とも歯切れの悪い言い方になってしまいます。はっきりさせるには高精度に測れるゲルマニウム半導体測定器の様なもので再測定するしかありません。
木材の汚染
一般的に木材の放射能汚染はほとんどない、ということになっています。樹木の汚染の大半は葉・枝の部分に行き、樹皮の部分も多少の汚染がありますが、木材に使われる心材・辺材部分への汚染の移行は非常に小さく、林業が可能なレベル(作業者の被曝量が基準値以下)の場所で取れた樹木であれば、最終製品の木材に心配しなければいけないような放射能汚染量がある可能性はないという認識です。
いい機会なので、木材の測定データがネット上にあるか調べてみたのですが、安全だということになっているせいかあまりないようです。ハカルワカルでも木材そのものを測定した記憶はありません。
国立研究開発法人・森林総合研究所というところの人達が震災のあった年の秋に調査をして、「放射性セシウムによる森林や木材への影響について」という報告を行っています。ネットで検索すればPDFファイルが見つかりますから、興味のある方は是非一読をお薦めします。
とても真剣かつ良心的な調査をしていて、私にはとても勉強になりました。一つ驚いたのは、セシウムの樹皮・辺材・心材への数年かけての移行が木の種類によって異なり、スギ心材は特に移行が大きいということです。事故後の初期にほとんど汚染が見られなかったスギ心材も数年後に出てくる可能性があるということです。
植物というのも本当に奥が深いですね。コシアブラの高濃度汚染を知った時にも驚きましたが、「一般的にこうだ」という話には決して収まってくれないものが存在しています。放射能汚染を考える場合、特にそういう点に気をつける必要があると言えます。だからこそ広範で地道な調査活動が重要になってくるのでしょう。そういう分野の研究費が削られないことを望むばかりです。
木材に数Bq/kg〜数十Bq/kg程度の汚染が仮にあった場合を考えてみます。たとえば子どもの学習机の天板がそうであった場合、その天板のせいで子どもが外部被曝する量は無視できるレベルと言えるでしょう。天板は食べることもないし、削った粉を吸い込むこともありません。「表面を削って木くずを口に入れかねない」という話があるにしても、その量は非常に微量で気にする必要はないでしょう。
残念ながら私達の身の回りにはもっと危険なものがたくさんありますね。
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