ハカってワカった話22号 不検出になってくれない原木椎茸

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不検出になってくれない原木椎茸

二宮 志郎

6月、7月の測定結果の中で、原木椎茸の2検体からセシウム137が約30Bq/kg検出されています。セシウム134の方は限界値以下不検出です。スペクトルを眺めてみても、セシウム137を示す662keVのところの膨らみははっきりしていて、セシウム137の存在は否定しようがないです。

原木椎茸に関しても「ほとんど全てが不検出」になる日がやってくることを期待しているのですが、なかなかそうなってくれません。厚生労働省の調査結果などを見ても、関東・東北エリアの原木椎茸からセシウム137が検出されるのは止まっていません。

汚染のない原木を調達するのが困難な状況が続いているのではないかと推測します。血のにじむ努力を続けている椎茸農家の人たちには本当に気の毒な状況です。福島原発事故の悲劇は、まだまだ続いているということですね。

椎茸をどのくらい食べている?

関東・東北の原木椎茸は多少のセシウム汚染があることは覚悟するとして、はたしてどの程度の量食べていて、結果的にどの程度の放射性セシウムを体内に取り込んでいると見積もればいいのでしょうか。もちろん人によって椎茸の好き嫌いもありますし、一概に言えるものではありませんが、日本人の平均的な食べ方でみたらどうなるのでしょうか。

林野庁のホームページに「きのこ関係資料」というのがあります。ここで引用したグラフで、きのこを食べる量の見当がつきます。20年くらい前からは3.3kg程度で落ち着いています。福島原発事故の後、食べ控えが起こっているのかもしれませんが、だいたいこの程度が目安なんでしょう。

さらに、この年代別消費量のグラフで椎茸とその他のきのこ類の比率がわかります。年代による差が少しあるようですが、2〜3割程度が椎茸のようです。大雑把に見て1人が年間に食べる椎茸の量は1kg程度ということになります。

50Bq/kg汚染の椎茸を平均的な量食べた場合、年間で体内に摂取する量が50Bq程度ということになります。

ICRPの預託実効線量を使った計算では年間1ミリシーベルトの許容量に達する量の1/1000以下ということなります。もちろん、椎茸以外から一切影響を受けてないということはありませんし、住む場所によっては外部被曝の影響分も加味しないといけません。

ICRPより100倍厳しい基準で見るとしても椎茸を食べる分からの被曝は現状それほど厳しく考えなくてもいいような気がします。ただ、こんな状況を二度と作らない様に努力することは次世代に対する私達の責任でしょう。

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広場だより22号 巻頭寄稿文 関東も汚染現地

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関東も汚染現地

放射能からこどもを守ろう関東ネット/ハカルワカル維持会員 柳沢典子

2011年3月15日の朝9時過ぎ、千葉県柏市の自宅。20数年ほとんど鳴ることのなかった放射能検知器がけたたましく鳴り始め、福島から200km離れていても原発事故では汚染の現地になることを知った。空間線量は0.8μシーベルト超が記録され(東大測定)、数千か所に及ぶ市民による土壌調査でも、文科省の航空モニタリング調査でも、放射線管理区域とされる値であることがわかっている。幼児、妊婦は立ち入り禁止、飲食は禁止される場所、チェルノブイリ事故では避難推奨地域だ。街角には核のマークをつけるべきだが誰もつけようとしない。国は重点調査地域に手を挙げた自治体に除染費用を交付しただけだ。ガラスに溶け込んだセシウム(セシウムボール・不溶性のため肺への影響が子どもで180倍)等、放射能の各核種が舞い散る中、子どもたちは外遊びをし、学校の窓は閉じられず、グラウンドで部活をして泥まみれになった。

官邸は放射能漏れの実態を11日17時には把握しており、「関東では雨の日に個人の対応としてカッパを着ること」や乳児のミルク備蓄について原子力安全委員会緊急助言組織が提言をしていたが無視、放射性物質拡散予測システムSPEEDIも報道されることはなく、山梨あたりまでの関東圏の人々はかなりの被ばくを強いられることになった。

私はチェルノブイリ原発事故以降、食品放射能を測るボランティアを14年、また輸送時を含む原子力防災について市に要望、その経験上、放射能の影響を早期に最小限にすることの重要性を感じていた。

311後市議会に請願を数度、いくつか採択。同時に子どもの給食など食品の測定、環境の測定、除染を率先して行うパパママたちとつながるのだが、やがて市を巻き込んでいく。意識のある自治会では住民による除染を市の職員とともに行う。しかし汚染土の行き場はなく、できるだけ人のこない場所に埋めるだけだ。そして市との協働では健康問題に突っ込んでいくことは難しかった。

一方、健康を心配する親たちは茨城、千葉、埼玉とつながっていく【放射能からこどもを守ろう関東ネット】。茨城県守谷市の常総生協がゲルマニウム測定器を用意、まず市民で土壌数千か所を調査して子どもたちの健康調査を、と各省庁まで要望する。超党派議員による「原発事故子ども被災者支援法」が成立するが反応は鈍い。環境省の「福島原発事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」は日本医師会の石川理事らが、被ばくは県をまたいでいる、健康支援を早急に、といった意見を無視、病気と事故の因果関係ははじめからないとして会議が進む。業を煮やし2013年9月に親たちが立ち上げた【関東子ども健康調査支援基金】は独自に甲状腺エコー検査を行っている。スクリーニング検査を受けた子たちはすでにのべ7000人以上になり、神奈川でも始まっている。現在、甲状腺エコー検査に補助金を付ける自治体も出ている。

原発事故の健康影響は甲状腺以外にもさまざまで事故から31年たった現在でもチェルノブイリ周辺では元気な子どもが少ないと現地医師はいう。2016年9月【311こどもがん基金】が立ち上がり、甲状腺がんと診断された子どもに給付を行っている。100万人に1~2人と言われていた甲状腺がんが福島では

190人と数十倍の確率。福島以外の東京や神奈川でも4人と、甲状腺がんの子どもがでてきている。関東でもこの小さな基金に申し出がこれだけあったということは潜在的にどれくらいあるのか、なのだ。自覚症状が出てがんに気づいた場合は症状がすでに重くなってしまっているため早期発見と治療が有効。被ばくを受けた関東圏では少なくとも子どもは甲状腺チェックを受けるしくみが必要だ。国策によって被ばくをしたのだから健康に生きる権利がある。

人の痛みはもちろん数字ではわからない。進学、結婚等進路を余儀なく変更させられる。甲状腺の疾患は内臓全体に関わり疲れやすく、生きていくのがつらいと思うほど気力がなくきつい症状が出ることがある。闘えない被害者がいまだ苦しんでいる。追い打ちをかけて「復興」、「前向き」、「オリンピック」の掛け声でいっそう声が出せなくなり、自主避難者も支援打ち切りで兵糧攻め、汚染地へ帰れと追い詰められている。

福島の子どもの尿からは今も日常的にセシウムが検出されているデータがある。汚染は何十年も続く。千葉では現基準の0.23μSV/h以上の場所があちこちで見つかっている。つい先日は除染した土が埋められた場所だったか、運動会の入場門を建てるために校庭を掘ったら1μSV/hを超えたという。

汚染土は1300度で焼くとセシウムは土から離れ、フィルターに集めることができるが高くつく。貯蔵場所にも困りはて国は8000Bq/kg以下は防波堤の基礎などとして再利用するという。上は覆うというが昨今の災害の多さや規模からしてもまた露出していくだろうことは容易に想像できる。日本中で利用だから日本中が汚染されていく事実を受け入れてくれということだ。なにしろ今なお「原子力緊急事態宣言中」だから。世界的にも最大の公害であり人権蹂躙が進行している。

いろんな意味で原発事故はあなたの住むそこが汚染現地になったということだ。土に親しめないなんて生物としてどうなのか?これ以上の原発稼働などありえない。外部配管が壊れれば再び核災害、このウィークポイント施設を残して軍備拡張など茶番にすぎないと思う。

さあ自然エネルギーの電気を選ぼう、(手続きは簡単。ただしスマートメーターは不要、法律違反ではない)、
子どもの健康状態はチェックしよう、
被災者支援団体、保養団体を支援しよう。そして以下【 】、 ぜひ検索を。

【関東子ども健康調査支援基金】     神奈川でも甲状腺エコー検査 事前申込制
【3・11甲状腺がん子ども基金】    甲状腺がんと診断された子どもへ療養費給付
【放射能からこどもを守ろう関東ネット】 子どもを守るための実際的な活動
「3.11後の子どもと健康~保健室と地域に何ができるか~」 713円
         (岩波ブックレット 大谷尚子・白石草・吉田由布子 共著)

自治会住民が団地内の公園を除染

衆議院議員候補者に必死のアピール

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ハカってワカった話21号 19000Bq/kgの衝撃

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19000Bq/kgの衝撃

二宮 志郎

原発推進の政府が躍起になって福島事故を終わったものにしようとしても、物理法則まで変えることはできません。6年前にセシウム137が1万ベクレルあったなら、今でも8700ベクレルは残っています。半減期が30年である以上、これはどうにもなりません。そして、物質は移動させることはできても消滅させることはできません。もし移動が起こらなければ、6年前も今もたいして変わらない量のセシウム137がそこには存在しているはずです。

1万Bq/kg程度の土が八王子のどこかの雨樋の下に今も放射線を出しながら存在しているということは十分想像の及ぶ範囲で、ハカルワカルのスタッフならさほど驚くことはないでしょう。

しかし、3月の測定値で以下の数字を見た時は、我が目を疑い、何か誤測定?と思ってしまいました。
Cs137: 16600Bq/kg, Cs134: 2790Bq/kg
合わせて19000Bq/kgを越えるこの数字は、この6年間の測定活動の中でもまだ一度も見たことのない大きな数字です。

この662keVがすさまじくするどいピークを示すスペクトルが2万ベクレルの猛烈さを物語っています。最近では検出が難しいことが多いCs134の796keVのピークも十分にはっきりわかります。

高汚染の理由は?

  • 🌑 雨水を集める屋根面積が大きい等の高濃縮の条件がある
  • 🌑 雨樋下が窪地状になっていて表土が流出しにくい

おそらく上のような状況下にあり、6年前にかなり高濃度に汚染されたものがそのまま残っていたのでしょう。

さらに、わずかずつでしょうが、再浮遊・再降下で循環するセシウムを集積し続けて、初期の高濃度汚染に積み上げたのでしょう。

こういう場所がいったいどのくらい残されているのでしょうか。想像するしかないですが、雨樋の下という場所は家の数よりずっと多いわけですから、かなりたくさんあっても不思議ではないでしょう。

もっと高汚染地域なら

八王子で高い汚染値が出た時、「八王子ですら‥」ということがいつも頭をよぎります。八王子の10倍程度汚染された地域なら、20万Bq/kgがあっても不思議ではない、100倍程度汚染された地域なら200万Bq/kgがあっても不思議ではない。そういう場所はより丁寧に除染をやっているとは言っても、除染もれは必ずあるでしょう。そういう環境の中で生活する不安はいかほどのものなんでしょうか。福島事故の影響だけでなく、チェルノブイリの影響も、核実験の影響も、どこかで今日も残り続けているわけです。

「核エネルギーと縁を切る」それ以外にないという結論はもう出ていると思うのですが。

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広場だより21号 巻頭寄稿文 森とキノコと放射能

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森とキノコと放射能

維持会員 長谷川 明

 福島原発事故から6年、放射性セシウムはハカルワカルの測定結果を見ても土以外はあまり検出されなくなった。その中で、時々検出されるのが山菜の一部と野生のキノコである。キノコは森の生き物。森は国土の6割を占め、多くの放射性セシウムも森にある。初めは落葉層と腐葉土の多い土壌表層に留まり、徐々にマイナスイオンを持つ粘土鉱物の多い層へと移動し結びついて固定すると思われていたが、実際は落葉層と土壌表層に留まっていた。

なぜ落葉と粘土鉱物の少ない土壌表層部に動かず存在するのか。これは森林の物質循環に放射性セシウムが取り込まれたためと言われている。この物質循環の分解を担っているのがキノコである。ではキノコはどんな生き物か、何をしているのだろうか。植物は根から無機物を取りこみ、葉は光合成を行い、枝はその葉を支え、その先に花や果実をつくる。キノコを植物に例えると、根の様に見える菌糸は根や枝や葉の役割をしている。キノコは花や果実に相当する。つまり菌糸がキノコの本体である。菌糸の径は植物の根の1/10と細い。体外消化という方法で有機物を分解・吸収するキノコにとって細いということは外界との接触面積が大きく有利である。そのうえ、細胞は長く連なり、網の目の様に縦横無尽に張り巡らせることで、さらに効率よく取り込んでいる。その規模は我々の想像を超えている。

1992年にミシガン州の山間でのナラタケの菌床では約15万平方メートルにわたって広がり、山一つ覆い尽くすほどの大きさがあり推定重量は約100tだと言う。キノコの菌糸コロニーはこのように森林の地下に広がり森の物質循環の分解を担っている。

そのキノコの生き方は、落葉や枯死木、動物の排泄物や死骸などを分解して栄養源としたり生きた植物から養分を得て、植物には水分、窒素、リン、カリ、カルシウム、マグネシウムなどの無機物を供給している。とくに窒素、リン、カリは多量要素といい植物に多量に要求される要素である。そのうちのカリはセシウムと化学的に同じアルカリ金属のため区別せず放射性セシウムを取り込んでしまう。その取り込み方は隈なく張り巡らされた細い菌糸によって効率よく集めるのである。そのほか植物の成長促進、病原菌の侵入阻止、窒素およびリン酸吸収の促進、植物への重金属の吸収を抑制などを行っている。

その棲み家としているところは有機物の多い落葉層や土壌表層部である。種によって落葉を好むもの、分解の進んだ有機層を好むものそれぞれだが、その好むところに一様に菌糸を張り巡らせコロニーを形成している。放射性セシウムもまた同じ所に留まっている。それは、たまたま菌糸と放射性セシウムが出合わせたのではなく、菌糸が放射性セシウムを取り込んだのである。チェルノブイリ原発事故後の研究でキノコの生息域の土壌中では放射性セシウムの30%から40%が菌糸によって保持されていることが明らかになっている。森林の地下には目には見えない菌糸の森が広がっている。その菌糸が放射性セシウムを保持している。こうして、放射性セシウムは森の中に留まっている。

富士山のキノコと放射性セシウム

134の実測値から福島由来の137の値を計算すると

発表日(月/日/年) 品目 採取地点 Cs137 Cs134 Cs計(Bq/kg) Cs137の計算値 Cs134実測値
10/25/12 シロナメツムタケ 河口湖町 104 54.8 160 92 54.8
10/25/12 アカモミタケ 富士吉田市 108 39.8 150 67 39.8
10/25/12 カヤタケ 富士吉田市 89.6 48.8 140 82 48.8
10/25/12 キヌメリガサ 富士吉田市 246 97.9 340 164 97.9
10/25/12 チャナメツムタケ 富士吉田市 91.4 56.4 150 94 56.4

山梨県衛生環境研究所による検査(Ge)

測定日(月/日/年) 品目 採取地点 Cs137 Cs134 Cs計(Bq/kg) Cs137の計算値 Cs134実測値
9/10/12 イロガワリシロハツ 富士山奥庭 90 19.28 109 32 19.2
9/9/12 キハダチチタケ 富士山奥庭 170 42.8 213 72 42.8
9/9/12 トビチャチチタケ 富士山奥庭 118 72.6 191 122 72.6

八王子市民放射能測定室による検査(Nal)

福島事故の放射性セシウム137と134は1対1の割合で放出された。放射性セシウム137の半減期は30年、放射性セシウム134の半減期は2年であるから、2012年10月頃の割合を計算すると約1対0.6となる。これを基に放射性セシウム134の実測値に合わせて放射性セシウム137の値を計算すると明らかに実測値と差の大きいものがある。河口湖での放射性セシウム137の実測値と計算値はキヌメリガサ以外はほぼ同じとなる。従ってそれらは福島由来の影響によるものと思われる。同じように奥庭の実測値と計算値を比較すると、イロガワリシロハツ、キハダチチタケは実測値が計算値より2~3倍高く検出されている。それは福島事故だけでなくチェルノブイリ事故、大気圏核実験の影響が残っていた分があるため、放射性セシウム137の値が高くなっていたと考えられる。標高の高い奥庭がその影響は大きかったと思われる。しかし、富士山の奥庭は溶岩の上に苔と薄い腐葉土だけが広がる森林で土らしいものはほとんど無い。したがって森に降下した放射性セシウムと結びつく粘土鉱物も少ない。長く留まることは無いと思われるがチェルノブイリ事故から30年経った今でも留まっていることになる。何故だろうか。チェルノブイリ原発事故後の研究でキノコの生息域の土壌中に放射性セシウムの30から40%が地中の菌糸によって保持されていると言われているがそのことを物語っているのではないだろうか。

(詳しくはこちらをご覧ください。https://goo.gl/4E4WmE )

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「日本と再生」が八王子で上映されます

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「日本と再生」(河合弘之監督作品)が、3月24日(金)午後6時より、(旧)八王子ニューシネマにて上映されます。再生エネルギーの可能性を探った映画です。なお、午後7時40分頃から河合弘之監督のトークもあるとのことです。

なお、4時からの映画上映はありません。6時からの1回のみです。

詳しくはこちらの「日本と再生」ホームページをご覧ください。

http://www.nihontogenpatsu.com/

*料金は1200円/シニア 1000円。

ぜひご覧ください。

ハカルワカル広場

ハカってワカった話20号 昨年の一ヶ月あたりの測定検体数

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昨年の一ヶ月あたりの測定検体数

二宮 志郎

1月のお茶会の時に2016年の測定データについての総まとめの話をしました。その一部について再度ここで紹介してみたいと思います。

はじめに一ヶ月あたりの検体数ですが、まず開室以来の変遷に注目してください。次のグラフです。

開室後3年間くらい急激に落ち込んで、その後は低迷しながらも微減傾向を維持していると言えなくもありません。しかし、2014年からの3年間の傾向を下のグラフのようにして示してみたらどうでしょう。

2016年は2014年からの微減傾向では持ちこたえておらずがくんと落ち込んでいるとも言えます。

要するにどうとも言えるわけで、「測定数の減少に歯止めをかけてがんばっている」と言いたければ、上のグラフだけ見せ、「再び急激に落ち込んできている」と危機感を煽りたければ、下のグラフだけ見せればいいわけです。

政府や大企業が何か統計数字を発表する時は、「何を見せたいか」という意志が必ず働いているでしょうから、こういう細かい操作がいたるところで行われていると思っておいた方がいいでしょう。統計結果の数字で判断するというのも、なかなか一筋縄ではないですね。でも、だからと言って「感覚だけで勝負」という方向に行くのはもっと危険ですから、あくまで注意深くデータを見るということで対処するしかないと思います。

Cs137、100Bq/kgの世界は続く

測定年 検体数 Cs137 (Bq/kg)検出値平均
2012 188 273
2013 188 237
2014 73 115
2015 67 106
2016 38 110

上の表は東京都内で採取した土のCs137の測定データをまとめたものです。条件を統一して測定しているわけではないし、検体数も小さいので、断定的なことが言えるわけではありませんが、Cs137が100Bq/kg程度、表土に平均的に存在している世界に私達が住んでいて、これからも住み続けるということを物語っています。

「どうにもならないことを考えてくよくよしてもしょうがない」、私もそう言える性格でありたいと思うのですが、100Bq/kgの世界から200Bq/kgの世界へ、そしてさらに積み上がっていく世界へと、そういう方向に行く心配は、原発のない世界にならないと消せません。

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広場だより20号 巻頭寄稿文 たらちね見学会で思ったこと

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たらちね見学会で思ったこと

維持会員 金子 淑子

 2016年11月14日『いわき放射能市民測定室たらちね』見学会に参加しました。
行きのバスの中では、資料(A4紙7枚)を見ながらハカルワカル広場の佐々木さんの説明で『たらちね』の全体像を予習し、期待とともに改めて気を引き締めました。

子どもたちをはじめ人々を被曝から守り続けることを目的に『たらちね』が開所したのは、原発事故から約8か月後の2011年11月です。「食品などの放射能(γ(ガンマー)線)検査とホールボディカウンターによる被曝検査」から始まり、2012年からは沖縄県久米島「球美の里」での「学童保養」のいわき事務局となり、2013年3月には診療所の認可を受け専門医などによる「甲状腺検診」の開始、2015年4月には市民団体では初の「β(ベータ)ラボ」を開設、β線測定が始まりました。そして2017年4月には「放射能測定室兼検診センター」開設及び事業の開始が予定されています。放射能測定も、汚染水の流出している福島第一原発沖の海洋調査や海水浴場などの砂浜測定など現在多岐にわたっています。

見学に当たっては、事務局長の鈴木薫さんと「βラボ」の責任者工学博士の天野光先生からお話を伺いました。以下は『たらちね』のごく一部、私が特に印象深かったことです。

βラボ β線測定(トリチウム・ストロンチウム90) たらちねメソッド

多少の予習をしたとは言え、見学した「βラボ」はまるでテレビなどで見る先端科学実験室のよう。頭の中は見慣れない機材や装置と聞き慣れない専門用語でいっぱいでした。

でもはっきり分かったことがあります。原発がある限り必ず出ており体内に取り込まれたら深刻なダメージがある「β線」を、何としてでも捕まえようとしている『たらちね』の決意の強さ、機材も人材も測定方法も最高のものを求める徹底性の凄さです。その強さ凄さが、独自のβ線測定分析法「たらちねメソッド」として結実しているように思えました。

「たらちねメソッド」は、「β線を測定記録しておきたい」との「たらちねの思い」に応え、天野先生をはじめ専門の方々が、原発事故後数年の実態を踏まえて生み出した「高精度で短時間」の測定方法です。利用時の測定料金も極めて安価で、専門機関に依頼すると一検体20万円かかる料金が『たらちね』では何と1000円~3000円。様々な努力の結果と分かってはいても、この料金は本当にビックリでした。これなら誰でも利用できます。

また「βラボ」では専門的なトレーニングの必要な測定作業を先生の指導を受け「たらちねメンバー」が担当しているとのことでした。そして精密な装置の横では身近な生活用品が測定道具として使われていました。これならできる範囲で誰でも関われます。

「βラボ」はハードもソフトも市民測定室と専門家のコラボレーションの賜物です。

ママベク測定(TEAMママベク子ども環境守り隊)

子どもたちの環境を守るために母親たちが立ち上げた「ママベク測定」はとても素晴らしいと思いました。「守り隊」はタブレットPCと高感度のγ線検出器を携帯し、校庭や公園や子どもたちの生活場所でのリアルタイムの放射線量を計測記録、ホットスポットを特定してそれを「いわき市役所除染課」に連絡しています。市はこれらの測定結果への対策を市独自に検討し実施しています(例えば同じ場所の複数回除染など)。当初『たらちね』はその測定活動のため「行政への反逆、いわきをつぶす気か」とまで言われたとのことですから、現在のような市との連携に至る道のりは想像に難くありません。しかし確かなことは、『たらちね』の市民による全市民を支えるための活動が市を動かしたという事実です。

「たらちね通信vol.11」には「測定してデータをだし、測定データを共有し子どもたちの暮らしの中に役立てることができてきました」と書かれていました。

放射能測定室兼検診センター(放射能測定から診察検査・相談ケアまで)

『たらちね』の甲状腺検診は専門医が担当しています。エコー検査に加え触診も行われており、親たちはその場でモニターを見ながら医師から詳しい説明を受けているのです。このように人々の「検査結果の理解」を助け「不安な気持ち」に応えることは、結果の程度に関わらずとても大切なこと、報告書一枚の送付でできることではありません。セカンド・サードオピニオンを求め、『たらちね』を訪ねる人も少なくないとのことでした。

鈴木さんのお話では、福島県では半数の親が「県内での子育てに不安を持っている」とのことです。この「不安を安心にかえるため」今進められているのが民間初の「放射能測定室兼検診センター」の開設です。診察検査も心身の相談もケアも一括して行い、隣の放射能測定室と一体となって将来にわたって人々を支えて行く場・・これは誰もが待ち望んでいたことだと思います。その事業説明の中で特に胸を衝かれたのは「形はまだ未定ですが、センターでは小児から思春期の子どもたちの精神的ケアを考えています」との鈴木さんの言葉でした。「たらちね通信vol.10」には「子どもたちの肩には、おろすことのできない重い荷物がのっており、それをどこまで軽くできるかそれが『たらちね』の活動の意味だと感じております」と書かれています。その活動の次の一歩、子どもたち一人ひとりに、その心にも向き合う専門的でかつ日常的で継続的な場が今ここに生まれようとしているのです。その重要性はどんなに強調してもしたりないと思いました。

鈴木さんは言いました。「放射能とは共存できない」、だからこそ「生きるためにより細かくより注意深く放射能測定の精度を上げ数字を残す」、そして「今必要なこと今やるべきことを実行する」と。天野先生は、ゼロから「βラボ」を立ち上げた「たらちねメンバー」との活動を「必要は発明の母」と評しました。

「たらちねの活動」は、その殆どを同じ思いを持つ人々の寄付と協力により支えられているとのことです。「必要」を一つひとつ具体化し「必要」だから様々な困難を乗り越え事業を進めている『たらちね』は、現場そのものであり原発に立ち向かう最前線でした。

帰りのバスの中は「では八王子は・・私は・・」と話の尽きることなく、26人の参加者の26通りの思いが溢れているようでした。

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パブコメ募集のお知らせ

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廃炉費用、賠償金の一部を電気料金(託送料)に上乗せして、全国民に払わせようという案が浮上しています。これに対してパブコメを書く機会があります。以下が要綱ですので、短文でもいいので書きたいですね。

要綱は以下の通りです)

【1月17日まで】原発事故費用・廃炉費用- 東京電力が責任を取らないまま、国民負担でいいの??
https://publiccomment.wordpress.com/2016/12/20/baisyohairo/
―――――――――――――――――

みんなで書くパブッ!(パブコメくん)
東京電力の責任が問われないままに、福島第一原発事故の廃炉・賠償費用の一部、
通常の原発の廃炉費用の一部を、「託送料金」で回収できるようにしよう、
という案が、導入されようとしています。
経済産業省の委員会で、9月下旬からのわずか2か月強の議論で「中間とりまとめ」が出され、
現在パブリックコメントにかかっています。

【総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 電力システム改革貫徹のための政策小委員会 中間とりまとめに対する意見公募】
↓資料・提出はこちらから (1月17日〆切)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620216013&Mode=0

パブリックコメントを経て「中間報告書」となり、今年度中には「経済産業省令」として決められる見通しです。
重要な問題なのに、国会での審議もありません。

◆なにが問題なの? こちらを参考に、3行でもOK!
最大の責任者である東京電力の経営者、株主、そして債権者(金融機関)が実質的に責任を取っていません。
それを問わないまま「国民負担」にできるしくみを作ってしまえば、
「こんな大事故を起こしても、無罪放免だ。それなら安全性はそこそこに経済性を追求しよう」
というモラルハザードが原発業界に蔓延してしまいます。
それが、原発再稼働、再度の原発事故につながり、同じ事が繰り返される恐れがあります。
福島第一原発事故を収束させるのに国民負担はやむを得ないとしてもまず、
東京電力を法的整理して資産を売却し、その分国民負担を軽減すべきです。
電力システム改革の趣旨は「発電」「送配電」「小売」を分離して自由・公平な競争を促進することであり、
事故処理・賠償費用や廃炉費用を「託送料金で負担」は、将来にも禍根を残してしまいます。

◆パブコメのポイント:もう少し詳しく見たい方はこちら!
(ページ数は、「中間とりまとめ」のページ数です)
1.<全体>福島第一原発事故について、東京電力(経営者、株主、債権者)の責任が問われないまま
「国民負担」の方法が議論されていることは、本末転倒です。
また、経済産業省令だけで決めるのではなく、国会で議論すべき問題です。
2.<全体>福島第一原発事故の事故処理・賠償費用21.5兆円の問題と「切り離されて」、
負担方法だけが論じられています。
3.<18ページ>「事故に備えて積み立てておくべきだった過去分」という考え方は非合理であり、
常識的には考えられません。
4.<20ページ>(東京電力が責任を取った上でさらに不足する賠償・事故処理費用について)
原子力の発電事業者が負担するのが原則であり、「託送料金」での回収は原則に反しています。
発電コストとして回収すべきです。
5.<20ページ>廃炉・賠償費用を含めてもなお、原発が低コストであるならば、当然事業者負担とすべきです。
6.<22ページ>福島第一原発事故の事故処理費用について、「送配電部門の合理化分(利益)」が
出た場合には、託送料金を値下げすべきであり、廃炉費用に充てることは電力システム改革の趣旨に反し不適当です。
7.<23ページ>通常炉の廃炉についても、廃炉は事業者責任で行うのが原則です。

◆参考資料:さらに詳しく見たい方はこちら!
・竹村英明さんブログ記事
原発維持温存のため、東電救済を全国民に押し付ける政府
http://blog.goo.ne.jp/h-take888/e/d0e98d10af87cf7ecde40e8c21af6f62

 

冬季休業のお知らせ 12月23日~1月9日は閉室です。

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ハカルワカル広場は12月23日(金)~1月9日(月)まで冬季休業のため閉室とさせていただきます。1月のお茶会も1月14日(土)となります。

この一年大変ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

ハカルワカル広場

ハカってワカった話19号 ゼオライトの測定結果を見る

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ゼオライトの測定結果を見る

二宮 志郎

微量放射能漏れ監視プロジェクト、協力者のみなさんのおかげで徐々にデータが蓄積しつつあります。特に継続して定期的に測定してくださっている方のデータは大変貴重です。

継続した測定データがある測定点を選んでグラフにしてみました。選んだ測定点は、元本郷A、町田市A、川口町B、御前崎市Bの4点です。測定年月を横軸に、ゼオライトを測定して検出されたセシウム137のBq/kgを縦軸に取っています。

グラフを見れば月日の経過とともにセシウムが蓄積していっていることがわかります。これは、空から降ってきているセシウムの蓄積分です。御前崎を除いては近辺の土壌から再浮遊・再降下の現象が起こっているせいによるものと思われます。

元本郷がひときわ高い数値になっています。たまたまこの測定点がセシウムを濃縮しやすい状況にある可能性もあるので、この結果だけから元本郷という地域に結びつけて考えることはできません。

元本郷、町田のデータを見ると梅雨から夏にかけて雨が多い時期に蓄積が激しいように見られますが、川口町のデータでは冬期も夏と同じペースで蓄積が進んでいます。季節による傾向をはっきり結論づけるにはもう少しデータが必要になります。半年に一回程度の測定ではこのような解析ができません。2ヶ月毎程度の頻度での測定継続を切にお願いしておきます。

御前崎、気になる廃炉作業との関係

御前崎の測定点は浜岡原発にかなり近いところになります。福島の影響は小さい地域なので、セシウムの検出はないか極微量であろうと予想していて、最初の数カ月はそのとおりの結果でした。ところが2016年6月測定ではっきりわかるレベルでセシウムが検出されて少し驚きました。

中部電力のホームページには「放射線管理区域内解体撤去が2016年2月15日に着手」とあり、何か解体作業とともに飛んでいるのではないかという懸念が持たれます。電力会社にもしっかりこういう調査をして欲しいですが、彼らに都合の悪い結果が公開されることは期待薄ですね。

⇒ハカルワカル広場だよりの主要記事のインデックスは、ここにあります。